第44話 終結は切り札で

―――――――――――21時48分・・・・・


――――――ヌァァァアアァァアァ!!!!!


スケルトンオーガの中から這い出してきたのは、アバターの・・・人の形をした骸骨であった。

その見た目はスケルトンと同じではないと一目でわかるほどの威圧と禍々しさがにじみ出ていた。


「――――ココハ・・・ソウカ・・・ココガ・・・グロリア!!・・・・」


そして何より違いがあったのはモブの判定がありながら言葉を使っている点であった。

このグロリアの世界には基本的に言葉を話すモブは上位も上位、神の域に達したモブでもない限り言葉を使えるものと出合った事がないからであった。

つまり、この骸骨のモブは神の域にまで達した強さのモブかあちら側の仕様で、単純に話せるモブなのか・・・・ロネッサにをされたモブなのか・・・それとも――――


骸骨のモブは両足で立つと辺りを見渡し、俺たちに気づくとゆっくりと近づいて来た・・・・・

骸骨のモブが移動すると巨大なスケルトンオーガの体が消滅し始めた――――


「お前は一体・・・・ロネッサの切り札ってところか・・・」

「ムクロ君どうする?・・・・あの見た目は・・・ただのスケルトンじゃなさそうだけど。」

「私もアイツを見ていると違和感とざわつきしかない、この威圧プレッシャー・・・相当な実力を持っていて間違いないだろう――――」

「お~~い皆ァ!大丈夫~って・・・何アレ・・・見た事もないモブ?」

「クーリア止まりなさい・・・私たちは少し下がって状況を確認しながら援護よ。」

エリエントが空気がおかしいと感じ、瞬時にクーリアの手を掴み後方に移動した。


「ホゥホゥ・・・・コレがグロリアの・・・・こちら側の戦士にしておくには勿体ない実力者揃い・・・・実に結構・・・・で、誰がワレの相手をするのだ?

サシでの希望なのだが、全員でかかってきても良いのだぞ?

おっと・・・ワレの名を開示していなかったな・・・

ワレの名は・・・ハシャ・・・強きものを欲する者・・・・」

骸骨のモブは自分の事をハシャと名乗ると、消滅しかけのスケルトンオーガの骨を数本引き抜きハシャの固有スキルか何かを使ったのだろうかハシャの体に骨が吸いつき服のように形を変え、腰にはソードのような武器がぶら下がっていた。


「お前となら話ができそうだが・・・まだ戦争は始まっていないが・・・

どうして先手を打ってきたんだ?俺たちが怖いからか?」

「ちょっと・・・ムクロ君・・・挑発しない方がいいよ。」

「ククク・・・ハッハッハッ!!

マダ、戦争が始まっていない・・・それは愉快だな!

ワレはあのロネッサから解き放たれた自由の身でアリ・・・・

タダ、オーガの体内で待ち侘びていたのだ・・・・強者ノ出現を・・・

そして、ワレは戦争なんぞに興味はない・・・タダ強者と我が身が黄昏るまで戦いたいだけ!

タダ、ソレのみ!」

ハシャが笑いながら戦争には関与していないと大きく吠えると腰にぶら下げたソードを引き抜き、対峙していた。


「そうか・・・・関与していないのか・・・だが、こんなに強そうな相手なら俺も是非お手合わせしてほしいところだ!

ユリハ、ミスト、レイ・・・ここは俺がサシで戦いたい。

我がままで無茶な事だと承知で頼む。」

「もぅ・・・何かあったらすぐに援護に入るから・・・無茶しないでね。」

「私も戦ってはみたいが・・・あのハシャというヤツもサシを希望していたな。

案外モブにも話がわかる奴がいるのだな。

存分に暴れてくるといい。」

「マスター・・・陰ながら応援させていただきます・・・御武運を。」

ユリハ達3人は邪魔にならないようにクーリア達のいる所まで移動し、状況の説明をしてこちらを眺めていた。


「ホゥ・・・・オマエがワレの相手を・・・サシで勝負とはなんと愉快ィ!

―――――名はなんと申す?」

「俺はムクロ・・・・カッコよく言うと一度、この世界を覇した者だ。

まぁ・・・過去の話だけどな。」

「ハハハハハハ!!ムクロか・・・クハハハハ!!|

この状況では言えヌ戯言ざれごとかと思えば・・・その目――――

その目は知っている・・・武をただ、ひたすらに・・・強さを求めた強者ツワモノの目!

いいぞ!たぎる!たぎるぞ!!!ムクロ・・・お前となら楽しい死闘ができそうだッ!!」

ハシャが大笑いしながら剣の構えを低くして俺に斬りかかってきた―――――


「早いな・・・ハシャの強さは本物・・・俺も少しマジにならないとやられるなッ!!」

「ヌゥォッ!!?・・・・・・見事・・・・だが・・・まだまだ始まったばかりだ!!」

俺はハシャの素早い剣戟を変装したソードでガードと回避を駆使しながら行動をうかがっていた。


「流石は武を極めしモノと言うべきか・・・ムクロ・・・

お前の強さはわかった・・・ならばワレも本気でお相手しよう――――

――――アクセルシフター!!!」

「なっ!!?」

ハシャはスキルに速度強化系を所持し、スキルを使用すると先程までとは比べ物にならない速度で加速しながら俺の腹をギリギリ削って行った――――


「お前・・・加速スキル使えるとか、モブにしておくには勿体ない強さだな・・・・」

「ムクロ・・・お前のその反応速度は人ではないがな・・・・もはや我々側に近い動きをする・・・」

俺は何とか斬撃をモロに受けずに済んだものの、少し体力バーが減っていたが気にすることなく武器を構えると、ハシャに負けじとクイックシフトを使用した。


「ハァッ!!!」

「ヌグォッ!!?」

「どうした?・・・・速さ自慢にしては見切れてないぞ?」

「クハハハハ!!!ワレに4撃も攻撃を与えるだけでなく、防御の態勢にさせられるとは・・・・本当に此度の死闘は実にイイ!!!

