いつか世界が消え去る前に

宵月アリス

第1話 狂い始めた歯車


ここは、ヴェルナス帝国の北側に位置するクジャナの街。

春の日差しが暖かい五月。

ピピピピッ!ピピピピッ!

毎度毎度、うるさい目覚まし時計。

今日もいつも通りの日常がはじまる。

そう思っていた。

私の名前は「舘風瑠花たちかぜるか国立桜木魔術学院こくりつさくらぎまじゅつがくいんに通う学院生だ。

起きてまずやるのは隣の部屋に寝ているルームメイト兼親友を起こすことだ。

まぁ、1回目のモーニングコールで起きないのはいつもの事だった。

しかし、もう高校生なのだから自分の力で起きようとか少しでいいから思ってほしい。

朝食を食べ、制服を着たところでそろそろ家を出る時間だ。

このままじゃ間に合わなくなりそうだ。

「おーい!さくら、時間よ時間!」

「ふぇ?あ、瑠花ちゃんおあよう…」

そんな寝ぼけ眼で挨拶をしてきた彼女がルームメイトであり私の親友でもある「柏木さくら」である。

「いつもの事だけど、もう時間無いよ」

そう言って私は彼女に携帯の時計を見せると慌て出した。

「瑠花ちゃん急がないとまずいよ!」と私の手を引っ張る。

「へぶっ!」

その瞬間、彼女は転んでしまった。

かなり痛そうだった。

「大丈夫?」

「いてて、あ、うん!大丈夫!」

「それなら良いけど。はい、これ朝ごはん」

私は彼女にサンドイッチを渡した。

「ありがとー」

彼女はサンドイッチを美味しそうに食べ始めた。

「瑠花ちゃんのサンドイッチは美味しいね」と私に言った。

「それより、そんなにのんびりしてる時間はあるの?」と私が言うと「あ!そうだった!早く行こう、瑠花ちゃん!」やっと出発である。

駅で定期を出し改札を抜ける。

いつもと同じホームに行き、電車に乗る。

10分程経っていつもどうり駅員が放送で「まもなく学院前、学院前でございます。桜木魔術学院の生徒はこの駅でお降りください」と言う。

もちろんこの駅で降りる。

さくらも無事降りれたようだ。

「やっぱり電車はぎゅうぎゅう詰めだねー」「でも学校まで歩くよりはましだ?」

「いやーそうなんだけどやっぱりなれないね」

「電車に乗るコツは慣れらしいから仕方ないよ。少しでも早く慣れよ?」

「わかったー、僕頑張るね」

そう、さくらはボクっ娘なのだ。

「でもさ、1年前から電車通学なのに何で慣れないの?普通慣れるよね?」

「私もよくわからないんだ」

「まぁ、いずれ慣れるよ」

「うん!そうだね!」

さくらはまぶしい程の笑顔を私に見せた。

駅から3分程歩くと私の通っている学校「国立桜木魔術学院」に着く。

昇降口で靴を脱いでると「オッホッホッホッ」という耳障りな笑い声が聞こえる。

あからさまな金持ちオーラを出している女が「松田美夏」である。

「あらー瑠花さん?相変わらず胸が小さいねですわね、いつになったら大きくなるのかしら?」

そんなことを言ってきたから私は笑顔でこう言ってあげた。

「はぁ…今すぐ黙るか、顔を潰されるか好きなほうを選んでいいよ?」

「あらあら、胸が小さいからそんな話し方なのかしら?」

「…いい加減にしようか?」

「瑠花ちゃん、一旦落ち着こ?」

さくらが私にそういったおかげで落ち着いた。

私は、いつも通り松田と言い合いながら教室についた。

「あなたは黙っててくださいまし。私より胸ないんですから」

「…ほんとに潰すよ?」

「えぇ、望むところですわ!」

「まぁまぁ、そろそろ先生来るよ?」

その直後、先生が入ってきた。

「ほら、二人とも席につこう?」

そのまま授業が始まった。

一時間目は魔術理論の授業だった。

さくらはよほど眠かったのか開始三分で寝てしまった。

(マイペースにも程があるよ…)

「おーい、柏木起きてるか?」

「…はーい先生…起きてましゅ…」

「はぁ…ほら、ここの問題解いてみろ」

「うーん…そこはかけてあった範囲魔術をやめ、範囲防御魔術をかけつつ仲間の回復役ヒーラー多重詠唱マルチキャストすればいいと思います」

「さ、さすが柏木、正解だ」

拍手が嵐のようになるなか当のさくらは

「お弁…当…美味しいな…」

すぐさま夢の中へ

そう、さくらはすごく頭がいい。

テストも毎回トップなんだが

この調子で…

そんな事を三時間分繰り返し、

お昼休みになった。

「瑠花ちゃーん、今日のお弁当なーに?」

「今日は今朝のサンドイッチだよ」

「ホント!瑠花ちゃんのサンドイッチ美味しいんだよねー」

「それはよかった」

「んー、やっぱり美味しい」

(やっぱり、こんなに喜んでくれるとこっちも作りがいがあるよねぇ…)

私がそんなことを考えていると

「ねぇ、瑠花ちゃんあの雲変じゃない?」

と、私に聞いてきた。

「ほんとだね、なにかあったのかな?」

「わかんない」

私達はこの時まだきずいていなかった。その雲は終焉と始まりを告げるサインだったということに。

そして、この平和な日常がどれだけ愛すべきものだったかを

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