富士山麓を目指すのよ!
私は箕輪まどか。今回は緊迫した状態なので、自己紹介のボケは省略ね。
私は、絶対彼氏の江原耕司君と江原君のご両親と共に富士山麓を目指している。
尊敬する西園寺蘭子さん達が、サヨカ会という奇天烈な団体に狙われているのだ。
蘭子お姉さん達は一発逆転をするために、サヨカ会の本部がある富士山の麓に向かった。
私達もその応援のため、関越道から圏央道に入り、山梨を目指していた。
その途中、パーキングエリアでサヨカ会の信者達に襲撃され、私達は何とかその包囲網を突破して先へと進んだ。
「もう追いかけて来ないみたいね」
ドアミラーを見て、菜摘さんが言った。
「恐らく、彼らは仕立てられた信者だ。どこかに彼らを操った陰陽師が潜んでいるはずだよ」
雅功さんが前を見たままで言う。
「サヨカ会の信者の大半は、そうやって無意識のうちに入信させられているんだ。だからこそ、宗主の鴻池大仙を叩く必要がある」
雅功さんは力強く語った。さすが江原ッチのお父様! カッコいいわ!
「耕司、西園寺さんとは交信できないか?」
「まだだよ。全然ダメ。さっきより難しくなってる」
江原ッチは残念そうだ。交信できないのが残念なのか、小松崎瑠希弥さんの声が聞けないのが残念なのか、後でじっくり聞いてみたい。
「サヨカ会の本部に近づくにつれ、妨害の念が強くなっています。そのせいでしょう」
菜摘さんが言った。
「ならば交信は余計な力の消費になる。もうやめなさい、耕司。まどかさんもね」
「はい」
私はそっと江原ッチを見た。すると江原ッチは悲しそうな顔で、
「瑠希弥さん……」
と呟いた。
「は!」
彼は私の殺気を感じたらしく、ビクッとして私を見る。
「あ、いや、その……」
身体がカサカサになるくらい大量の汗を掻く江原ッチ。しかし私は笑顔全開で、
「後でゆっくり話しましょ、江原ッチ」
「はい……」
江原ッチの顔色が更に悪くなった。
その後はサービスエリアに立ち寄っても何事もなく、車は順調に進み、山梨県に入った。
「うわ!」
トンネルを出た途端、波動が変わった。
「これは……?」
私は思わず耳を塞いだ。雅功さんが富士山の方を睨んで、
「サヨカ会が何かを始めたようだね。思念の強度が変わった。急いだ方がいいようだ」
と言うと、四駆車を加速させた。
そして河口湖インターチェンジで高速を降り、料金所を通過した。するとパトカーが近づいて来た。
「停まって下さい」
おまわりさんが降りて来て、四駆車を誘導し、端に停まらせた。
「お忙しいところ、失礼致します」
おまわりさんが敬礼して雅功さんに話しかけた。
「何でしょう?」
雅功さんは窓を開いて尋ねた。
「あなた方に逮捕状が出ています。大人しくなさい」
「嫌です」
雅功さんはアクセルを吹かすと、パトカーを避けてその場から逃げ出した。
「えええ!?」
大丈夫なの、こんな事して?
「父さん、今のは?」
江原ッチが慌てて尋ねた。雅功さんはハンドルを切りながら、
「手首に数珠を巻いていた。あれはサヨカ会の数珠だ。信者だよ」
「え?」
私と江原ッチは顔を見合わせた。
「逮捕状の話はハッタリよ。心配しなくていいわ」
菜摘さんが水晶を覗きながら言った。
取りあえず、ホッとする。
それにしても、何て団体なの、サヨカ会って?
「いよいよ連中の本拠地が近いという事だ。耕司、まどかさん、警戒してくれ」
「はい」
私と江原ッチは声を揃えて答えた。
心配だ。蘭子お姉さん達は大丈夫だろうか?
蘭子お姉さんの事だから、私が心配する事はないだろうけど。
それに瑠希弥さんと冬子さんも一緒だし。
多分、最強トリオよね。
あれ? もう一人いたような……。
ま、いっか。
「見えて来たよ」
雅功さんの声に反応し、窓の外を見た。
「何、あの不気味な建物?」
何だか、いろいろな宗教を全部一緒にしたような造りだ。
大仙とか言うおっさんの美意識がおかしいのだろうか?
信仰心をバカにしたような建物は、何だか気分が悪い。
いよいよ本拠地に乗り込む。
思わず江原ッチの手を握り締めた。
「まどかりん、大丈夫。まどかりんは絶対に俺が守るから」
「うん」
私は半分だけその言葉を信じた。だってえ……。
今はサヨカ会より瑠希弥さんが脅威のまどかだった。
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