日記外その21 はまべ

 ここはとあるエリアのとある浜辺。

 良く晴れた日の午後に二人の少女が仲良く浜辺を散歩していた。

 一人は頭から耳を生やしたネコ科のフレンズの少女。

 もう一人は少しくたびれたパークガイドの帽子を被った大きな鞄を背負った少女。


 一目でお互いの事を大切に思ってると分かるくらいに仲睦まじく楽しそうに会話をしている。


 その時、ふとネコ科のフレンズの少女が何かを見付けたらしく、声を上げた。


「ねぇ!かばんちゃん!あそこに何か落ちてるよ!」

「あ、待ってよサーバルちゃん!」


 サーバルと呼ばれたフレンズは駆け出して浜辺に落ちていた物を拾い上げた。


 透明な物の中に紙のような物が入っている。


「これなんだろう?」


 サーバルは瓶を逆さにしたりしているが、彼女に中の物は取れそうにない。

 どうやら、開け方が分からないようだ。


「瓶……かな?中に手紙が入ってるみたい」


 遅れて追い付いてきたかばんと呼ばれた少女が、サーバルから瓶を受け取る。

 彼女は瓶の上部に付いている詮を捻りながら上へと引っ張った。


 きゅぽん!


 軽い響きと共にコルクの詮が抜けて、中の手紙が取り出せるようになる。


『ボトルメールダネ』


 突然、かばんの腕に付いている腕時計のような物が喋り始める。


「ボスはこれが何か知ってるの?」


 ボスと呼ばれた腕時計はサーバルに返事をすることなくボトルメールの解説を始めた。


『メッセージ・イン・ボトルヤ漂流ビントモ呼バレテイルヨ。ボトルメールハ瓶ニ封ジラレテ川ヤ海ニ流シタ手紙ノ事ナンダ。ボトルメールノ中ニハ流サレテカラ凡ソ150年後ニ回収サレタ物モアルヨ』

「ひゃ、150年!?」

「みゃー、想像も付かないや」


 二人の少々はあまりの長い年月に驚きの声を上げた。

 まだ、多くの年月を過ごしたことのない少女達には150年と言う月日は想像も付かない未知の領域らしい。


『デモ、コレハ比較的最近ニ書カレタモノミタイダネ。キット、書イタ人モ生キテルヨ』

「そうなんだ。何が書いてあるんだろう?ねぇ、かばんちゃん!読んで読んで!」

「うん、分かったよ。サーバルちゃん。えーと……“まだ見ぬあなたへ、あなたが───」


 この手紙を読み終えた少女達が何を思ったかは定かではない。


「ジャパリパークにぼく以外のヒトがいるんだ……」


 かばんと呼ばれた少女は水平線の向こう側にうっすらと見える島を見る。

 その先に彼女と同じヒトがいる。


「……会えるといいね」

「うん、そうだね」


 かばんは手紙の入った瓶を強く握り締める。


 今は海を渡る手段はない。

 だが、もしも海を渡れるようになったら、きっと彼女は手紙の主を訪ねるだろう。


 ヒトに会いたい。


 きっとその願いは叶う。

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