第158話:三つ目の不思議地帯
この国はモテない男にとって楽園である。
どれだけ弱くともブサイクだとも、男というだけで一人は落とせる。
逆にいくら普段はモテていても、弱ければ大した収穫は得られない。
屈強でモテない奴らは、ここを目指せ。
女性達は、体格は大きいものの、あらゆる面でレベルが高い。
ロリコン以外は、体を鍛えてこの楽園を目指せ。
穴兄弟? ブサイクが何を気にしているのだ。細かいことは気にするな。
私はここで、生の実感を得ることに成功した。
まあ、私は普段からモテるのだが。
アレス著『世界の英雄達』より抜粋
――。
世界には、不思議な地域がある。
一つは常時デーモン等の凶悪な魔物がひしめく世界で最も危険な地域、死の山。そこにある一つの村に住む人々は皆強靭な肉体を持つ。彼らは皆並の勇者を遥かに上回る戦闘能力を持つ、根っからの戦闘民族。
一つは霊峰マナスル。そこには超高濃度のマナが充満し、酷いマナ酔いを起こす為に勇者は近づかず、魔法使いの修行場とされている。
そしてもう一つがここ、ウアカリ。
大陸南部、巨大な湿地帯の中にあるこの国では、女性しか生まれない。そこで生まれる女性達は皆屈強な戦士達で、時折訪れる男性を捕まえては、合意の上で、捕まえては子どもを作る。
基本的に男であれば誰でも歓迎というものがこの国のスタイルではあるものの、どの程度モテるのかはその強さに比例する。自分よりも強い男は無条件で恋愛対象だ。
そして彼女達は見ただけで男の強さを判別出来る。全員が、そんな力を持った勇者となる。
簡単に言えば、そこはレインが来てはいけない場所だった。
「きゃあーーーー!! 孕ませてえーーーー!!」
「あなたの子種をよこしなさあい!!」
「何しても良いですから! どんなマニアックな要求にも応えますからあああ!!」
入国してまだ5分。
既に発狂しかけているサニィは置いておいて、レインはそのようなことを言って襲いかかってくる女性戦士達を次々と気絶させていく。
「確かに中々の強さだな。一番弱くてオーガ並みの膂力だ。体格も良い」
そんな失礼なことを言っているのも気にせず、女性達は次々と襲いかかってくる。
落ち着け落ち着けと死んだ瞳のままぶつぶつ言っているサニィが怖いこともあるが、レインは当然その全てを拒否する。もちろん、歩いた後には白目を剥いた女性の道が出来ている。
隙を見るレインにしか出来ない、意識だけを一時的に刈り取る手刀。頭を打ちそうな女性だけは、レインがそっと支えて寝かせていく。
「……レインさん、レインさんがそんな優しくしなくても、良い方法があります」
その瞳は死んでいる。怖い。少なくとも、レインがそう感じる程度には。
「この国の人全員を眠らせればイイんです。ちょっと強めに。もし起きなかったら、仕方ないですもんね」
言っていることも怖い。
死んだ瞳のまま、フフフと笑う。
しかしそれが効いたのだろう、女性達の猛攻は、抑えられた。
ひとまず、一時的には。
そのまま暗黒微笑を顔に貼り付けている以上は、女性達は悔しそうに歯噛みをしたり恐怖の目を向けるだけで、襲いかかっては来なかった。
「しかし、全てだな。全ての女が俺に襲いかかってくるな」
「は? モテモテで嬉しいってことですか?」
その瞳は死んでいる。
「い、いや、違う。ヴィクトリアとフィリオナの噂は本当なのか気になっただけだ」
レインが押される。
その気迫は、魔王よりも上かもしれない。
確かに、これならばこの国の女達が寄って来れないことも納得できると思いつつ、二人が同性愛者で恋愛関係だという噂のことだ。そう付け加える。
「ああ、なるほど。そういうことですか。まあ、襲いかかってくる連中は問答無用で眠らせれば良いですし、資料館を探しましょう。ね? そこのお姉さん?」
貼り付けた笑顔のまま、近くに居た若い女性に狙いを付ける。
きっと、今のサニィには濃厚な陰のマナが纏わり付いているのだろう。
その笑顔に隠れる殺気は、最早魔物のそれと変わらない。
「ひっ、ヴぃ、ヴィクトリア様とフィリオナ様の資料館ならこの大通りを真っ直ぐ、5kmくらいの所に。こ、殺さないでっ……」
「大丈夫ですよ? レインさんが私のモノだって分かってる人は、向こう2年安全に生きられることを保証しますよ?」
屈強な女性戦士がへたり込む様子はそれなりに気持ちが良いものだ。眼福。
そんな感想を抱きながらも、それを口には出さない。
レインはサニィに連れられるまま、資料館へと向かった。
道中、レインに飛びかかろうとして止める女性の多いこと。いや、道行く全ての女性が全く同じ行動を取っている。
彼女達の身長は平均175cmを超える。非常に長身で、筋肉質。
とは言え顔は非常にレベルが高く、美女揃い。そして皆巨乳だ。
サニィと違って、そう、皆巨乳だ。
それが貧乳サニィの怒りをさらに増幅させる要因なのだが、まあ、それは置いておいて。
褐色で健康的な肌をした彼女達は皆確かに、サニィから見ても魅力的な女性に映る。
絶世の美少女であるオリヴィアや、それを上回るたまきとはまた別の、お姫様として扱いたい系ではなく一緒に遊びたくなる系の美女と言った所だろうか。
多少雑に扱っても良いような、そんな風に見えるのが、きっとこの国の女性達が有名な理由なのだろう。
まあ、ここに到達するには北の砂漠か東の山脈を超えるルート、または南西に広がる海から入るしか方法がない為、辿り着くのも難しい。
彼女達は常に、男に飢えている。
さて、そこまで来た所で本題。
二人はそんな女達の攻撃の目をくぐり抜け、『巨人の腕記念館』へと辿り着いた。
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