第10話:青は藍より出でて

 「それじゃあマナの容量を知る事にしよう。俺は今までマナのことを知らなかったからいきなり無茶をさせてしまったが、無茶と努力は違うからな。効率的に行こう」

 「具体的にどうすれば良いですか?」


 昨日の修行が無茶をしていたのは分かっていたらしい。レインは昨日よりは少しばかり楽そうな提案をする。


 「1番得意な魔法は開花の魔法で間違いないか?」

 「はい。多分この魔法だけならいつでも使えると思います」

 「平和な魔法が得意で良かった。それなら最大規模の開花をマナが尽きるまで全力で使い続けろ。昨日の攻撃魔法以上の規模で少なくとも50回分以上、出来るな?」


 訂正。全然楽ではなかった。

 「よし、それじゃあ歩きながらやろう」そんなことを言いながら本当に歩き出すレインについて行きながら、サニィはイメージする。

 しかし、昨日攻撃魔法以上の規模の開花となると、半径5m程。これを出来る限りやり続ける。1番得意とは言えこれを使い続けたことは無かった。一度自分の周囲を森にしてしまい、出られなくなって泣いたことがあるからだ。

 今回は歩きながらなので、常に移動している。よって森が出来ることはないが、歩きながらだとイメージの難易度も上がる。


 「花、花、花、と。おっとっと」


 色とりどりの花を咲かせながら、たまに地面に躓いてしまうも、レインはすっと支えてくれる。

 喋らなければ凄く良いのに。

 ふとそんなことを思い、イメージが乱れると辺り一面にブルーグレーの花が咲く。レインの髪の色だ。

 それに気づいて頰を染めたサニィが次に咲かせたのは藍の花。レインの瞳。

 こうなってしまえば未熟な彼女はドツボにハマる。

 顔を真っ赤にしながらも特訓は続け、ひたすら道中を真っ青に染め上げる。


 そして、大体50回分程連続して使っただろうか。しかし、全くマナが枯渇する気配はない。

 すると今までずっと黙っていたレインがようやく口を開く。


 「途中から心の乱れは見て取れるが、昨日の特訓は活かせたな。今からは少しばかり話しながら続けよう。訓練は継続だ」

 「如何な時で、も、イメージをする、訓練、です、ね?」

 「そうだ。まあ、お前が動揺する様なことは言わないから安心して良い」


 本当に変なことは言わないレインと楽しく会話を続けながら開花し続けるサニィの通る道は、新しい程に鮮やかな青色に染まっていく。


 その日は一日中南に向かいながら訓練を継続させたが、遂にマナの枯渇は訪れなかった。

 森の中を歩きながら、集中しながらの移動なので、その移動距離は18km程。

 まだ大木の森は抜けないが、彼女の通った道はマナの花で美しい青に輝いていた。


 「最大出力を知る方が優先かもしれないな。お前のマナ量は現状では無限だ」


 そんなことを言うレインの表情も、サニィがこれまで見たこともない程に輝いていた。

 少なくとも、自分の可能性を改めて知ったサニィには、そんな風に見えていた。


 残り【1818→1817日】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る