助手が博士にカレーうどん食べさす話

島野とって

そ‘の’いち 助手が博士にカレーうどん食べさす話

「こんなのできたんですけど……」


 かばんちゃんがどんぶりを差し出します。

 博士と助手が器を覗き込みました。


「おうどんの上に……」

「かれーがかかってるです……?」


 そうです。

 かばんちゃんはカレーうどんを発明したのです。


「かばん、正気ですか? せっかくのかれーをこんな……こんな……じゅるり」

「思ったよりもおいしそうなのです……じゅるり」


 サーバルちゃんもうれしそうです。


「すごーい! かばんちゃんは既存の概念を複合させ新たな価値観を生み出し人類にプロメテウスの火をもたらさんとするフレンズなんだね!」


 博士と助手はよだれをこらえるのに必死です。


「かばん、これは我々が食べておくので」

「さっそく実食するので」



   ‘の’



 じゃぱり図書館には博士と助手だけ。

 かばんちゃんとサーバルちゃんは遊びに行ってしまいました。


 博士が箸を握っています。

 恐る恐るカレーに沈め、アツアツの麺を挟もうとしました。


 すると。


「博士、きけんなのです」

「なにがきけんです? 熱いものがきけんなのはねこじたのサーバルなのです。私はきちんとふーふーするので」


 熱さのことではないのです。


「博士、その服装はきけんなのです。かれーうどんはきっとはねるので」


 博士は自分の服をまじまじと見つめます。


 襟元のファー、足まで包むコート。

 どちらもほとんど真っ白です。


「おそらく博士が食べおわるころには、首のまわりがびったびたになっているのです。まっきっきなのです」

「……だとしたら、かれーうどんは食べられないのです。どうして食べられない食べ物をつくるですか?」


「食べられないことはないのです。服をぬげばいいのです」


 そうです。

 フレンズは脱衣可能なのです。


「かれーうどんは正座に全裸で食すもの。それが作法なのです」

「そんな決まりがあるですか……。さすが助手はかしこいのです」


 博士がいそいそと服を脱ぎます。

 すっぽんぽんのまま正座しました。

 そして、厳かな雰囲気と共に右手で箸を、左手でどんぶりを握ります。


「……いただくのです」


 その刹那、かばんちゃんとサーバルちゃんがもんどりうって飛び込んできました。


「サーバルちゃん、フレンズの関節はそんな方向に曲がらないよ!」

「じゃぱりぱー」


 二人は狩りごっこを楽しんでいるようですが、かばんちゃんは博士を見て血相を変えました。


「食べないでくださーい!」


ちゅるり。


「熱ッ!!」


 博士の素肌にアツアツのおつゆがはねました。


「全裸でそんなの食べたらやけどしますよ!!」


 当たり前です。


「熱いのです……! これは完全に盲点だったのです……!!」


 ごろごろ転がり熱さに耐えます。

 博士はひたすら悶えています。


 そんな博士を、絶滅種もかくやという闇を湛えた瞳で助手が見下ろしていました。



――博士の悶える姿こそが、私にとって一番の好物なのです……じゅるり。



   け だ も ‘の’ フ レ ン ズ

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