コハク
気が付くと雨が降っていた。いつから降っていたのか。まるで気付かなかった。
「まったく、つくづく主人公にはむいてないねぇ...。」
「ん?どうした」
「いや、何となくね。なんだかいやな天気だ。」
「それが主人公と何の関係があるんだよ。」
「物語ではいろいろな関数は主人公に味方するんだよ。たとえば天気なんかはね、主人公が行動を起こそうとするとそれに合った天気になるもんだよ。」
「なるほど。でも、晴れていたところで何か案はあるのか。」
「まったくだよ。何も考えられない。」
「俺もだ」
また沈黙が下りた。
コハクは内心驚いていた。今まで一緒にいた人がいなくなり、自分の想像を超えて愕然とした。あそこから逃げ出したのだってレンについていっただけみたいなものだ。ここに行きついた後だって何が何だかわかっていなかった。レイナが死んだことが信じられなくて、何も考えずにいた。そしてすべてを忘れたようにこれからのことを考えようとした。それなのにこれからの話をするとレンは俺の胸倉をつかんだ。そして俺はレイナのことを忘れようと、夢だと思おうとしたことに気が付いた。そしてまた絶望していた。そうしているとレンは復讐をやると言い出した。確かに俺たちには似合わない。なのにこの上なくしっくりきた。誰に対して、なんのためになんて何もないのに妙に心にすとんと落ちた。そしてすぐに乗った。そして自分のように忘れるため次を考えるのではなく、本当に、生きた思考で次を生みだしたレンに素直に驚愕した。まだ自分は何もできていないのに、次をまた踏み出そうとしているレンに驚いた。
「さてこれからどうしようか。」
「お前が言い始めたのに何も考えてないのな」
「しょうがない、ほとんど思いつきだし。」
「そうかい」
ほんと、こいつはすげぇ。思いつきでもなんでも行動を起こそうとしたんだから。
「ま、とりあえずやむまで待機だな」
コハクはそう言って思考をようやく前に進めた。
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