122
「留空……」
自身の苦い初体験が脳裏に過る。小暮の一言が、今でもトラウマになっている。
「望月さんは紳士だから。きっと留空が初めてだと知り、嬉しかったはず。嫌いになったりしない。大丈夫だよ」
望月は小暮とは違う。
留空を優しく受け止めて欲しい。これは私の願望。男性がみんな小暮みたいにデリカシーの欠片もないとは思いたくない。
「望月さんはきっとまたメールしてくれる。だから待っていればいい」
「……体だけの関係にはならないよね?望月さんは医師だし、きっとモテると思うんだ」
「そうね、高収入、高学歴、でも婚活パーティーに来ていたのよ。恋人がいたら来ないわ」
「……そうかな」
「それに、留空はとっても綺麗になった。きっと真剣に考えてくれるはず。でも一度関係を持ったからって、結婚とかすぐに意識しないほうがいいよ。お互いが必要なら、自然とそうなるから」
「わかってる。ただセフレにはなりたくないだけ」
あのおとなしい留空の口から、セフレという言葉が飛び出し、私は驚いている。
恋は人を変える。
それは外見だけではない、心身共に成長させるのだ。
私は小暮の言葉に傷付き、あれから成長どころか、恋に臆病となり一歩も進めない。
恋も結婚も本音でいえばしたいけど、心と体がどこかで拒絶している。
「望月さんから聞いたんだけど、木崎さん柚葉の体調のこと心配してたって」
「木崎さんは内科医だからね。専門分野だもの」
「そうじゃないよ。木崎さん本気で心配してたみたい。柚葉は本当に付き合う気はないの?柚葉が木崎さんと付き合ってくれたら、私も心強いんだけど」
「ごめん……。木崎さんはいい人だけど、恋愛とか結婚とか考えられないの」
――ふと、脳裏に浮かんだ。
日向との……キス……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます