再会、そして謝罪
レンカに赦しを貰えた私は、二つの痛々しい切断面が見えないように、手頃なハンカチで結わえてあげた。
そして、空虚な眼窩から溢れる赤い涙を拭った。
すると……光満ちたつぶらな瞳が、戻ってきた。
「ありがとうございます、マリおねえちゃま!」
輝くような笑顔で礼を言われて、私は少しだけの喜びを感じるのも申し訳なく思うほど、罪悪感に支配されていた。
どうして私は世界で一人だけの実の妹に、あんなヒドイ言葉を投げつけていたのだろう……自分が信じられない。
自分の言動を思い返して溜息を吐いた、その時だった。
ガダンッ!
あまりに大きな音に、私もレンカもびっくりしてキョロキョロと部屋中を見渡してしまった。
部屋の隅、宝箱風のおもちゃ箱がガタガタ揺れていた。
恐る恐る近づいて開けてみると、中から人形が飛び出してきた。
「きゃああ!?」
「どけ! あぶねえだろうが!」
乱暴な口調、その声は聞き覚えがあった。
「あ、アルファ……!」
「――――マリカ」
アルファと私は、目を合わせたまま互いに口を噤んでしまった。
……さっきレンカに教えて貰ったじゃない。
小学生でもわかる、当たり前のことを。
『わるいことをしたら……ごめんなさいをする』
「……ごめんなさいっ!」
「え?」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ヒドイ事を言ってごめんなさい!
途中で逃げてしまってごめんなさい! 傷つけてしまってごめんなさい!」
真摯に謝罪しようと思っていたが、言葉を吐きだす内に頭が真っ白になってしまい、謝罪の言葉が止まらなくなってしまった。
「わ、わかった。わかった。ちょっと落ち着け」
「………………」
「マリカ……オレは、まだ謝って欲しくない。
いや、今、謝ったのは……素直に嬉しかったけどさ。
オレも、その……思いやりが足りなかった。
案内を任されているのに、感情的になって悪かったな」
「こちらこそ、ごめんなさい」
しばらく、私とアルファは互いに謝り続けた。
「さてと、謝っていても進展しない。
やる気になったんなら、さっさと次の記憶を探しに行くぞ」
「……ええ」
振り返ると、レンカも無残なぬいぐるみも消えていた。
「レンカ? レンカ、どこ!?」
「此処には、いないよ。
「そうじゃなくて……ん……」
反論しようとして、私はアルファのいわんとしている事を理解した。
腕を失くした可哀想な彼女は、私の心が記憶を元に創り出した幻影。・
私が本当に謝罪すべき妹には、まだ謝っていないのだ……。
落ち込んでいる暇は無かった。
「ねえ、アルファ。次は……この部屋に行けばいいのよね?」
私は、ポケットから鍵を取り出した。
エリカお姉様から貰った、部屋の鍵。
「ああ。急いだ方が良い」
アルファが頷いたのを見て、私は鍵を握りしめて、部屋を出た。
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