160㍍のスプラッシュヒット
かくしてオールスター戦が始まった。
試合前のホームラン競争ではトーマスJr.も参加した。
10本中、4本をスタンドに放り込んだが、優勝したのはボンバーズの八幡が7本をスタンドに叩き込んだ。
今日は年に1度行われる夢の球宴とあって球場は超満員に膨れ上がった。
トーマスJr.は東のチームのスタメンで5番を打つ。
各チームから選ばれた選手達がペナントレースとは違うプレイをして球場を湧かせる。
ホームランを狙ってブンブン振り回す野手もいれば、三振を獲りに強気でストレートで押してくる投手もいる。
トーマスJr.は各バッターを注意深く観察していた。
先ほどのヘラブナ釣りでヒントを得たのはタイミングのとり方だった。
日本の投手は変化球でかわすピッチングが多い。
それに対応するべく、上手くタイミングをとる方法を考えていた。
皆どうやってタイミングをとっているのか。
頭の先から爪先までじっくり見ていた。
試合は西のチームが先制した。
3番ガンズの廣永が左中間スタンドに入るツーランホームランを打つ。
負けじと東のチームも本拠地の主砲守山のタイムリーで同点に追い付く。
2対2のまま、8回の裏の東のチームの攻撃は大和のセンター前ヒットと浅野のフォアボールでツーアウトランナーは一塁、二塁の場面。
このチャンスにトーマスJr.が打席に入る。
西のチームはここでガンズの抑え花崎をマウンドに送る。
花崎は初球153㎞のストレートを投げた。
真ん中やや低めに決まりストライク。
そして二球目を投げ、内角低めに外れたツーシーム。
テンポよく三球目を投げた。
外角に決まるストレートでツーストライク。
速球でグイグイと押してくる。
四球目、これもストレート。
外角やや真ん中よりの低い球だ。
トーマスJr.はやや足を上げ、タイミングをとり、ハードヒットした。
痛烈な打球はグーンと伸び、ライトスタンドを越え場外に消えた。
トーマスJr.の勝ち越しスリーランホームランである。
場外ホームランに湧き上がるスタンド。
「スゲー、今の打球、利根川にまで行ったらしいぜ!」
「マジかよ?こっから利根川だと160㍍は越えてるぜ!」
「チョー飛んだぜ!守山でもあそこまでいかねーだろ!」
「トーマス神すぎる!」
「ワロwww」
「一直線でスタンド越えた打球なんて初めて見たぜ!何だあのパワーは!」
ファンの度肝を抜いた1打だった。
打球は利根川に落ちるスプラッシュヒット。
推定160㍍を越える大ホームランだった。
このホームランが決勝点となり、東のチームが勝利した。
MVPは勿論、場外ホームランを打ったトーマスJr.だ。
トーマスJr.の言うタイミングとは、日本のバッターはタイミングをとるため、足を上げて打つ選手が多い。
トーマスJr.も打席に立ち、ストレートのタイミングに合わせ足を上げ鋭いスイングをした結果、物凄い飛距離のホームランを打つ事が出来た。
元々パワーのあるトーマスJr.だが、頻繁に場外ホームラン等打てる訳がない。
力と技とタイミングがマッチし、あそこまで飛ばせる事が出来たのだ。
利根川バーチーヤンキースタジアムはこの場外ホームランを記念して、ライトスタンドに【160】という数字の入ったプレートを設置する予定らしい。
日本球界に新たな伝説を残したトーマスJr.であった。
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