第79話 蜘蛛の巣
紋次郎のダンジョンの攻略の為に突入していた第一陣が、外にある本部へと帰ってきた。そこで内部の様子をルイーナに報告した。
「何、アラクネだと・・」
「はい、第一陣の8人が殺られました。現状戦力では討伐は難しいと判断して引き上げてきました」
「あのアラクネが相手では確かに第一陣のメンバーでは難しいかもしれないわね。それでは、第二陣と合流して、アラクネを討伐しなさい」
第二陣は突撃隊であった。重武装の戦士を始め、攻撃力の高い魔導士が編成されていて、第一陣とは比べ物にならないほどの火力を秘めていた。
中ボス部屋にやってきた第一陣と第二陣の合流隊は、アラクネの討伐に乗り出した。まずは強力な装備に身を固めた戦士隊が、お互いを守りながら部屋へと突入する。
無数の風を切るような音が鳴り響く。数千の透明の糸が戦士たちに襲いかかる。硬い装備に阻まれて、ダメージを与えることはなかったが、その糸で体を絡め取っていく。すべての戦士たちが動きを封じられる。しかし、そこへ魔導士隊が突入してきた。
拘束されている戦士たちの周りに攻撃魔法を打ちまくる。糸が切られ、戦士たちの拘束が解かれていく。
「アラクネはどこにいる?」
糸は襲いかかってくるが、アラクネの姿を見つけることができない。
糸の攻撃を退けながら、本体であるアラクネの姿を探していた。不意に数人の冒険者が集まっていた場所に、どす黒い影が生まれる。それは漆黒の沼となって、そこにいた冒険者に襲いかかる。足を取られ、そのまま沼の底へと引きずり込まれていた。
「シャドウ・スワンプだ! そこから離れろ! バラバラにされるぞ」
だが遅かった。逃げ遅れた数人の冒険者は影の沼に引きずりこまれ、バラバラの肉片となって吐き出される。
「アラクネを早く見つけ・・ぐぁ・・・うぎゃーーー!!」
そう言いかけた冒険者の一人の腹が吹き飛ぶ。その後ろには怪しく微笑む、蜘蛛の女が佇んでいた。
「いたぞ! 囲め!」
アラクネは腹を震わせ、体の中で作った毒を振りまいた。それは強力な神経毒で、吸い込むだけではなく、皮膚に付着するだけでその効果を発揮した。部屋に入っていた冒険者が次々と倒れていく。
隊に同行していたヒーラー達が、その毒を中和する為にエア・クリーナーを使用する。しかし、毒が強すぎて、その効果も万全ではなかった。
「どうしますか?」
「戦士は武器を変えろ、全員長槍を持て! そしてそのままアラクネに一列陣形で突撃! 魔導士は攻撃魔法を詠唱! 戦士隊が動きを止めている間に一斉攻撃! 長期戦は不利になる、多少の犠牲は仕方ない、一気に勝負をかけるぞ!」
リーダーの指示に従い、戦士たちは武器を長槍に持ち替え、一列の陣形で並ぶ。そしてそのまま突撃した。長槍がアラクネの蜘蛛の下半身を捉える。動きを封じられて、怒り狂うアラクネは殺傷能力の高い、破壊魔法を発動させる。アラクネの周りに青い魔法文字が浮かび上がる。そこから強烈な爆発が起こった。近くにいた戦士たちは吹き飛ばされて粉々にされる。
しかし、魔導士隊の魔法詠唱が完了していた。炎、風、氷、光、雷、あらゆる属性の魔法がアラクネに襲いかかる。長槍の攻撃で動きを封じられていたこともあり、アラクネはそのすべての魔法をまともに受ける。さすがにその火力に無事にすむわけもなく、原型を残さないほどのダメージを受ける。
「もう虫の息だ、止めを刺せ!」
そこにいたすべての者が、もはやまともに動けることのないその敵に、止めを刺す為に動き出した。
アラクネは主の命がある為に、そう簡単に殺られるわけにはいかなかった。最後の力を使い、少しでも多くの敵を道連れにする。それはアラクネの最後の技である。アシッド・バーンと呼ばれる自爆技であった。すべてを溶かす強烈な酸を爆発的に振りまき、周囲の敵に致死的ダメージを与える。それにより、部屋の中にいた冒険者の九割が命を落とした。
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