第88話 ユキシロの初めて
――――――――――18時58分・・・・プライベートホーム
俺達は雪原を歩きながら進み、転送ポータルを見つけると・・・・始まりの都に戻ってホームに戻って来たのだが・・・・・
「ただいま・・・ってまだ誰もいないのか。
姉さ・・・ミストもまだログインしていない・・・ユリハ、何か知らないか?」
「ううん・・・私達は解散した後・・・何かの用事でミストとクーリアが一緒に帰った所までは覚えてるんだけど・・・・その先の事は全く・・・・メールもグループチャットの方にも返信が帰ってこない所から見ると・・・まだ、外か通信の悪い所にいるのかな?」
「そうですね・・・・ですがクーリアはともかく、ミストはしっかりしたお方なので大丈夫かと。
それより、ご主人様達は各自シャワーでも浴びて体を綺麗にして来てはいかがでしょうか?」
「シャワーじゃと!?アタイは今までシャワーと言うモノで洗った事が無いのでの!
主殿、できれば・・・できればでいいんじゃが・・・アタイの体を洗って――――――」
ユキシロは体をサワサワしながら俺をちらちらと見ながら体を洗って欲しいと提案して来たのだが――――――
「そんなの・・・・ダメッ!!!」
「何故じゃ?アタイは主殿のモノじゃ・・・恥ずかしい事も何も無いぞえ?
その他に何か問題でもあるのかのぉ?」
ユリハはぐぬぬと顔をゆがめながらユキシロの言葉に負けることなく対抗を始めた。
「だ、だって・・・ムクロ君は私にとっても大切な・・・人だから―――――」
「それはアタイにとっても同じじゃぞ?
だからこそアタイは主殿に面倒を見てもらいたいのだが・・・・
そうじゃ!主殿に決めてもらうのはどうじゃろうか?
ユリハもそれであれば文句はなかろう?」
「ぐぬぬ・・・・・わ、わかった・・・ムクロ君が決めた事なら・・・た、多分反対はしないから!」
「お、おう・・・・そうだな・・・よし、ユキシロさぁ行くぞ――――――」
俺はユキシロの手を握ってシャワー室に向かうと、ユリハも気になりシャワー室前までやって来た。
「それじゃ、ユキシロ・・・解除だ。」
「服を脱げばいいじゃな?
そう、慌てるな主殿・・・こう言うのは雰囲気が――――――」
「ぐぬぬ・・・・」
俺はユキシロが手にかけた服をぐっと押さえ、ユニークスキルを解除するように言うと・・・・・・
「ほれ、これで良いのか?」
「よし・・・・ユリハ~これなら文句はないだろ?」
俺がそう言うとドアがガチャリと開き、ユリハが中を覗くと・・・そこには狼の姿に戻ったユキシロがいた。
「わぁ~~~これがユキシロの本来の姿なんだね!!
すごいモフモフ~~」
「だろ?これが人の姿になるなんて相当レアだと思うし・・・戦力と考えても申し分なしだ。
特にこのモフモフは元モブじゃないと再現できないふわふわ感だからな。
さて、話はここまでにして・・・ユキシロのシャワー開始だ!!」
「主殿!早く早く!!!」
ユキシロが騒ぎだし、静かにさせるために俺はユキシロのシャワーを開始した―――――
「あ、バスタオルがない・・・・私持ってくるね。」
「おぅ、頼むよ・・・さて、お次はシャンプーだな。」
「シャンプーじゃと!?それもアタイは初めてでのぉ!!
しっかり、色々面倒を見ておくれ主殿!!」
俺はシャンプーを2滴程手に取りユキシロの体に擦り付け、ワシャワシャと泡立たせながら洗っていると・・・・・
「あっ・・・・主殿・・そこそこ・・・あぁ~主殿に洗われるこの感じ・・・中々にいい気持じゃ~」
「そうか、それにしても・・・流れ落ちる泡が黒いんだが・・・元モブの頃は体を洗うと言う事もないだろうし、仕方ないか――――――」
俺は力強くワシャワシャとユキシロの毛を念入りに洗い流すと、良いタイミングでユリハが戻ってきた。
「はい、お待たせ。
バスタオルココに置いておくね。」
「ありがとう、さて・・・これでユキシロを拭けばおしまいだな。
さ、ユキシロこっちだ――――――」
「いい気持じゃった~また今度シャワーを頼むぞ主殿!」
俺は、はいはいと言いながらユキシロの体をごしごしと拭き残しが無いようにくまなく拭き取り、ユリハとシャワー室をバトンタッチしてユリハがシャワー室に入っていった。
すると、シャワー室に入っていったユリハが少し隙間を開けてブツブツこう言い始めた。
「ムクロ君・・・・覗かないでよ?」
「・・・・しないから・・・安心してシャワーしてくれ、俺も早く浴びたいからな。」
「主殿~人に戻ってもいいのかのぉ?」
俺はユキシロに戻っても良いと指示を出すと・・・・レイの仕立てた服が見事にびりびりの状態になっていた・・・・・
「この恰好で外に出ない方が良いな・・・ユリハのシャワーが終わったら服でも仕立ててもらうか。」
「ユリハは裁縫もできるのか!それはすごい才能じゃの~
アタイは裁縫も何もできんが・・・戦闘だけなら誰にも負けないぞえ!」
「ご主人様、ユキシロ・・・シャワーがお済みなのであればリビングでお茶おどうぞ・・・・
それに、ご主人様・・・いつまで汚れた衣服を着ているのですか?
