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「ごしゅーじんさま。時間制限があるのはご存じですかー?」

「え? 知らないよ! どのくらい?」

「一分間です」

 そんなに短いの? 今何秒だ? ていうかなんで今まで誰も教えなかったんだ? というのは考えるまでもない。一分だなんて言えば皆焦るからだ。焦燥から自滅した男の子を思い出す。

「今どのくらい?」

「四十秒過ぎましたかねぇ」

「くっ」

 残りのブーボーは一発。最後の望みをかけて撃ち出すが、無情にも天に昇って行った。

 一応機関砲もついているが、この鈍重な機体では勝ち目はない。ミサイルが全てなのだ。

「上へ出よう」

「それしかありませんねぇ。時間切れは共倒れですから」

 なんて事だ。こんな事になるなんて。やはり只者ではなかった。上に出た途端にやられる!? しかし他に選択肢は無いのだ。機体を上昇させながら僕はもう、負けているのかもしれないと覚悟を決めた。


 しかし敵の機体はいつの間にか目の前にあった。

「え?」

 あまりの事に頭が真っ白になる。


「ごしゅーじんさま。攻撃を……」

 いや、でも。……罠?

 しかし……、あれは。


 僕の目に映ったのは肩を抱き、寄り添う二人の後ろ姿。

 恋人が安らかな一時を楽しむように。


「ごしゅーじんさまっ!」


 珍しく慌てた声を上げるカスミの声に、僕は……。


 トリガーを引きながら絶叫していたのだと思う。

 だが僕には一切の音が聞こえなかった。


 視界の先に浮かぶ機体に、ぽつっと黒い点が落ちる。

 また一つ。……また一つ。ひどくゆっくりと黒い穴が増え、やがてキャノピーが割れ、座席が跳ね飛ぶ。


 二人は、心中して既に命を絶っているかのように無反応だった。

 だが僕には、最期まで二人が手を離さなかったように見えた。

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