第563話 死臭漂わすサソリ

―――――――――――――――――氷塊ピラミッド



 男はムクロを歓迎すると言いながら、ムクロの視線の先にあるテーブルに固定されたヒールNPCの事について説明し始め。

今現在、男が行おうとしている実験は注射器から注がれるモノを使った変化実験だと言っており。

その流し込む液体を見たムクロは・・・すぐさまアレだと感じ取った。



「ブックアクアリーゼ・・・どうしてお前がソレを持っているんだ??

それにそのアイテムはこのグロリアで使用を禁止されているものだと知らないのか??」

「いいや、こういう外部的要因で作り出されたアイテムを扱い所持することは禁止されてる。

私はこのグロリアの世界を設計した者の1人だよ?あぁ・・・そうだ今も私は創造主の1人だ。

つまり・・・私のいるこの氷の神殿では違法アイテムやNPCの改造が自由に行えるまさしく神聖な神の領域なんだよ。

だから外部のプレイヤーも低能な対策チームも私を捕えることはできないと言っておくつもりだったが・・・・君たちは例外だ。

このブラックアクアリーゼの事を知る数少ないプレイヤーでありこのグロリアを守護する生きたファイヤーウォールと言ったところか。

私のこれからのなすべき事の邪魔をされるのはコレが最後にしたいわけだ・・・・だから君たちにはここで消えてもらうために招待したのだよ・・・こんな風にするためにね。」

男は説明をし終えるとシステムを起動させてヒールNPCにブラックアクアリーゼを投与した際に部屋の外で待っていたはずのヒールNPCがすごい勢いで突入して来るや体に突き刺さっていた注射器を剣で斬り裂き始め。

その行為も予測できていたのか男は武器を振り回すヒールNPCの動きを止めるシステムを起動させたのだが・・・・



「もう、私は・・・アナタの人形じゃない・・・・

――――――――――私は私だ!!!」

「新たなる段階へ至る精神を持っていたということか・・・だが悲しいな。

創造主である私に剣を向けたのだからな。

―――――――――――――さようならだ・・・・」

「なッ!?体に亀裂が!?どうなっているんだ・・・・

攻撃をした素振りもなかった・・・どうして体が崩れ始めているんだ・・・」

男の表情は悲しむ様子も憐れむ様子もなく、ただ当然の事だと何とも思わない顔で体を崩していくヒールNPCを見ており。

亀裂を止めることができないまま自分の寿命がもうほんの数秒あるかないかと悟った瞬間・・・ヒールNPCは最後の最後にと何かのピンを抜き男に向かって飛び出していた。



「私はもう終わりかもしれないだけど・・・仲間の隊長の仇は私が取る!!!

――――――――――ムクロは早く外に逃げ・・・・」

「この光は・・・くッ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

ヒールNPCは最後の最後で自爆を決意してアヤカから受け取っていたのか爆雷が起動し・・・部屋の外に辛うじて飛び出せたムクロは軽傷で済んだのだが。

あの爆発を直撃したあの男は息絶えているだろうと身を起こしミストたちと合流しようと背を向けると声が聞こえてきた。



「爆雷か・・・お前たちの誰かから受け取ったプレゼントなのだろうが私には無意味だったようだな。

だが・・・ブラックアクアリーゼを流し込んだヒールNPCの素体も同時に焼けてしまったのは想定外だったが素体はいくらでもある。

今度はどのタイプを素体として実験を・・・・ん?どうしたんだ??

私が死んでいなくてガッカリしたか?それともさっきのNPCが消滅したことに悲しんでいるのか??

―――――――――――そもそもアレは私の・・・・ぐがぁッ!?」

「お前は・・・絶対にケス。

早く立てよ・・・クズ野郎!!!」

「何ださっきの爆発音は・・・・ッ!?

あれが・・・ここの神殿の親玉か・・・アイツがこの神殿を好き勝手に使ってやりたい放題していた張本人なのか!!

ならば私たちも手を貸さなければなるまい・・・散って行ったヒールNPCたちの為にもな!!!」

「はぁ・・・危ないわよ??

意気込んでいるところ悪いのだけれど戦闘はすでに始まっているのよ?

だけどまぁ・・・サイドからの攻撃なんて姑息な手ね。

それにそのフォルムは・・・サソリかしら??」

エリエントはミストに襲い掛かっていた巨大な爪の攻撃をガードすると。

爆炎の中から本体が現れると同時に男はそのサソリに飛び移り上のフロアへ移動し。

ムクロはミストたちに説明を入れる暇がないと言って同じようにフロアを移動していきミストたちも移動するとそこは階段も柱もないただ広いフロアであり。

ムクロはすでに1人で巨大なサソリに攻撃を仕掛けていた。



「ゼイアァァァァッ!!!クソッ・・・通常のアンデッドスコーピオンよりも硬い・・・まさか・・・コイツもか!?」

「さすがにここまで来た明けの事はあるようだ。

その目に焼き付けるがいい・・・コレはNPC100体を軸に作り上げた超合成体だ。

強靭な肉体をNPCの血肉で作りスコーピオン種を混ぜた特別性。

このモブに勝てるモノはいるのか少し心配でな・・・その練習として君たちを指名したいのだが拒否権はないがいいだろ??」

「いいわけないわよ、ムクロ!!!私がスペルで弱体化させるからソコをつきなさい!!!」

「ある程度の攻撃のガードは私たちに任せていけ!!!」

「のじゃ!!!アタイたちならこんな低俗なモブなんぞ余裕なのじゃ!!!

――――――――――ぬぐおぉぉぉおぉおぉ!!!!」

「では私も手を・・・腕ごと貸しましょう。

―――――――――さぁ殲滅開始です剛腕装甲!!!」

攻撃をしたいと考えつつもミストたちは状況的にメンバーが足りない事を考えて自分たちはガードに徹する策に出ており。

ムクロもミストたちの気持ちを無駄にしないようエリエントが弱体化させた部位に強烈な一撃を叩き込み部位破壊をして見せた。



「どうだ・・・俺たちの連携を甘く見てるとすぐにソレはバラバラになるが文句はないよな???戦いを吹っかけたのはお前だろ??」

「何をしている!?早く立ち上がって再生させて攻撃をするんだ!!!

私をこの神に恥をかかせるとはお前も消えて行ったもの達と同じなのか??」

男は部位破壊されてもがくサソリを脅すように言い聞かせると。

サソリは失った腕の痛みを堪えながら叫び、その叫びと同時に失った部位から新しい腕が生えてきたのだがその腕はサソリのモノではなく人間の腕のような形状をしていた―――――――――

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