その汚れた服はすぐに綺麗にしますので脱いでくださいますか?」
俺はレイに言われるがままTシャツ姿になり、汚れた衣服をレイに渡すとレイは少し笑みを浮かべて着替え部屋に向かって行った。
「主殿、そのシャツ姿も似合ってるぞい!」
「あぁ・・・普段着と言うやつだ・・・ユキシロは普段着とか無いのか?」
ユキシロは自身のメニューコマンドがある事に気付き、操作しているのか鼻歌交じりで何かをしているようだった――――――
「それにしても今日は女子会もあってか本当に人の集まりが悪いな。
でも、それだけ現実に充実出来てるって事はいいことだけどな――――――」
俺が天井を見て1人項垂れると・・・・俺のシャツをぐいぐいとユキシロが引っ張り、ユキシロの姿を見ると・・・・・
「主殿・・・こんな服があったのだが・・・どうだろうか?」
「ユキシロに似合ってるんじゃないか?ワイルドで。」
ユキシロはボサボサの髪から狼の耳を覗かせ、白いタンクトップに短いデニムのようなホットパンツ姿で太ももが大胆に出ている恰好であった―――――――
そして、ユリハを待っている間、ユキシロにクーリアやミストと言った俺の仲間の事について軽く話をしていると・・・・レイが戻って来た。
「只今戻りました・・・・ご主人様、衣装が綺麗になったのでお返し致します。
それと・・・ユキシロのその恰好は・・・一体・・・ご主人様が無理矢理着せた衣装ですか?」
「レイ、まずは衣装の件はありがとう・・・でも、このユキシロが着ている服はユキシロのアイテムストレージにあったものらしくて・・・ユキシロが普段着で着るそうだ。」
「うむ、主殿にもよく似合っていると褒められたのでな!
アタイもこのズボンは動きやすくて好きじゃぞ!
それに、この服は風通しが良くて気持ちいいのじゃ!」
ユキシロはタンクトップをひらひらさせながら風通しのよさを見せつけていたのだが・・・・
「ユキシロ・・・ダメですよ、ご主人様の前でそんなことをしては。」
「仕方ないのぉ~あと、レイレイの言ってたお茶とか言うのはまだかの?
喉が渇いて仕方ないんじゃが・・・・」
ユキシロは舌を出し、喉が渇いたアピールをしてレイに訴えかけると・・・レイもハッと気づきお茶を取りに台所に向かって行った。
「ユキシロって熱いお茶でも大丈夫なのか?
コーヒーとかたまに出てくるけど・・・苦いのとか渋いのとか・・・・」
「主殿、その辺りは大丈夫だぞえ!
アタイは熱いものも冷たいものも平気じゃ・・・それに味も色々あるのならそれはそれで楽しみじゃ!!」
ユキシロはまだかまだかと楽しみにしながら目をキラキラさせて待っていると、台所からレイがお茶を持ってやってきた――――――
「本日のお茶は紅茶になります、お茶菓子にロールケーキをどうぞお召し上がりくださいませ。」
「あぁ、ありがとなレイ・・・その、レイも一緒にお茶しないか?
そのうち、ユリハもシャワーから上がるだろうし・・・4人でさ。」
「うむ!主殿はやはり良い人じゃな!アタイも皆でわいわいするのも好きじゃぞ!
レイレイはどうかの?」
ユキシロと俺がレイに尋ねると、レイは考える間もなく二つ返事で台所に自分の分のお茶のセットを持ってきた。
お茶を3人で飲んでいると・・・ユリハがシャワーを浴び終わり、タオルで頭を拭きながら普段着でこちらにやって来た。
「ん~いい湯だった~それに良い匂い~今日は紅茶ねレイちゃん。」
「左様でございます・・・・ユリハもこちらでお召し上がりください。」
「さて、ユリハがシャワー上がった事だし・・・俺もシャワー浴びてくるかな・・・・」
「それなら主殿!アタイが主殿の体を洗ってやろうかのぉ!」
ユキシロがソファーから立ちあがり俺とシャワー室に向かおうとすると、ユリハとレイが全力で止めに入って来た。
「そうは・・・・させないよ?
ほら、お茶がこんなにあるんだから・・・・一緒に楽しく飲もうね?ね?」
「そうでございます、先程・・・うまいうまいと言って食していたロールケーキも御代わりがありますので・・・たんと召し上がってくださいませ――――――」
「ふ・・・2人とも・・・右手と左手が痛いのじゃが!?
主殿~~お助け~~」
俺はユキシロを見るよりもユリハとレイが手を振って早く行ってらっしゃいと言わんばかりな顔で見送られ・・・・俺はユキシロを助ける事をせず、シャワー室に向かって行った―――――――
―――――――――――19時21分・・・・シャワー中
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