第18話 七つの大罪の神獣と人造魔神

「では、我々七つの大罪について掻い摘んでお話させて頂きます。我々七つの大罪は、もともとはただの高位の悪魔でした。ですが、そのなかで、種族聖戦が起きました。


 当時の人類は古代文明による応戦を、我々は主に神の使徒、吸血鬼と戦っていたのです。吸血鬼とは、神々が過去に滅ぼされるときに、神々が己を神獣という神格を持つ獣にし、その寄りしろが覚醒吸血鬼です。


 悪魔は対照的な存在でしたから、その歴史の前に、我々悪魔は一度、神の逆鱗に触れました。まあその詳細は主に話すまでもありませんが、その代表を務めたのが私を含めた七つの大罪です。当時は階位の高いだけの悪魔でしたが、罪の象徴として神々に烙印を押されたわけです。種族戦争を硬直状態で中断した我々は、眠りにつきました。あのときの悪魔は神々との戯れで著しく戦力が低下していましてね、仕方ない状況ではあったのですが。


 その我々が目覚めたのは2100年前後、世界にはじめての呪われた血の魔女が誕生したときです。当時、精霊、機甲魔人と交流を深めていた人類は、完全に孤立した七つの大罪の悪魔を呼び起こし、遣うことにどうやら決めたようですね。その悪魔と契約したのが七人の魔女様たちです。


 私は初代から呪われた血のブラッド・オブ・プリンセスにお仕えしてきました。その時、長きに渡り生き過ぎた我々は神格を手に入れました。この姿と神獣の姿ですね。ですが、我々は悪魔だ。その事実は変わらない。そこで、我が主は魔神、先ほどの人工的に作られた神格の宿り身を創ったのです。その力が何故、あなた第十三始祖に帰結するのか、その詳細は私にはわかりません。それに、私が具現化できたのも、同じようにわかりません。封印式が動いたのもまたわからない。その中での共通点は、あなたが呪われた血を吸うことにあるようです。ですから―」


 ルシファーは再び零機に頭を垂れて言う。


「どうか、姫様や、他の魔女様たちを、血を吸うことで自由にしていてだけないでしょうか?」


 ルシファーの言ったことは尤もだ。零機が血をすえば、その力の封印は零機に移される。それが不老不死の吸血鬼だというのならなおいい。力の封印というのは、具体的には、血の制御にある。先ほどの燐火のように、血は使える。だが、その量は限られているし、零機が吸血鬼の能力を使っている間は呪われた血の力は一時的だが完全に動かされるので、その間は呪われた血の転生能力者たちは自由になる。呪いに縛られない本当の自由を。

 だがそれと同時に、転生能力者の力が使われている間は神獣は使えない。人造魔神も同じだ。


「構わない。俺は燐火や葵を利用しようとする奴等から二人を守って、普通の、自由な高校生活を送って欲しいだけなんだ。そのためなら何でもしてやるよ。まあそのために生まれてきたようなものだからな」


 零機は最後のほうを皮肉げに笑いながら言った。そのために生まれてきた、それが零機が生まれたときから人工的に、魔法をほとんど使えないのに使えるように改造されたことを示していた。零機と葵は同い年だ(十ヶ月差)。零機が五月、葵が二月。葵が生まれる前からのを見て零機は急遽二宮家に創られてきた。最終的に暴走した場合の呪われた血の女王ブラッド・オブ・クイーンを殺すための兵器として。


「それで構いません、いえ、十分ですよ。だからどうかよろしくお願いします。私はそう長くこの姿ではいられないので。では」


 ルシファーはそういって影の中に沈む。それきり沈黙が訪れた。その沈黙を破ったのは燐火だった。


「これから私たちはどうなるの?」


 誰もが思う疑問、その解決策は―、


「国の魔法士育成機関に入って管理下に置かれる、だろうな」


 全員まだ高校生だ。これが大人なら軍への入隊だろうが、日本国防軍は魔法庁に十八歳以下の軍入隊を禁じられている。もちろん、例外もあるわけだが。


「なら~、ここから一番国の上層部に近いのは、国立魔法学院付属東京魔法士育成学校、かな」


 麻衣が言ったとおり、零機たちはこの数日後、国立魔法学院付属第一魔法士育成学校への入学を余儀なくされる。

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