第130話 攻略パーティー

凍りついた湖は、ゴン太が乗っても割れないくらいに丈夫で、歩いて湖中央にある島へと向かった。もう少しで中央の島につきそうなところで、いきなり近くの氷がぶち破れた。そしてそこから、全身鎧のような骨格に覆われた巨大な魚が飛び出してくる。その魚は飛ぼ出した勢いそのままで、紋次郎を真上から襲う。


ゴン太がその魚の攻撃を両手で防ぐ。魚はゴン太に弾かれるようにバウンドして、凍った湖に氷をぶち破りながら潜り込んだ。


バキバキと異常な音が湖の底から聞こえて来る。どうやらあの魚は凍った湖を砕きながら泳いでいるようだ。あの氷結魔法に耐えた耐久力と、凍った湖を何事もなく泳ぐその力を見ても、並のモンスターではないようである。


バキバキと氷を砕く音がすぐ下から聞こえて来る。先読みの映像で、紋次郎の真下の氷を突き破り、攻撃してくる魚が見えた。すぐにジャンプして、紋次郎はその場から離れる。


先読みの映像通りに真下の氷が弾け砕け、魚が飛び出してきた。紋次郎は敵の軌道を先回りして、着氷する場所で待ち構えていた。そして魚が突っ込んできたところを剣で振り抜いた。魚は口の中心から紋次郎の剣で切り裂かれていく。


さすがに、鎧のような硬い骨格に守られた巨大魚も、紋次郎の剣の前には無力であった。真っ二つに裂かれた魚は氷にめり込み動かなくなる。


目の前の脅威を取り除いた紋次郎は、周りを警戒しながら、中央の島へと上陸した。


紋次郎は、中央の島で11階層へと続く長い階段を登っていく。下から吹き上がる凍った湖の冷気が肌を冷やす中、他のモンスターに襲われることもなく11階層へと到着した。


11階層は、高い木々が生え並ぶ森林地帯であった。紋次郎がそのフロアーも見渡していると、階段を上った場所から少し離れた場所で、幾つか煙が上がっているのを見つける。

「もしかしたらあれがエラスラの塔の攻略パーティーかな・・・」


そう思った紋次郎は、すぐに煙の方へと近づいていった。


やはりそれはエラスラの攻略パーティーのようであった。紋次郎はすぐに近づいて挨拶しようとした。


「止まれ! なんだ貴様は!」

見張りに立っていた一人の冒険者に呼び止められる。


「あの・・俺をこのパーティーの同行させてもらえませんか?」

いきなりではあるが、ストレートにそう伝える。

「なんだと・・というか、お前は何者だ? ここへどうやってやってきた?」

「え・・と話せば長くなるんですが・・どうしてもこの塔の頂上に行かないといけなくてですね・・」


そう話していると、一人のポニーテールで朱色の武道着みたいな服を着た女性が近づいてきて話に加わる。

「どうしたのルイデル、彼はなんと言っているの」

「はあ・・ファミュさん、それがこの男、パーティーに同行したいと言っていまして・・」

「なるほど・・あなたはレベルはいくつ?」

「はい・・82です・・」

「82!! ちょっと待って、あなたここまでどうやってきたの? とてもそのレベルで到達できる場所じゃないわよ」

「まあ、なんとか頑張ってやってきました」

「いや・・頑張ってこれるような場所じゃないんだけど・・」

そう言いながら、ファミュは、紋次郎の連れているゴン太を見て何かに気がついた。

「あのゴーレムはあなたが連れてきたの?」


「はい、そうです」

「なるほど・・あのゴーレムの力でここまでやってきたのね・・」

ファミュは、ゴン太にとんでもない戦闘力が秘められていることを見抜いた。そしてここまで紋次郎が無事にこれたのはゴン太のおかげだと勝手に思い込んでいた。紋次郎は説明するのがめんどくさいので、それを否定しない。


「そうですね、あのゴーレムのおかげだと思います」

それを聞いたファミュは少し考えてから答えを出した。

「ゴーレム使いとして、あなたが優秀なのはわかりました。だけど正規の値段で受け入れるのは難しいですね・・」


どうやらファミュさんは、俺が雇って欲しいと思っていると勘違いしているようなので、それを訂正する。

「いえ、同行させてもらえればお金は要りませんよ」

それを聞いたファミュは顔色を変えて紋次郎に話しかける。

「そうなのか? 後で払えと言っても払わないよ」


俺は自信を持って即答する。

「はい。そんなこと言わないです」


少し考えたファミュは紋次郎に返事をする。

「わかった、そこまで言うなら君の同行を許可しよう。しかし、無料の同行でも私の指示には従ってもらうよ、それでもいいか」

「はい。問題ないです」


紋次郎はなんとかエラスラの攻略パーティーに同行することができた。パーティーの人数は11名と少数精鋭で、ファミュさんがこのパーティーのリーダで伝説級冒険者であった。パーティーの人たちはみんな強そうで頼りになりそうである。



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