天才の不安

この乱闘を冷ややかに見つめていた一人の若き天才が呟いた

「オーナーもバカなら獲ってくる選手もバカばかりだ……」


彼の名は 櫻井 大翔(さくらい ひろと)


入団5年目の22才、外野手


背番号 3 左投げ左打ち


神奈川県出身。高校時代は投手兼外野手で甲子園に3度出場し、ドラフト一位でエンペラーズに入団。

プロ入り後は外野手として開幕から1週間後に一軍に昇格。


その年のリードオフマン(トップバッター)となり打率 297 ホームラン23 打点94 盗塁24という好成績で新人王並びにベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得。


翌年はシーズン途中で打順が3番に変わり、打率354 ホームラン31打点117盗塁37

204本のヒットで最多安打、トリプルスリー(3割 30ホームラン30盗塁)を達成。

首位打者、打点王のタイトルを獲得。


3年目は驚異の打率392という夢の4割には届かなかったが、首位打者及び、227本という歴代最多安打と129打点を挙げ打点王を獲得。



昨シーズンは

打率327 ホームラン42 打点147盗塁18という素晴らしい成績で打点王に輝く。


入団4年目にしてメジャーへの移籍も視野に入れてるという、3拍子揃った天才スラッガーだ。


彼はいわゆる孤高の天才とは違い、チームプレイを第一とする模範的プレイヤーである。



しかし、オーナーの大型補強には反対派で、契約更改の際、補強より育成に力を入れて欲しいと直訴したが受け入れてもらえなかった。


天才故に先見の明があり、目先の補強よりも、生え抜きの選手の育成がエンペラーズの将来のためになると判断している。


「大丈夫か、このチーム」

櫻井に声を掛けたのは、入団8年目、抑えの切り札

土方 晃司(ひじかた こうじ)

背番号 11


昨シーズン37セーブを挙げたエンペラーズのクローザーで、その右腕からMAX157㎞のストレートとツーシーム、ハードスライダーと呼ばれる鋭く曲がるスライダーを武器とする絶対的な守護神だ。


「あの二人、かなり素行悪いみたいですね」

櫻井は、素行の悪い二人を補強するオーナーが原因だと思っている。

「やることさえやってくれりゃ問題はないんだがな」

土方はそう言いながら、先程あの二人がブレーンバスターでオーナーを叩きつけた後、誰にもわからないようにエルボードロップをオーナーに見舞った。

「だと言いんですがねぇ」

そんな櫻井も解らないように、ニードロップをオーナーに食らわした。


後日オーナーは肋骨が折れていたそうな。


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