第68話 三つ石キーホルダーと笑うマギヤの秘密
マギヤとヴィーシニャさんが観覧車を降りて、俺、タケシのもとへやってくる。
その後にメルテルやトロイノイさんも降りてきたけど、俺はその二人よりも、マギヤのカバンのキーホルダーに目がいく。
あのキーホルダーを持ってきてたことも驚きだが、石の色がどれも黒くなくなってるのはもっと驚いた。
俺にヴィーシニャを預けたあと、マギヤは降りてきたトロイノイに抱きつきだす。
……あれ、マギヤが笑ってるの初めてじゃね……?
……いや、警護班班長としてヴィーシニャさんのことも見ておかないと。
うーん、なんか目付きがトロンとしてる気がするけど、眠いのかな? もういい時間だし、帰るか。
それにしても、あの石の色、いつ元に戻ったんだ? まあ、あのキーホルダーの説明書きに、石が三つとも黒くなったら持ち主が何かやらかす前に今すぐ専門機関に連れていけとか、人でなくなる危険性があるみたいな妙におっかないこと書いてたから心配だったけど、ひとまず大丈夫そうだな。
トロイノイの耳は抱きついてきたマギヤの腕などから、ねちゃというか、ぺちゃというかな粘着質な音をわずかに聞き取っていた。
トロイノイがその音の理由を考えようと目線を前に向けると、目の前の異常が目に付く。
乗り物や道を歩く他の観客や従業員、風船を配る着ぐるみや空へ向かう風船を取りに行こうと飛ぶ観客など、動いているはずのあれこれが静止して見えるのである。
トロイノイが焦りながらマギヤにその旨を話すと、マギヤはトロイノイから体を離しながら冷静な様子でこう話す。
「心配いりませんよ、私とトロイノイ以外に……この現状を認知し動ける者はいません」
トロイノイは、マギヤの視界外かつトロイノイの視界内に、こちらを見てる者を見つけたが、すぐにその者が昏倒する。
「私が時を止めるとき、そう設定したのですから」
モンス島において水属性ないし氷属性の最上位魔法と言えば、
その知識を確認しあった後、マギヤは自分に関する報告とヴィーシニャに関する報告、どちらから聞きたいかトロイノイに問う。
トロイノイはある程度予想がつく、マギヤに関する報告から、と答えた。
「実は私……気が付くとスライムになっていました」
ほらこんな風に、と下半身をスライム状に変え、無言で人型に戻るマギヤ。
「ついでに今の私をつついてみます?」とも言ってきたのでトロイノイがマギヤの腕をつつくとトロイノイの指がめり込んだので、びゃっ、と声をあげて指をひっこめる。
「もう一つの報告の前に一つ聞きますが……私が、今すぐにここで、貴方と……交わりたい……まぐわいたい……とにかく性行為に及びたいと言ったら拒みますか?」
「……今すぐはさすがに拒むわね」
「まあ、そうでしょうね……では報告しましょう。私には、観覧車に乗っている間、人としてヴィーシニャさんと話した記憶と、スライム化してヴィーシニャさんに乱暴した記憶があります」
「……は?」
「ヴィーシニャさんのペンダントにかけた監視魔法の映像もありますが……どうします?」
「待って、自分がしたこと分かってる!? 冷静すぎない? 観覧車に焦りとか置いてきたの?!」
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