第二章
第20話 殺りますか?
[魔王]
一度目を閉じてからまた目を開いて確認しても[魔王]という結果に変わらなかった。1600年色々な職業を体験したけど、魔王は確か最後の1回しかしていないというのに、何でピンポイントに初回で引いてしまうのだろう。
「うーん」
「魔王ですか」
リナさんも、え、初回でそれ引くの?と言いたげな顔で僕とスロットを見ていた。僕は初回は体験回数の多い剣士とかになると予想していたんだけど、もしくは村人系の職業。剣士や魔法使いだったら冒険者ギルドで魔物狩り、農民や商人だったら冒険者ギルドか商業ギルドで雑用などしていこうと考えていたんだけど、魔王はどうしたら良いんだろ。
『・・・お兄様、私は何を申し上げたら宜しいのでしょうか?』
『任せるよ・・・。出来れば初回特典でヒントを貰えると助かるかな』
ハナでさえ呆れた声だった。まぁ、でも僕らしいんじゃないかな?ポジティブに考えたら、普通味わえない人生を体験出来るってことだし。既に最初から普通じゃ無いけど、気にしない。お気になさらず、だ。
『
『それもそうだね。見てみるよ』
この世界では皆、自分が何が出来るかを確認することが出来る。いわゆるステータス確認だ。ステータスは本人にしか確認出来ず、自分で喋ったりしないかぎりには他人には普通はバレない。ステータスには名前、種族、レベル、職業、各能力値、あとはスキルだ。スキルには熟練度というものもあって、熟練度が上がると威力が増えたり効果が上がるだけで無く、新たなスキルや派生スキルなども覚えたり出来る。
この世界に来て禊ぎを終えて天界に戻ったときに、ゲームみたいだとリナさんに伝えたことがあったけれど、やはりゲームを参考にしたそうだ。便利そうだからと言う理由でこの世界で初導入したらしい。1600年前に突然ステータス表示が出来るようになって世界は混乱したそうだけど、ハナが神託で全員にプレゼントだと伝えたら、混乱も落ち着いてやがて皆受け入れてくれたそうだ。
さて、僕はハナに言われたとおり自分のステータスを見てみることにした。
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名前:マサト・カナエ
種族:人間
職業:神(仮)
HP:128/4034
MP:67/4042
筋力:4013
体力:4023
敏捷力:4030
生命力:4074
器用さ:4022
反応力:4048
知力:4007
魔力:4061
魅力:4046
幸運:4078
耐久力:4018
魔法抵抗力:4090
職業スキル:魔王(剣術Lv1・威圧Lv1・火属性魔法Lv1・風属性魔法Lv1・闇属性魔法Lv1・無属性魔法Lv1)
固有スキル:不老長寿・蘇生・トゥルーサイト(未覚醒)・天界通話
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HPとMP減りすぎ・・・あ、徐々に回復してる。そうか4000ptずつ追加されたから上限値が急に増えたから減ってるように見えたのか。そうしたら次に気になるのが。
「職業が神(仮)って何?魔王じゃ無いの?」
「それでしたら毎週スロットをしたときに毎回職業が変わってしまうからではないでしょうか」
あぁ、そういうことか。そういえばスロットで職業のスキルを得ると言ってたっけ。
『左様に存じます。普通なら精々2・3つの職業のスキルを保有するくらいかと存じますが、お兄様の場合となりますと様々な種族の職業の固有スキルも得ることになると存じます。当然ながらそのような既存の職業は存在しておりませんでした。つきましては将来神になるのですし、神(仮)と致しました』
ナチュラルにハナが会話に参加してくれた。でも、そういうことか。もう神になるのは諦めて受け入れることにしてるから、これで良いか。それに他人には自分で言わない限りは職業とかバレないし。
ただ僕専用なのかスキルの欄が職業スキルになっていて、そこに魔王として覚えたスキルが載っていた。剣術はまぁ良いとして、威圧って。
