俺と彼女とタイムスリップと
淳平
第1話
世界はまるで自分のもののようなそんな気がしていた高校生の頃。
大人になるイメージもつかめないまま日々を浪費してはいてもなんとかなるだろうと思っていたあの頃。
何か自分には特別な才能があるのではないかと思っていたあの頃。
全てを悟ってしまった今と比べてどっちが幸せだろうか。
現在、俺松村淳一28歳普通のサラリーマン。
高校卒業後、4流大学に入学し特にやりたいこともなく四年間の暇を浪費しなんとなく就職した会社でなんとなく働いている。
が、今日クビになった。
「松村君には申し訳ないけど、うちも厳しくてね」
と上司は言うが厳しいはずがなくうちの会社の商品売上は著しく良かった。
前々から窓際気味な扱いをされていたから覚悟していたがまさか本当にクビになるとはな…
帰り道の電車の中でそんなことを考えている今俺はこうはっきり思い知った。
「人生詰んだ」と。
家に着くとそこには当たり前だが誰もいない。1Kの狭い部屋に色んなものが散らかっていて人間が住んでいる気がしない。
まるでカラスがゴミを漁ったあとみたいだ。
冷蔵庫の中から缶ビールを取り出し飲み干した後すぐベットに横になった。
これから…どうすればいいのだろうか…
食っていかなきゃいけないからな…
とりあえずはバイトを探すか…
実家に帰るってのもありだが……
…まあなんとかなるだろう今日はもう寝よう
こういう性格だからこそ今まで自殺とかせずに生きてこられたのかもしれない
とにかく
…………………今日はもう疲れた……
「淳一!!早く起きなさーい!唯ちゃん迎えにきたわよー」
今日は土曜だから休みのはず…母さん寝かせてくれよ……ってなんで母さんの声がするんだ??
しかも唯だって??
「早くしないと学校遅れるわよ!!」
パァァン
頬に痛みが走った。
「ん??何何?」
「やっと起きた。淳一早くしないと学校遅れるわよ」
眠い目をこすりながら声の主の方を見るとそこには生まれた時からの幼馴染の唯がいた。
「学校ってお前…ってなに高校の制服着てんだ?いい歳して恥ずかしくないのか?」
俺たちもう28だぞ、いい加減制服はキツイだろ。
てかなんで唯がウチにいるんだ?
「?淳一寝ぼけてないで早く起きて学校行くよ」
唯が俺を起こそうと布団をひっくり返す。
…夢か。夢だよなぁ。俺んちに唯がいるなんておかしいもんな。
夢なら何でもしていいよな。
いっちょJKの唯の胸触ってみるか
体を起こし唯の近くに歩み寄り顔を近づけた
「ん?どうしたの淳一?ちょっ近いんだけど?」
もみっ
女子高生にしてはというか女としては物足りない胸の大きさだが確かに胸の感触を感じた。
と同時に唯のグーパンと悲鳴が聞こえた。
「な、な、何すんのよ!変態!!」
痛い。
はっきりとグーパンの威力を感じるということはこれは現実なのか?
…これが現実だとしたらもしかして俺高校生に戻ってきてる?
……んなわけない。んなわけない。
いくら会社がクビになって現実逃避したいからって…んなわけないだろ?
一体何が起こってるんだ?
そんなことを殴られた反動により枕にうずくまりながら思う。
「淳一?そんな痛かった?」
「唯、今日は何年の何月何日だ?」
さっきまで胸を触られ顔を赤くして怒っていた唯だが、すぐ気を取り直したのかこう答えた。
「ほんとどうしたの?今日は2006年の7月7日じゃない。」
「ああ…だよな、悪い。」
11年前に戻ってるのか?11年前っていったら俺は17歳だから高2か?
「寝ぼけてないで早くご飯食べて学校行くわよ」
唯が俺の手を引いてリビングへと連れていく。
リビングに向かう廊下にカレンダーが貼ってあった
。そこには2006年の7月と記してあった。
てかここ俺の実家じゃないか。夢だとしたらよく出来た夢だな。
「今日は私が朝ごはん作ってあげたんだからありがたく残さず食べなさいよね」
リビングにあるいつも家族でご飯を食べている場所に座ると唯が朝ごはんを持ってきてくれた…
が、皿に盛り付けられたソレは料理とは言えないようなものだった。
元が何なのか分からないほどに焦げて黒ずんでいる何かだ。
そういえば…唯は昔は料理が超下手くそだったな…
「あー、唯。今日はあれだなコーンフレークが食べたい気分…」
最後まで言わせてたまるかのごとく唯が無理やりソレを口に突っ込んできた。
「なんか言った?」
唯はふふっと笑い声を上げたが顔は笑っていなかった。
「何でもありません、おえっ…」
とてつもなく苦い…やばい吐きそうだ…
だがこの味…懐かしい…
殴られた時の痛み、そしてこの苦味…
どうやら俺は本当に11年前に戻ってきたのかもしれない。
「ほら早く食べて学校行くわよ!今日は転校生が来るんだから」
「転校生?あああいつか」
「あいつ?知ってるの?」
まずい。唯はまだ知らないんだもんな。
高2の時に転向してきたあいつ。俺は未だに忘れていない。
「いや、何でもない」
「変な淳一。ほら行くわよ。」
「はいよ。」
朝ごはんを食べ終わって学校に行く準備をし玄関を出ると唯は家の外で待っていた。
「おそい!帰りにアイス奢ってもらうからね!」
「はいはい。行きますか」
懐かしいこのやり取り。
まあそのうち元の11年後の世界に戻れるだろう。
それまではこの世界を楽しもうか。
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