第40話 ど、どうですか。合格ですか!?
冒険者ギルドに訪れると丁度エディスさんが受付カウンターに居た。
「ただ今戻りました」
「おや、戻ったかい。魔物は居たのかい?」
「はい、今日はファンガスだけでしたけどね」
僕は背負っていたナップザックから魔石やファンガスの目などを取りだしカウンターに並べた。
「12匹分です。あとリナにこのファンガスたちが生息していた周辺に索敵魔法を使ってもらいましたが、今日のところは他の魔物は居ないみたいです。場所は東の森の北東2km位です。明日は南東に向かうつもりです」
「ああ、お願いするよ。それにしても今日の討伐で全部駆逐出来ていたら助かるんだけどね」
「アルディンさんたちに無駄足を運んでもらうことになりますけどね」
ソーニャを助けた付近までファンガスやウォーグが出て来ていたし、森の更に奥にはまだ生息していると思うけど。まぁ居るのは構わないけど数時間で辿り付く場所まで生息範囲を広げられると困るので間引く意味合いもある。魔物の根絶はまず無理だしね。
「それじゃ、この素材は買い取るね。ファンガス1匹につき銀貨2枚で合計24枚だ」
僕が代表して報酬の全額を預かった。勿論あとで分配するつもりだ。
「偵察と討伐は今日のところはこれくらいで良いですか?」
「ああ、十分だね。明日も頼んだよ」
「はい、じゃあ失礼します」
僕らはギルドのテーブル席に先程貰った報酬を山分けをするために移動した。一番ファンガスを倒したソーニャに念のため3等分で良いか聞いてみた。
「え?3人でパーティを組んだんですから3等分じゃないんですか?」
「ソーニャがって訳じゃ無いんだけど、一番倒したからと言い出す冒険者も居るからね」
「ああ、なるほど。それでしたら問題ありません。今回はリナさんが索敵、マサトさんがサポート、私がメインアタッカーと分業していましたし」
あぁ、ソーニャはちゃんと分かってくれているんだな。自分が沢山倒したからと索敵や回復役などを蔑ろにする冒険者が結構いる。もうそんな奴はソロで活動したら良いのにと僕は思っている。
僕は受け取っていた報酬を3等分して2人に銀貨8枚ずつ渡した。
「あ、そういえば今日私がメインアタッカーをしたのは私の実力を知るためだったんですか?」
「ああ、うん。それもあるけど、一番はどれ位の魔力量があるかと魔力の回復速度を知りたかったからだね」
僕とリナは規格外の魔力量があるけど、ソーニャはどれくらいかまだ聞いていないので把握しておきたかった。
ステータスの情報は自分では見られるけど他人には見えない。そして自分のステータスの事は他人には基本的に漏らすことはタブーとされている。勿論、無理矢理聞き出すのも駄目だ。
ステータスの情報を公開することで、妬まれたり蔑ろにされたりと色々デメリットが起きるからだ。スキルも同様にむやみに公開するべきではないが、仕事に活かせるスキルであれば公開することを推奨されている。
特に冒険者では何が出来るか把握出来るのは大きい。だが例えば暗殺スキルを持っていたとして、それを公開したらどうなるかなど考えなくても分かることだ。
またレアスキルなど属性魔法で再現の出来ないスキルを持っている場合は、重宝されるかわりに、ヘタをすると望まないのに国に召し抱えることになったりするので、公開しない人も結構居るようだ。
「試験か何かですか? ど、どうですか。合格ですか!?」
「ああ、違う違う。これから夕食まで言ってた複合魔法とかを教えるための前情報のためだよ」
「さっそくですか!? ありがとうございます!」
冒険者ギルドを出て迷惑にならないよう村から少し離れた場所へ移動した。
「とりあえず複合魔法を分かりやすく覚えるためにソーニャには火と風属性魔法の複合魔法を覚えてもらうつもりだよ」
「よろしくお願いします!」
今回は威力を抑えるのとソーニャの火属性魔法レベルが1のため、火属性魔法の
複合魔法というと難しく感じる人が多いが、行使するのは一度覚えたら難しくはない。難しいのは組み合わせる行程や理論、それと結果をイメージするのが大変だからだ。
まずリナに頼んで標的代わりに土の壁を作ってもらった。そしてソーニャに一度火の弾丸を撃ってもらった。
「火よ、敵を穿て!火の
ソーニャから飛び出した火の弾丸は、壁の真ん中に命中して壁の表面を少しえぐった。
「ああ、そうか。これは先に詠唱破棄を覚えてもらう方が先かな」
「ご主人様、私もそう思います。詠唱している隙は見逃せません」
「そんなサラリと言われても、詠唱破棄なんて簡単にはできませんよー」
ソーニャはそんなことを言って嘆いているけれど、これも一度コツを掴むと難しくない。大半の魔法使いは、師に教われたまま詠唱を唱え、実演してもらった魔法をイメージして再現している。
詠唱破棄も複合魔法と同じで理論とイメージが大事で、火は何故燃えるのかなど科学などの知識を持っていれば詠唱破棄で魔法を発動することが出来る。しかし科学というものを理解していなくても、火に空気を送れば良く燃える、水に風を送れば波が起きるなどを知っていれば詠唱破棄や複合魔法に応用することが可能だ。
ソーニャに説明したが、イマイチ理解が出来ていないのか首を傾げていた。
「その【かがく】という事を理解するのが、魔法を上達するための近道だというのは分かりましたけど、そもそも【かがく】が分かりません」
「まぁ、そう慌てることは無いよ。リナ、説明は僕がするからソーニャと一緒に実践をお願いして良いかな?」
「畏まりました。お任せ下さい」
僕はその辺に落ちている枝を数本集めて、科学・・・というより理科の実験の準備をした。
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