アクセルシフター×3!!!!」

ハシャの目が赤く光ったと思えば瞬時に目の前から消え失せた。


「消えた・・・・いや・・・早すぎて認識が追い付いていないのか・・・・

なら―――――感覚で防御ッ!!!」

「ナ、ニ・・・・・・」

俺は咄嗟に判断し攻撃を仕掛けてきそうな範囲と剣から伝わる風の感じで、およその範囲を割り出し、ガードに成功した――――


「あの2人の戦いは相当なものだな・・・・

私たちが入る余地がないくらいに―――」

「私たちがいたら間違いなく私が剣でバッサリされちゃうよ~ヒエ~」

「大丈夫、クーリアが囮になっている間に皆で攻撃しますので。

クーリアの死は無駄にはしません。」

「あはは・・・ムクロ君・・・頑張って・・・・」

「ユリハ大丈夫です、マスターがあのような悪趣味なドクロマスクには負けたりしません。」

レイはユリハの肩にそっと手を当てながら俺とハシャの戦いを眺めていた。


「―――――――はぁはぁ・・・ここまでやってお互いの残り体力は黄色バーのみ・・・一気に勝負を決めるか!!」

「ムクロもこう思っているだろ・・・・ここで決める・・・と!!!

それはワレとて同じ事・・・・最後の一撃をぶつけ合い、どちらが勝者となるか・・・いざ!!」

ハシャはそう呟くとスキルを使用したのか、武器が黒いオーラを纏い、それを見るとは当ってはいけないと全身が警告をしていた。


「それがお前の切り札か・・・・なら俺も切り札を見せるかな・・・・

ユニークスキル解放・・・・忌魔眼ラプラスのめ!!

さぁ・・・こいよ・・・・」

「急に、ムクロから漂う圧が変わった・・・・あのユニークスキル1つで・・・いや

、まて・・・・今まで強化スキルのみでワレとやり合っていたのか!!

何たる修羅のプレイヤーか・・・・ここまでの差が・・・良いだろう!!

そこまでワレの本気の本気が見たいのならば全力の全力をムクロ、貴様に叩き込んでやろう!!!!!

地・天・海・宇・絶・無・・全ては黒き儚き夢に・・・・黒極ノ一太刀クロムスターダーモスフィア!!!!!」

ハシャから放たれた黒い斬撃は地も草も根こそぎ腐らせ、廃土と化す無への衝動であった。


「マスターそれは生身では受け手はいけません!!

生あるものを地に返す輪廻の技です!!!」

「凄まじい、波動だな・・・森が揺れている・・・くッ・・・」

「ねぇねぇ・・・コレって大丈夫なの?」

「私たちは自分たちの心配をすることが大切だと言う事です!

ムクロがしまっても・・・・・・・・」

「ムクロ君・・・絶対、絶対負けてないって・・・信じてるから・・・

信じてるからね!!!」


「これで・・・終わった・・・・ワレの勝利・・・・ナニ・・・」

「誰が・・・勝ったって?誰が・・・・」

俺はソードで黒い斬撃を切り裂きながら前に前にと前進してハシャの所までやってきた。


「バカな・・・・この黒の衝撃に触れれば即死の衝撃・・・ワレとてそれは同じ条件の奥義中の奥義・・・・何故ムクロ・・・お前は受けても生きていられる!!!」

「俺のユニークスキル・・・魔眼は・・・全てに対してのがわかる。

その黒い斬撃もこの目の前では無力だったって事だな・・・・」

ユニークスキル、魔眼・・・本当に何かがなければ使用はしないと決めていた能力・・・・

使用すれば右目の黒い瞳が赤く変わり、目から溢れ出る赤黒いオーラは全てを見透かすように全てを監視する。


「クハハハハ!!やはり生身のプレイヤーはコレだから面白い・・・・・

強者はまだいたのだな・・・・ワレを感服させられるほどの強さの持ち主・・・ムクロ・・・

お前のその強さを見込んで頼みたい・・・ワレの故郷を・・・アチラ側の世界を女神が乗っ取った世界を救ってやってはくれないか?」

「ハシャは自分で取り戻そうとは思わなかったのか?」

「ワレはあの女神に仕組まれた存在・・・故にあの世界に害なす事が一切できないのだ・・・・

だが、ワレにも誇りがある・・・強者と戦う事以外に、世界は自由であるべきだと。

力で支配する世界に自由などない・・・あの女神から救ってやってくれ。」

「そう言う事か・・・なら、この最後の一撃もいらないな。

あちら側の女神とは近く戦う事になるだろうから俺たちもこのグロリアを守るためには勝利する必要がある・・・だからついでにハシャの世界も救ってやる。」

「クハハハ・・・ワレを倒す事で得られる経験値は要らぬと申すか・・・・ならば!!

我は再び黒へと還り、再びムクロ・・・お前と必ず決着をつける為に更に強くなって戻ってくるぞ!!――――それで、良いのだな???」

「良いぜ、またハシャと派手な戦いがしたいからな・・・・それに、いつまでそこで傍観している気だ?――――そこで見ているんだろ?

側の女神・・・・・いや、女神スヴェルト!」

俺が月を睨んでいると、ハシャとの戦闘が終わったと感じたのかユリハ達は俺のもとに集まった瞬間――――


「あらあら・・・・バレていたの。

その目は本当に・・・忌々しい――――」

月が割れ落ち、中からは黒いドレスを纏ったあちら側の女神スヴァルトが現れた――――


―――――――22時10分・・・・・

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