第119話 迷宮主の激闘

ポーズは呆然と上を眺めている・・そこには昔話に出てくるような巨大で強そうな龍が、自分たちを見下ろしていた。

「おい・・リュヴァ・・本当に大丈夫なのか・・いきなりガブッといかれないだろな・・」

心配になったポーズはボソッとその龍を連れてきた少女にそう話しかける。

「大丈夫・・知ってるおじさんだから」

「そうは言ってもなぁ・・」


すでにポーズたちの元には聖炎龍を連れたリュヴァと、リリスが合流していた。そして、橋を壊され行けなくなった空中城にどうやって向かうか話をしていた。結果、聖炎龍の背中に乗せてもらい運んでもらうことになったのだが・・リュヴァがいるとは言っても八竜の一つの背中に乗せてもらうのはかなりの緊張を伴った。そのため、背中に乗っている間、終始全員無言であり、冷や汗でびちょびちょになってしまう。


空中城では、リンスたちが空中城の城内に入る扉の前で立ち往生していた。そこへ、聖炎龍に乗ったポーズたちが現れる。いきなり大きな翼を羽ばたかせながら巨大な龍が近づいてきたので、リンスたちは戦闘態勢に入っていたのだが、ポーズの間抜けな顔がその龍の背中から見えて剣を収める。


「みんな無事か? アホ主の姿が見えねえけど・・」

「残念ながら、紋次郎様とニャン太と逸れたままなの。多分この中にいると思うんだけど・・」


リンスが言っているのは城内の扉であった。

「そんなもんさっさと壊して中入ろうぜ」

「簡単に言わないでくださいポーズさん、さっきから攻撃魔法で破壊しようとしているんですけど、信じられないくらい丈夫で全く壊れないんです」


アルティの魔法が通用しないのでは本当に壊すのは不可能なのかもしれない、さすがのポーズもそう考えていた。

「他の入り口はないのか?」

「そうですね・・それを探すしかないですかね」


ということで、全員で手分けをして別の入り口を探すことになった。みんな口には出さなかったけど、紋次郎のことを心配していた。いくらニャン太が一緒でも何が起こっているかわからないこの状況では、安心などしていられなかったのである。


紋次郎はターボを使用した。あの青いブレスは危険すぎる。触れるのも危ないと思い、最善を尽くすことにしたのだ。


今の紋次郎がターボを使用すると、凄まじい速さへと加速した。それは敏捷力だけではなく、攻撃速度もとんでもない速さになっていた。その超加速でヴァルバロッサの後ろに回り込んだ紋次郎は、剣を振り回し攻撃する。技も技術ないただ闇雲に剣を振り回すだけであるが、その凄まじい高速の攻撃はヴァルバロッサの体を切り刻む。とてつもないその攻撃力に、さすがの旧約の悪魔も無事では済まないかと思われた。だが、結果、ヴァルバロッサは傷一つ付く事は無かった。それはこの悪魔の周りに渦巻いている黒い闘気に剣が阻まれ、体までその刃が到達していないのである。


紋次郎・・残念ながらその黒い闘気は物理攻撃を遮断するんだ・・・どんな強力な攻撃だとしても通常の物理攻撃は通用しない・・その闘気を物理攻撃で破るには、君も闘気を纏って攻撃をする必要があるんだけど・・・


残念ながら、ステータスだけは伝説級冒険者に匹敵するほど上昇している紋次郎だが、戦闘技術の無い彼に闘気を操ることなどできなかった。


ちょっとニャン太・・闘気を纏うって言われてもどうやるの・・


う・・ん・・こればっかりは口で説明しても教えられないんだよね・・こんなことになるんならミュラーナに魔波動でも習っておくんだったね・・・


いやいやニャン太、そんな後の祭りみたいに言われても・・それじゃあ・・どうすれば良いのさ・・


頑張れ・・


「応援だけかい!」


無慈悲に紋次郎を突き放したように見えたニャン太だったが、ちゃんと頭では対応を考えていた。別に闘気でなくても良いんだ・・波動のエンチャントとか・・ホーリーオーラの魔法でも良い・・今の紋次郎にそれを付与できないか・・


必死に対応を考えて、一つの可能性に思い当たる、それはあの剣の能力であった。あれほどの魔法剣である、発動型の魔法オプションの一つや二つついているんじゃないだろうか・・・そう思ったニャン太は、剣をサーチした。


剣をサーチしたニャン太はその性能に驚愕する。嘘だろ・・なんだこの馬鹿げたスペックは・・・紋次郎はとんでもない武器を手に入れたんじゃないだろうか・・神族であるニャン太が驚愕するその性能とは・・・全魔法発動オールマジックアクティベート・・全ての魔法を発動する力があの剣には秘められている・・全てと言っても特殊な魔法はさすがに無理だが、一般的な魔法なら魔法の知識などがなくても、あの剣があれば誰でも発動ができる・・そんなとんでもない代物であった。

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