まず一勝
ダイヤモンズは最上が八回までをきっちりと抑え、4対1のまま、九回表の攻撃を迎えた。
八回も三者凡退でダイヤモンズを抑えたウィルはここで交代となった。最終回のレッドスターズのマウンドには昨シーズンまでの守護神である榊が立った。
「さあ、仕上げだ」
森国はブルペンへと電話をすると「地蔵と武内は大丈夫だな」と確認をする。
榊は昨シーズンまで、抑えを任されていたが、安定感に欠ける部分があった。守護神とは言っても、制球難からランナーを貯め、一発を浴びて救援失敗というケースもあり、絶対的な存在にまではなっていなかったのだ。
そこで森国が考案したのが、リリーフのさらなる分業制である。この分業制は広島ドームの観客、関係者に大きな驚きを与えることになる。
ダイヤモンズの先頭は一番の織田。榊は織田に対しては相性が良く、昨シーズンも打率一割台に抑え込んでいる。
この日も榊はストレートとスライダーを駆使して、サードゴロに打ち取る。
「ダイヤモンズ、投手の交代をお知らせいたします」
もう何度目だろうか。このアナウンスが広島ドームに響いたのは。榊は笑顔でマウンドを降り、二番徳川に対しては地蔵が向かうことになった。
地蔵もチェンジアップで徳川のバットを詰まらせて、センターフライに仕留めた。
ツーアウトとなり、またも投手交代した時には、もう、森国の采配に驚く者はいなかった。九回に三つのアウトを取るが、一つに対し投手を一人投入する念の入れよう。三番の伊達には武内が相対したが、走者なしで3点差というのが大きかった。一発を浴びてもまだ2点あるというのは、野球にとって大きなアドバンテージとなる。
逆に言えば、武内はそれだけ余裕を持って投球が出来ることに他ならない。
カウント2ー1から、武内の投じたスクリューは伊達から見事に空振りを奪い、レッドスターズは開幕勝利を挙げたのである。
ベンチから飛び出て戻ってくるグラウンドの選手たちを迎える森国。
「とりあえず、一勝しましたね」
隣にいた相沢も安堵の笑みを浮かべている。
「まだ一歩優勝に近づいただけだ。ここからが長いからな。ただ、この一勝は大きな勝利になるのは間違いない」
森国は少なからず、自身の構想、采配に不安を抱いていたが、開幕戦に関しては間違っていなかったと証明できた。それも大きな収穫の一つだった。
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