第224話 黒い天使の長:アドール
―――――――――――――――天世界:中層付近
ランスから伝わる熱さを無視しながらファムを見つめ、この先の手を考えたジールはランスの刃を掴み・・・転移スキルを発動し、ファムの死角から撃ち込んだのだが――――――
「だからソレは私にはもう効かないッ!!!」
「クッ・・・ふざけんじゃねぇヨ!!!!このジール様がお前のようなヒヨッ子の甘ちゃんに負けるはずが・・・・アルワケナイ!!!」
ジールはランスから手を放し、ファムに殴りかかるがそれ自体がフェイントで・・・ジールは転移スキルを自分の真後に発動して抱き着いたファム事串刺した。
「がはッ・・・・そこまでして・・・ジールはどうして勝ちたいの?」
「ハァハァ・・・決まってるじゃない!!私自身の証明の為!!!どこにいってもそう・・・力こそ全て、どんな手を使ってでも勝たなくちゃ何の意味も価値も虚しく消えるだけだからよ!!!」
互いのライフは赤色バーで瀕死の状態であったがジールは自分の体力を削りながら最後の一撃を叩き込むために槍を引き抜き、スキルを発動したが――――――
「そうだね、勝たなくちゃ意味も価値もないよね・・・私も初めはそうだった。
でも・・・ムクロと出会って、グロリアに行って変わったの。
――――――――ジール・・・世界は広いよ。
グロリアって言う世界は・・・天世界よりももっともっと広くて・・・アナタの知らない事で溢れているよ、今度出会えるのなら・・・友達になってね。
私、ジールの事を許すから終わりにしよう―――――」
「何を世迷言をッ!!!・・・・がッ・・・くッ!?
ガハッ・・・・やっぱり隊長の妹ね・・・そのバカみたいな甘さと人の事をバカにしたような言い方・・・まったく気に食わないケド・・・次があるのならそう言うバカみたいに生きるのも悪くない・・・か――――――」
ファムは腰に下げたムクロから貰った緊急用のナイフでジールにトドメの一撃を加えると・・・ジールはファムに自分の使っていた槍を転移させて手に取り・・・
「ファム、お前は私よりも強くたくましかった・・・だが、この先にいるクソ野郎は私らの力じゃ刃が立たなかった・・・だが、もしかするとあのムクロと言う男ならクソ野郎の野望を砕けるかもしれない、だから・・・甘ちゃんなアンタたちにこの天世界の命運とこの槍をファムに託すわ――――――」
「うん・・・ジール、この私たちが育った天世界を・・・ムクロたちと必ず救って見せるから、約束する!!!」
ファムの言葉を聞き届けると・・・ジールは手を伸ばして光に吸い込まれるように光りの柱となって消えていった―――――――――
そして、ファムは受け取った槍を背中に背負い・・・ムクロたちと合流するために空を飛んだ。
そして、テロンに道案内をされながら登っていくと・・・中層の間へとたどり着いたのだが・・・
「こんなワンコまで配備とは・・・相当この上には近づけたくなさそうだ。
ユリハ、レイ、ユキシロ・・・俺たちは前衛でワンコの動きを制限しつつ攻撃だ。
他のメンバーは後衛から攻撃とバフとデバフを頼む。」
「了解なのじゃ!!!さぁ~~~アタイより大きなワンコロじゃが・・・コレは見たことがない種じゃのぉ。」
「そりゃそうよ・・・あの黒くて得体の知れない何かと混ざってるわ・・・気を付けなさい。」
「うん、それにあっちも気付いたみたいだよ!!
テロン君はクーリアやエリちゃんの後ろで待ってて!!私たちが道を切り開くから!!!」
「さぁ、皆さん・・・戦闘開始です。」
俺たちは2人ずつで2手に分かれてワンコに向かうと・・・ワンコは片方に狙いを定めてキツイ一撃をユキシロに叩き込んだ。
「ぬぅッ!!!いい打撃をしておるのじゃ!!!じゃが・・・主殿の方が強いのじゃ!!!!
レイレイ、腕を封じている間に攻撃するのじゃ!!!」
「言われなくともです・・・・ぶっ潰れると良いです。
ハァッ!!!!!フンッ!!!」
「ちょッ!?あれじゃユキシロが潰れちゃうんじゃ・・・・」
「いや、ユキシロとレイはいつも思うがいいコンビネーションだぜ??
とかなんとか言ってないで援護に回るぞ!!!」
「何でいつもこんな戦闘が激しいのか・・・これは今度グチらないとだね!!!」
「そうね、でも・・・コレが終われば悩みの種が1つ無くなると思えば気が楽よ?
―――――――ダブルダウン!!!アグレッシブUP!!!トライステータスUP!!」
ユキシロとレイの連携でワンコにダメージを与え、デバフをかけると・・・どこからともなく笛の根が聞こえ地面から追加するようにワンコが4匹出現し、笛を吹きながら黒い天使も舞い降りてきた。
「よくぞここまで参られた・・・ここから先は、アドール様の間・・・簡単に通すわけにいかない・・・つまり、ここでお前たちを処分する。
ゆくがいい・・・レイドウルフたちよ!!!」
「また、天使かよ・・・・このデカいワンコは1体だけだが・・・他の4匹はちっさいのが救いと言いたいが面倒だな。」
「あの大きいのはレイとユキシロに任せて私たちは小さい方を片付けようよ!!」
答える前にユリハは小さいウルフに向かって移動し・・・それをカバーするようにクーリアはスペルで援護攻撃をし、俺もユリハと同じように小さいウルフに向かうと黒い天使は笛を奏でウルフに指示を与え・・・ユキシロたちのいる方へ移動させると不意の行動にユキシロたちは対処できずに噛みつかれていた。
「痛い痛いのじゃ!!!離れろバカ犬どもめが!!!」
「バカ犬とはユキシロが良く言ったモノですが・・・・邪魔ですので引き千切ります!!!」
と、レイは剛腕装甲で飛び掛かるウルフとユキシロに噛みついたウルフを消滅させ・・・デカイワンコ1体とウルフ2体となると・・・黒い天使はさらに笛を吹き奏でるとお次はゴーレムが出現し、黒い天使の笛を止めなければ消耗戦では不利と考え・・・ユリハ達に違う命令を出した。
「ユリハ、それにレイにユキシロ・・・お前たちはバックに戻ってクーリアたちの防衛を頼む。
ここからは俺が準備運動がてらにやらせてもらうぜ。
―――――――――クイックシフト!!!」
ユリハ達は何も言わずに下がり・・・その光景を見ていた黒い天使は俺に全モブを集中させて攻撃を仕掛けてきたが――――――
「遅いッ!!!遅い遅い遅い遅い!!!!
―――――――――ブレイブダンス!!!!ハァッ!!!ゼイアッ!!!!!」
「なッ!?ドレッドウルフ以外を一瞬で・・・コイツはヤバイ・・・ウルフよ・・・バーサクモードで一気に決めろ!!!」
黒い天使は怪しい音を奏でると、デカイワンコの体から赤いオーラが現れ・・・体がさらに筋肉質になり目が赤く光って暴走し始めた。
「ムクロ君ッ!!!私も援護に――――――――――」
「ダメですユリハ・・・このままではユリハも巻き添えになってしまいますよ?」
「そうだな、あのムクロはもはや・・・・ちょっとしたイカサマでもしない限り倒せそうにないだろうな・・・」
「完全に楽しんでる目ね、あのムクロは・・・・」
「さぁ、かかって来いよ!!!デカイワンコちゃん!!!
――――――――クイックシフト!!!」
――――――――――Grrrrrrrrrrrrrra!!!!
クマの様に巨大な腕で一撃を叩き込んでは来るが、長年のプレイで鍛えられた攻撃の受け流しによって・・・ウルフの攻撃が流されると同時に懐からスキル発動の光が溢れ、ウルフの体力が一瞬にして消滅し・・・鞘に剣を収めたと同時に巨大な体格をしたウルフは地面に倒れて消滅した。
「くッ・・・ここは意地でも通させはしないッ!!!」
「そうはさせないよ!!!!ハァッ!!!」
黒い天使が笛を吹こうとした時、戻ってきたファムによって笛が壊され・・・ランスの強力な一撃によって黒い天使は地面に打ち付けられていた。
「ぐ・・・あぁ・・・・ぐぐ・・・まさかこうなるとは・・・・」
「ファムが戻ってきたって事は・・・ジールを・・・いや、そんなことよりこの天使をどうするかだな。」
「コイツは縄で縛って上まで案内させよう・・・さすがにここから先はテロンを連れて行けば守れる自信がない。」
「そうだね、テロン君もこの辺で家に帰って状況が落ち着くまで安全にしてて。
――――――――約束できる??」
「う、うん・・・・でも、約束だよ。
あの悪い天使をお兄ちゃんやお姉ちゃんたちがやっつけて!!!」
「あぁ、任せろ。
俺たちはそのためにここにやってきたんだからな。
なぁ、ファム??」
「うん・・・そうだね!!
で、ここから先が天世界の脳である・・・導きの間だよ。
そこには天からの声が聞こえる場所があるみたいなんだけど・・・私は行ったことが無くて。」
ファムの見つめる先には怪しい雰囲気の漂う空洞があり・・・俺たちは黒い天使に案内をさせ奥にいる黒幕のアドールを見つけに向かって行った――――――
―――――――――――――――天世界:導きの間
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます