174
家族団らんしている時に、日向のことを考えている私は、どうかしている。
◇
―翌週木曜日―
部屋もすっかり片付き、家族との生活にも慣れた。
今日は店休日、渋谷マリエージュで留空と望月のお祝いの会。
いつもより少しお洒落して、出掛ける準備をする。
「お姉ちゃん、今日は気合い入ってるね。デート?」
「違うわ。友達が入籍したからそのお祝いパーティー」
「とかなんとか言っちゃって。お泊まりするなら、協力するよ」
「何言ってんの。バカなことばかり言ってないで、少しは勉強しなさい」
「はいはい」
花織はプーッと口を尖らせ、部屋を出て行く。
木崎と逢うのは、あの日以来。緊張しないと言えば、嘘になる。
―渋谷マリエージュ―
午後六時過ぎ。
集合時間よりも少し早めに来店した私は、店の入り口で木崎と出くわす。
「こんばんは。お久しぶりです」
「雨宮さん、こんばんは。随分早いですね。時間、間違えて伝えてしまったかな」
「いえ、何かお手伝いすることがあればと思って、少し早く来ました」
「ありがとうございます。実は個室を借りていて、店長に許可を頂いているので、少し飾り付けをしようかと思っています」
木崎の両手には紙袋が握られていて。中にはメッセージボードや飾り付けの生花等が入っていた。
「木崎さんがお一人で用意されたのですか?」
「一応幹事なので。みんなの気持ちが明るくなればと思いましてね。不器用なので上手く作れませんでしたけど」
木崎は照れ臭そうに笑った。木崎の人柄が滲み出る、優しい笑顔だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます