179

 留空と望月をみんなで見送り、男性陣は主役抜きで二次会に行く話をしていた。


「雨宮さんたちもご一緒にいかがですか?」


 すかさず隣にいた陽乃が口を挟む。


「いいですね。柚葉も美空も飲み足りないでしょう。勿論行くよね」


「ごめんなさい。私はここで失礼します」


 男性には興味のない美空が即答した。


「残念だな、高原さんともっとお話ししたかったのに」


 男性の一人が、美空に興味を示した。外見は冴えないが、職業は勿論医師だ。


 美空は一瞬チラッと彼を見上げ、「今夜は失礼します」と、素っ気なく答えた。


「柚葉は行くでしょう。幹事なんだから。それとも、このあと用事があるのかな?」


 意味深な陽乃の言葉に、木崎が私を見つめる。


「ごめんなさい。私も今夜はここで失礼します。木崎さん、今夜は幹事を引き受けて下さりありがとうございました」


「いえ、こちらこそありがとうございました。雨宮さん、高原さん、お気をつけてお帰り下さいね」


「はい。失礼します」


「柚葉、美空、また明日ね」


 陽乃は男性に囲まれ、紅一点となりヒラヒラと手を振った。


 余裕綽々だな。

 華やかで美しい。女性から見ても、陽乃は魅惑的だ。


 私と美空は、みんなとマリエージュの前で別れ、駅に向かった。


「美空、権田ごんださんに気に入られたみたいね」


「柚葉やめてよ。陽乃みたいな言い方しないで。権田さんは南原総合病院の外科医で四十歳。一回り以上も年上だし、外見もイマイチ、動物に例えると熊が眼鏡かけてるみたいだし、望月さんや木崎さんみたいなイケメンとは違うわ」


「意外だな。美空、いつの間にそんな情報を?権田さんに聞いたの?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る