第38話 新学年①
春休みの間、七海は図書室で借りた4冊の本を、5日間で読んでしまい、少し後悔していた。
……あ~あ、もっと話の長い読み物と、辞書を借りるんだった……
家には辞書がなかった。この前、七海は辞書が欲しいと母親に伝えたが、何も言われずに無視された。
春休みが終わり、七海は5年生になった。さすがに最初から遅刻するわけにはいかなかったので、早く起きて準備をし、早めに学校へ行った。5年生のフロアに行き、教室の外に張り出しているクラスの名簿を見て回った。3組だった。
教室へ入ると、出席番号順に座るように黒板に書かれてあったので、12番の席に座った。少しずつ、みんなが教室に入って来た。
「七海ちゃん!」
「あ、遥香ちゃん」
「なんか、久しぶりね」
「うん、久しぶり」
「じゃあ、私あっちだから」
「うん」
遥香ちゃんと同じクラスになったのは2年生以来だった。あのころはよく一緒だったなあと考えていたら、隣の席に乱暴にカバンを置く男の子が来た。その子はしばらく七海をじっ-とにらんで、乱暴に椅子を引き、乱暴に座った。
担任の先生が入って来た。
「は~い、きり~つ!は~い、みんな立って~!は~い、きをつけ~、れ~い」
「おはようございます」
「は~い、みんなおはよ~、担任の藤井康隆です! 1年間、よろしく! お願いします!」
「おねがぃ…ます」
「はいはいはい! (パンパンパン) 元気ないね~、は~い元気よくいこ~! よろしくお願いしま~す!」
「お願いします!」
「は~い、OK。じゃあ今から始業式だから、みんな体育館に行くぞ~!はいは~い! 急いで、急いで~」
隣の乱暴な子が、ぼそっとつぶやいた。
「うっるせ~、なにはりきってんだよ」
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