みんなで初詣に行くのよ!
私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者だ。
あれやこれやと事件に関わっているうちにいつの間にやら年末になり、とうとう新年を迎えてしまった。
只でさえ、受験生だから時間が貴重なのに霊感課とかの仕事をしている場合ではないと思う。
「霊感課の捜査員は受験に有利なのだよ}
G県警の本部長が霊感課の忘年会で言っていた。
何がどう有利なのかは、教えてもらえなかったが。
「有利とか関係なく、揃って同じ高校に行こうぜ」
元々成績優秀な私の彼の江原耕司君は余裕の顔でそう言った。
「もちのろんよ」
私はお父さんに教わった渾身の返しで応じたが、みんなに白い目で見られた。
「何言ってるのよ、まどか。そんな言い回し、私のお祖父ちゃんだってしないわよ」
親友の近藤明菜の言葉が胸に突き刺さった。
「まあまあ、アッキーナ。まどかちゃんもわかってるよ、それくらい」
明菜の彼の美輪幸治君が私をフォローしてくれたが、ちょっと喜べない。
明菜のお祖父ちゃんも言わないような事をお父さんが言っている。
江戸時代から続く箕輪家としてどうなのかという問題が残ったのだ。
「全く、いつも遅れるのは力丸だな」
江原ッチは、妹の靖子ちゃんが迎えに行った力丸卓司君の事を非難した。
今日は元日。皆で初詣に行く約束をしているのだ。
集合場所は近くの公園。
我がエロ兄貴は、奥さんのまゆ子さんが臨月なので、初詣は行けないようだ。
というか、人混みに近づけると、エロ度が上がるので、まゆ子さんが許さなかったというのが本当らしい。
今月の二十七日が予定日らしいから、仕方がないだろう。
「本当に僕なんかが参加していいんですか?」
先日、ある事件で親交を深めた一年生の坂野義男君が言う。
「いいに決まっているだろ。お前は俺の友達だぜ、坂野」
江原ッチが坂野君の肩を叩いて笑顔で言った。
「はい」
坂野君、涙ぐんでいる。いい子だ。ずっと仲良くしてあげたいな。
「ごめん、遅れて。お詫びの印だよ」
ようやくリッキーが靖子ちゃんと到着した。
「おう、力丸ミートのコロッケとメンチカツか!」
目の色を変えてリッキーから紙袋を受け取ったのは、美輪君。
明菜もコロッケが欲しいのだが、美輪君の手前、素知らぬフリをしている。
相変わらずのツンデレだ。
「ほい、アッキーナ」
優しい美輪君がまず最初に明菜にコロッケを手渡した。
「ありがと」
素っ気なく言う明菜だが、実は物凄く嬉しいのは長い付き合いだからよくわかる。
「よし、じゃあ、行こうか」
江原ッチの号令で、私達はちょっと思い出のある厄除け地蔵尊のあるお寺へと向かった。
三年前、私はそこで男の子の霊を導き、逝くべき所に逝かせた事がある。
あれから私はかなり成長した。
え? 胸は変わっていないだろう、ですって!? うるさいわね! そんな事ないわよ!
思えばあの時は、牧野徹君と来たんだ。もう牧野君は遠い思い出。
今はアメリカの金髪娘と仲良くしているかと思うと、ちょっと癪に障るけど、まあ仕方がない。
そんな妄想を繰り広げているうちに、地蔵尊に着いた。
「まどかお姉さん、あそこに男の子がいますよ」
靖子ちゃんが境内の隅に立っている男の子に気づいて教えてくれた。
『姉ちゃん、久しぶり。元気だった?』
その子はまさに私が天に送った男の子だった。何だか感動してしまった。
「どうしたの、迷っちゃったの?」
私は少し不安になって尋ねた。すると男の子は笑って、
『違うって。修行が一段落したから、お許しをいただいて姉ちゃんに会いに来たんだよ』
その健気な言葉にウルッと来てしまった。
『霊界は大騒ぎなんだ、姉ちゃん。神田原一族の野望を阻止してもらわないと、現世と霊界が崩壊しちゃうらしいんだよ』
「ええ!?」
男の子の言葉に、私ばかりでなく、江原ッチと靖子ちゃんもびっくりして叫んでしまった。
「おいおい、何が起こってるんだよ、江原?」
霊が見えない美輪君が怖くてしがみついている明菜を宥めながら尋ねた。坂野君も不安そうだ。
江原ッチが手短に男の子の話を伝えると、
「ええ!?」
美輪君と明菜と坂野君も仰天してしまった。
『神田原一族がしている事は、この世とあの世の
私は思わず江原ッチと顔を見合わせてしまった。そして、
「どうしたらいいの?」
男の子に尋ねた。
『G県にある七福神の力を借りて、神田原一族を止めるしかないらしいよ。そして何より、神田原明蘭さんの協力が必要だって』
男の子の答えに江原ッチと美輪君がデレッとした。
「そうか、明蘭さんの力が必要なのか」
全く、男って奴は、世界が滅亡してしまうかも知れないのに、何を考えているのよ!?
「七福神の力を借りるにはどうしたらいいの?」
私が尋ねると、男の子は、
『七福神を祀っているお寺を巡れば大丈夫だよ。但し、できるだけ早くしないと、間に合わないよ』
「そうなんですか」
私はここぞとばかりに七福神にも匹敵するお題目を唱えた。明菜の視線が痛い。
『頼んだよ、姉ちゃん』
男の子はそれだけ言うと消えてしまった。
「とにかく、急いでお参りをすませて、俺の家に集合だ」
江原ッチがそう言ってすぐにお母さんの菜摘さんに電話をした。
私達は駆け足でお参りをすませ、地蔵尊を出た。
「別々に巡った方が効率がいいよね」
明菜が提案したが、
「いや、神田原一族が襲ってくるかも知れないから、力丸とアッキーナと坂野は帰って。俺とまどかりんと靖子と美輪で何とかするから」
江原ッチがいつになくリーダーシップを発揮した。明菜も相手が神田原一族だと知って反論はしなかった。
明菜とリッキーと坂野君も只帰らせるのは心配だったので、江原ッチの邸に避難させる事にした。
「さあ、乗って」
菜摘さんが七人乗りのミニバンで迎えに来てくれたので、私達はすぐに江原ッチの家に行く事ができた。
「お待ちしていました」
明蘭さんが出迎えてくれたので、江原ッチと美輪君がデレッとしたのは後で明菜とお説教だ。
今はそんな事をしている暇はない。
「母もこちらの動きを察知しています。妨害される恐れが強いので、効率は悪いですが、一塊になって行動しましょう」
明蘭さんが言った。その言葉に私と靖子ちゃんは緊張し、江原ッチと美輪君は更にデレッとした。
バカ男め! 後で三倍のお説教よ!
鼓動が高鳴るまどかだった。
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