のんびり

 抹茶のフレンチトースト。

 焼くのは十五分以上は時間を待ってもらう。

 できた。

 SNSもブームだから見栄え良い季節商品もあるが、夏だとない。

 二センチくらいの厚さで切ったバケットをフレンチトーストのたれに付け込み、焼く。時間がかかるのは焼く手間、飾る手間。

 焼きあがったフレンチトーストにホイップクリーム、バニラのアイスと抹茶のアイスを丸めてポンと置く。上から抹茶パウダーを振って完成。

 盆にその皿と、ナイフとフォーク、スプーンを載せて俺たち給仕が運ぶ。

 ウエイターやウエイトレスというのもなんか違う。意外と給仕という日本語があう気がする俺の職場。

 まあ「店員」というひとくくりでもありなのかもしれない。

 昼はフレンチトーストが多く出る。店のメニューの中で一番、甘味から離れているからかもしれない。

 例の客にフレンチトースト持っていく。彼女は気づいて、紙を畳み、受け取る準備をする。

 結構見てるんだなぁ。

「ご注文は以上で間違いないでしょうか?」

 こくんと彼女はうなずく。

 水は手を付けていないようだ。まあ、これからセットのお茶もあるしなぁ。

「ごゆっくり」

 彼女はこくんとうなずく。

 素直というか本当いい客だ。

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