第3話 終焉の鐘が鳴り響く
「ご苦労じゃったな、〈歌姫〉」
「そう思うなら追加要員の一人でも送ってよ。〈参謀〉のおじいちゃん」
「まだまだわしは若いぞ。それに第一魔術特別部隊全員が寝てて来ないんじゃよ」
「…僕だって寝たいんだよ?」
「もう帰って結構じゃよ。また今度頼むぞい」
「それより、あと片付けよろしくね。あと、今度はおじいちゃんが来てよね」
「それは無理な相談じゃな。じゃ、おやすみ」
「あ、ちょっと…」
(まったく、迷惑な人だなぁ)
〈歌姫〉はそのまま眠りについた。
「ほら、さくら起きて。遅刻するよ」
「ふぁ…あ、瑠花ちゃんおあよぅ…」
「さくら、今日はよろしくね」
「え?あ、うん!」
私達は学校へ行き、朝のホームルームで
「えー、先日何者かによって殺人が起きた。よって気をつけるように」
まったく、近頃は物騒になったなぁ。
私はそんなことを考えていた。
「じゃあ、今日は昨日の続きからだな。みんな校庭集合な」
その時、あの不思議な雲がまたかかっていたのには誰も気が付かなかった。
「はい、じゃあ決勝戦。柏木対舘風」
「よろしくね、瑠花ちゃん」
「あぁ、よろしくなさくら」
「それでは、はじ―」
次の瞬間、先生のいた場所にはクレーターが出来上がっていた。
「な、なにが…」
「先生!無事ですか!」
クラスメイトの一人が叫んでいた。
「あ、あぁ何とか。柏木、ありがとな」
間一髪でさくらが魔術障壁を張ったようだ。
「いえ、先生が無事で良かった」
「とりあえずみんな避難だ!先生についてこい!」
私達は何とかあの場から逃げた。
「はぁ…はぁ…、とりあえず逃げ切ったようだな」
何とか敵はまいたようだ…が、何かが足りない。一体何が…
「よし!全員いるか確認するぞ!」
そこには、さくらの姿がなかった。
「無事でいてね、さくら!」
私は考える間もなく駆け出した。
「あれ?二人足りないが…知らないか?」
「あー、瑠花ちゃんならさくらちゃん探しに行っちゃいましたよ」
「え!?はぁ…ま、あいつなら大丈夫だろ」
「はぁ…はぁ…流石に…無理が…あったね…」
私が一息ついていると、
ミシッ
空間の歪む感覚が伝わってきた。
「あれは…?」
なんと、自分から約100mほど離れたところで壮絶な魔術戦が行われていた。
「まったく………時に……たね。
もちろん……は出来て……だよね?」
「よく聞こえねぇ。もう少し近づいてみるか」
そこではフードを被った少女と魔道士礼服を身に着けた二人組が戦っていた。
「あらあら、あなたはその程度なの?正直ガッカリだわ」
少女の手には氷の鎌が握られていた。
「大丈夫だよ。心配しなくてもちゃんと地獄には送ってあげるからさ」
「はぁ?何言ってんだ。今にも死にそうなのはそっちだろ?」
たしかに少女ほ纏っているローブはボロボロだった。
「なら、こっちから行かせてもらうわ【ブレイズノヴァ】」
普段私たちが使っている基本魔術とは比べ物にならない程の威力の火球が少女を襲う。
「【アイシクルシールド】」
少女はその火球を氷壁一枚で防いだ。
「この程度なの?」
「あらあら、そんな訳ないじゃない。アイラ!」
「はいはい、【クイックスタンス】」
瞬間、ブレる身体そして三閃の剣閃。
しかし、少女はそれを鎌で受け止める。
「この程度じゃ終わらねーよ。【ネクロマンス】!」
彼の足元に巨大な魔方陣が現れ、そこから大量のソンビ達が現れた。
刹那、煌めく蒼い閃光。
次の瞬間、魔方陣の上には沢山のゾンビ達の残骸が積み重なっていた。
「なーんだ、やっぱりこの程度じゃん」
「なっ!アイツ化け物かよ!?」
「…アイラ、ここは一旦引きましょう」
「あ、ああ。分かった」
「させないよ?【アイシクルレイン】!」
「【フレイムピラー】!」
氷の飛礫が炎の柱に遮られる。
炎が消えた時にはもう彼らの姿は無かった。
「ちぇっ、逃がしちゃったかー。残念」
そんなことを呟く彼女を、見ていた私の中に一番に出てきた感情は恐怖でも敬意でもなく、ただの虚無だった。
もちろん怖い、離れなきゃという感情もあったがそれが一番強かった。
例えるなら、大切な人が遠くへ行ってしまったような…そんな感じだった。
「そ、それよりさくらは…」
さくらを探しに行こうとした時だった。
「あれ?君そんなとこで何してるの?」
私の目の前に彼女が現れたのは…
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