まぁ、確かに前回魔王だったときにこのスキルは覚えていたけど。レベル1で相手をビビらせるのか。ビビってくれるんだろうか。
属性魔法はそのまま各属性に沿った魔法が使える。そして闇属性魔法。自分の影を操って攻撃したり、気配の遮断を行え、精神攻撃なども行える、暗殺者などが好んで覚えるスキルだ。しかし、気配遮断などは冒険者や狩人なども使うため、比較的メジャーなスキルでもある。
スキルLv1では属性の矢を飛ばす【魔法の矢】を使えるが、Lv1では連続して撃てないため遠距離攻撃に特化していると言える。索敵スキルが無い以上、後手に回る可能性が高くこの森では使いづらい。
今後生活していくためには手持ちのスキルの熟練度を上げながら、冒険者ギルドで討伐クエストを受けた方がよさそうだ。討伐報酬や素材の売却でお金も得られるし。
1週間後のカジノスロットの結果次第ではまた方針が変わるかもしれないけれど、当面の方針はこれで良い。
『うん。方針もある程度決めたから、とりあえず行動してみるよ。ありがとう』
『いいえ、では困ったことが御座いましたらご連絡下さい』
そう言い残してハナとの念話を終えた。早速リナさんに先程考えた冒険者ギルドに登録して暫くは討伐クエストでお金を稼ぐということを伝えた。
「とりあえずはレベルを上げたいから、サポートをお願いします」
「畏まりました。私は討伐のサポートを行います。存分にお使い下さい」
これで方針の相談は良いかな。あとはとりあえず森から出て村か町に出て宿を探そう。そんなことを考えていたらリナさんから声がかかった。
「ご主人様、一つ宜しいでしょうか」
「うん、一つじゃなく何個でも良いですよ?」
「どうか私に敬語を使うのを止めて頂けますか」
リナさん曰く、主人とメイドなのだから主人が敬語を使うのは以ての外だと言われた。メイドに敬語を使う主人を周りの人が見たら、主人である僕が軽んじられ余計なトラブルの種にもなると忠告された。
「分かった。リナさん、じゃなかった、リナ。忠告ありがとう」
「恐れ入ります」
リナは片足を後ろに下げて腰を少し落とし跪くようにお辞儀をした。先日までバニーガールだったのに、もうメイドにしか見えなかった。
「じゃあ、森の中から出るためにも剣術レベルを上げながら街道でも探そうか」
「そうですね。ですがご主人様は剣を持っているのですか?」
「えっ?」
腰に手を伸ばす。当然用意もしてないのだから、無い。
「いつも召喚だと何かしら付与アイテム貰えたりしていたから、うっかりしてた。リナ、ハナから何かアイテムを貰っていたりしない?」
「そういえばメイドとしてご主人様に荷物を持たせるわけにはいかないと相談したら、アイテムボックスの機能を付与した指輪をハナ様から頂きました」
おお、流石ハナ。僕のうっかりを知らずにサポートしてくれていた。
「じゃあ、何か入って無いか確認してみて」
「畏まりました」
リナが指輪の機能を使って中に何があるか確認する。しかし、直ぐに首を傾げもう一度確認していたが、一度頷いた後こう呟いた。
「空っぽですね」
「リナが首を傾げた時に嫌な予感はしたんだよ。でもやっぱりそうか。ハナ的には討伐したときのアイテムを仕舞ったり、道具類を持ち歩けるように渡してくれたってことか」
「そのようですね。もしくは素で忘れていたか」
それも否定出来ないんだよなー。まぁ、何とかするしかないか。こんなことでハナにさっきの今で相談するのも恥ずかしいし。僕は少しのどの渇きを感じて、こんな森の中に居るせいか冒険者時代の癖で腰の水筒に手を伸ばすが、それも当然用意していないので存在しなかった。
「あ!水もない。というか食料もない!買う金も無い!」
「あ」
やばい、魔物に殺されるとかじゃなく、餓死で天界に戻るとか出来れば避けたい。リナなら天界に取りに戻るか聞いてみたら、戻れるがその時は僕が死んだときだと言われた。
「殺りますか?」
リナがさっきの抜き手の構えをしたけど、それもありかなーと少し思ってしまった。
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