第88話 到着と二つ名
お待たせしました
……………
「陸に上がればこっちのもんだぜ」
「兄さん、まだ傷が癒えてないんだから無理はダメですよ」
「…しんどかったぁ…俺、結婚しても船には乗らねぇ」
「相手 出来てから言えや」
テリオの叶わぬ妄想に
「そういやクラーケンをぶっ飛ばした奴、スゴかったな」
オレがそう言うとナバルの目がキラリと光った気がした。オイオイ、敵じゃねぇんだから戦いたいとか言うなよ?そんな心配をしてると「ゲッ!」とテリオの叫び声が聞こえた。アイツ海に落ちたのか?そう思い振り返ればさっき話したクラーケンの死骸が港に上がっていた。近づかなくてもわかるほどデカイ。
「あんなのを一撃で落としたんだって?どんな奴だったんだ?」
「結局 海の中から出てこなかったから姿は見てねぇ」
テリオに聞かれたナバルはギラついた視線をクラーケンに向けながら答えた。ああ、自分が相手にしてたらどう攻めるかシミュレーションしてたんだ。…ナバルよ、まずは船に馴れなきゃな。
「おうお前ら、俺は城に戻るんだが一緒に来いよ」
獣王のオッサンがそう言ってきた。オレらはその言葉に甘えることにした (まあ、実際にギルド設立のため国に呼ばれたようなもんだからね) 。
荷物を詰め込み馬車で一時間ほどで立派な城が見えてきた。
出迎えの兵士もメイドさんもみんな立派だったけど一番度肝抜かれたのは…。
「ンマそうだニャ~」
「スゲェ…」
今、オレたちの前にあるのは様々な海の幸、大量の海鮮料理だった。
…確かにスゲェけどオレの度肝を抜いたもの、それは…。
「…なんで『にぎり寿司』があるんだよ」
「お?クマ公、お前 意外と博識だな。コイツは『寿司』って料理だ。旨めぇぞぉ」
不思議そうな顔をするナバルたち。興味津々のホルンが一番乗りで食べ始めた。
「!!!」
「ど、どうしたの?ホルンちゃん?」
「ピリピリするニャ…なんか嫌ニャ…」
ああ、ワサビね。お子さまには辛かろう。
「こっちに『サビ抜き』頼むわ!」
オレが言うと獣王がビックリした顔をして「本当によく知ってるな」と呟いた。サビ抜きを食べると夢中になるホルン。
「ん~まいニャ~!トラン大好きニャ!」
「よかったねぇ」
抱きついて来たから頭を撫でながら引き剥がした。またパクパク食べるホルン。魚系が好きなんだねぇ。
ナバルを見ると臭いからして明らかな『日本酒』を飲んでご機嫌になっていた。
「そういやナバル、お前の事がいま噂になってるらしいぜ」
「ん?なんかあったか?」
酒を飲みつつ刺身をツマミながら首をかしげるナバル。テリオも何貫目かのマグロを食いながら耳をかたむけた。
「おう、出航前にお前が相手にした邪竜が先代魔王だってのは聞いてただろ?あの件が広まってよお、
ってのがお前の二つ名になってるらしいぞ」
「…そうか」
なにこれこの子ちょっと嬉しそうなんですけど。
「…なんかモテそうだな」
!!テリオの呟きに対し全身に電撃が走る感覚を覚えたオレは急にムカムカしてきた。
「テリオ君や」
「なんだ?」
「
ここはオレたちがもっと良い二つ名を考えてやろうではないか!」
「だな!!」
オレの提案にもの凄い笑顔で答えるテリオ。クックックッ…こういう時は頼もしく見えるぜ。
「…いや、いらねぇ」
嫌な予感がしたのか真顔で断るナバル。ナナイと他の給仕してくれる人たちは不思議そうな顔をするなかで獣王のオッサンだけは期待に満ちた目を向けてきた。
「「却下だ!」」
「…」
オレとテリオの全力の却下に顔をしかめるナバル。ナバルよ君は今、まな板の上のマグロ同然なのだよ。
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・脳筋
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「全部悪口じゃねぇかよ!」
「似合ってるぜ(笑)」
「いい仕事したぜ (スッキリ) 」
予感的中といった感じで突っ込むナバル。気分スッキリのオレとテリオ。
爆笑している獣王に『ああ、そっちか…』とあきれ顔のナナイ。
その中でナバルは目をギラつかせた。まるで
「コイツら…ならテリオのも考えねぇとな」
「あ?」
良いぜナバル君。オレも丁度ノッてきたところだ。
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「うぉい!失礼極まりねぇな!」
「ぷはっ!
「オレは
オレとナバルは気分高揚、獣王のオッサンは爆笑しながらテーブルをガンガン叩いてる。ナナイとノベルさん、給仕の人たちは下を向いてプルプル震えてた。
「…次はてめぇだクマ公」
…は?
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「アハハハ! ヤベェ!
「くくくっ…」
「ぐぬぬ…」
しくじった。コイツらに反撃の機会を与えるとは…。それと
…
そんな感じで会食が終わりデザートで出されたフルーツを食べているところでノックがされた。何だろう。
『ゼノンです』
扉の向こうにいるのはあのクラーケンを仕留めた本人がいるらしい。オレたちの中に自然と緊張が走る。「おお、入れ」そう獣王が言い扉が開かれる。
「紹介しよう。ウチの軍の責任者のゼノン・ルクソドールだ」
海上戦最強の男、そう呼ばれている人物は…
美女にしか見えない『人魚』だった。
…………………………………
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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