本格的なライバル登場なのよ!
私は箕輪まどか。
遂に中学一年生。大人の女よ。え? お前はずっとお子ちゃまですって?
フフフ。今までの私だったら、汚い言葉で怒ったでしょうけどね。
もう大人の私は、それくらいの事では怒らなくてよ。
それにしても驚いたのは、あの上辺だけ付き合っているフリをしていた牧野徹君が、私立の中学に行かず、私と同じ公立に進んだ事だ。
ああ、美しいって罪ね。マッキーッたら、私の事が忘れられなかったんだわ。
男の人の人生を狂わせてしまうほどの美少女。ああ、私は自分の美しさが怖い。
「おい、いつまで独り言言ってるんだ、かまど」
ハッと我に返った。「かまど」は私にとって「NGワード」なのだ。
普通の人がそれを口にしたら、死を以って償わせるところだが、相手がエロ兄貴では仕方がない。
ところで「NGワード」って何?
「何よ、お兄ちゃん! かまどって呼ばないでよ! 私も中学一年生なんだから」
「関係ないね」
エロ兄貴は誰かの物まねをしたようだが、さすがの私もわからなかった。
「牧野君が来てるぞ」
私はまさしく猛スピードで玄関へと駆け下りた。
「いらっしゃい、マッキー……」
笑顔全開でドアを開いたが、一瞬にしてそれは凍りついた。
牧野君はいつも通りの天然キャラだったが、その隣に見たこともない美少女がいたのだ。
「こちら、どなた?」
私は顔が引きつるのを感じながら、尋ねた。牧野君はニッコリして、
「ああ、この子、僕のフィアンセの綾小路さやかさん」
「よろしく」
その美少女は勝ち誇った笑顔で私に会釈した。
フィアンセ? フィアンセって何、なんてボケる事もできないほど、私は驚いていた。
「さやかさんと僕は、生まれた時からのフィアンセなんだ」
「そ、そうなの……」
途中から私の耳は何も聞こえなくなっていた。
どういう事? 私とは遊びだったの、牧野君!?
もう少しで彼を絞め殺しそうになるのを必死に堪えた。
冷静になろうとした。
あ。
綾小路さん……。まさか……。
この子、霊能者だ。それも、私より強力な。
彼女は牧野君を操っている。
二人はフィアンセなんかじゃない。
綾小路さんは、隣町の小学校出身で、牧野君とは本屋さんで偶然出会ったようだ。
それにしても、何て力なの。牧野君だけでなく、ご両親まで騙している。
『箕輪さん、聞こえるかしら?』
綾小路さんがテレパシーで話しかけて来た。
『もちろんよ。どういうつもりなの、こんな事して?』
『玉の輿に乗るのよ。牧野君の家は、お医者様一家ですからね』
うう。その点では、私は何も言えない……。
『邪魔しないでね。邪魔したら、貴女を消すわよ』
『何ですって!?』
『牧野君は諦めなさい。貴女程度では、私には敵わないわ』
それは確かにそうかも知れなかった。
「どうしたの、二人共?」
何も聞こえていない牧野君が不思議そうな顔で言った。
「何でもないわ、徹君。箕輪さんて、可愛い方ね」
「そ、そうだね」
綾小路さん。私は負けないわよ。今日のところは引き下がるけど、このままではすまさないわ。
「じゃあね、まどかちゃん」
牧野君は綾小路さんと手をつないで帰って行った。
私はすぐに部屋に戻り、考えた。
自分の力を高めて、綾小路さんの力に対抗するためには……。
そうだわ。自分の好きなものを断って、願いを叶える呪法があったはず。
そうすれば、綾小路さんに勝てる。
えーと、何をやめようかな?
チョコレートパフェ? 無理。絶対無理。あれを諦めるくらいなら、牧野君を諦めるわ。
力丸ミートのコロッケ? あれもおいしいしなあ。リッキーにも悪いし。
駅前のケーキ屋さんのモンブラン? それも無理。あれなしの人生なんて考えられないわ。
む? 私、さっきから食べ物ばかり思いついてる。
しかも、牧野君と天秤にかけると、全部牧野君が負ける。
という事は? 牧野君を諦めるのが正解?
結局、堂々巡りのまどかだった。
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