8限目 1.エンタメ論 ウルトラマンと牙狼鑑賞

 はいこんにちは五代です。先週いいましたがちょっと今週は準備してる時間もしゃべる元気ものこってなさそうなので、ちょっとビデオを流してお茶を濁させてくださいすいません。来週から改めて、ホラーの系譜について本格的に腰を入れて語っていきたいと思います。


 で、今週見てもらうもの。

 

 はじめに言ったかもしれませんがわたしは特撮ヲタかつ着ぐるみとアナログ特撮を心の底から愛しておりまして、今回はその中から、着ぐるみでしか表現できない話、ハリウッドの豪華なSFXとはまた違ったアプローチで、脚本と世界観を表現している作品を三本ほど見てもらいます。


 まず一本目。


 ニチアサの仮面ライダーと戦隊は小さいころ、あるいは今も、見ていたあるいは見ている、という人はいても、現行のウルトラマンを追いかけて見ている人というのは、訊いてみるとけっこう少ないようです(まあ一時円谷がごたついていて露出が減ったり、時間とかネット局が小規模だったりするという理由もあるが)

 特撮界にセンセーションを巻き起こした平成三部作、ティガ・ダイナ・ガイアはわりと有名ですが、その後も目立たないながらもウルトラシリーズは佳品を紡ぎ出し続け、コスモス・ネクサス・マックス・メビウス・ゼロ(※ゼロはいまのところ単独のテレビシリーズのない、映画とOVのみのキャラ)ときていました。

 特に円谷が資金難の時代をくぐり抜けた上いま、新世代のギンガ・ギンガS・エックス・オーブと新ウルトラマンが登場してきていますが、これら新世代ウルトラマンは、80年代の新しい特撮を見て育った監督や独特な脚本家によって、きわめて質の高い、安定した作品を見られるようになっています。


 今回はその中からまず、ウルトラマンギンガS『ガンQの涙』とウルトラマンX『激撮!xio密着24時』。

 どちらも田口清隆監督・中野貴雄脚本。このペアの作品はほぼハズレがないといってよく、特にこの二本は、予算のない日本の着ぐるみ特撮をある意味逆手にとって使いこなし、「その発想はなかった!」という快作に仕上げています。大量の金や機材をつぎ込まなくとも、作り手のセンスでいくらでも素晴らしい作品ができあがることの見本として。

 試行錯誤のあとの残るギンガ・ギンガSはまだちょっと辛い部分がありますが、X、および、この二人がメインスタッフを務めたウルトラマンオーブのシリーズは、ほぼ捨て回・ハズレ回の一話もないとてもよくできたシリーズですので、視聴できる機会があればぜひおすすめしたい。全22話(X)全26話(オーブ)と、コンパクトにまとまっているので見やすいですし。

 外連味たっぷりで思いもかけない映像を見せてくれる田口監督の映像愛と、元ピンク映画の出身である中野貴雄の脚本の、じんわりほどよく染みてくる、押しつけがましくないのにことりと胸に落ちるドラマ(ガンQの涙)や、「そうきたか!」と叫ぶ会心のギャグ(Xio24時)をお楽しみください。



 三本目は子供向けではなく、大人向け深夜特撮の雄、牙狼シリーズから、テレビシリーズ第二期『牙狼 ~MAKAISENKI~』、『手紙』。

 牙狼は今だと、パチスロの台のキャラとして知っている人のほうが多いかもしれませんが、れっきとした日本のオリジナル特撮ドラマです。

 この世の闇に潜む魔物〈ホラー〉を狩る魔戒騎士と呼ばれる戦士、その中でも最強とされる金色の鎧『牙狼』を受け継ぐ男たちの物語。何本ものシリーズがありますが、基本的に主人公は牙狼の騎士とされ、近年はアニメシリーズも誕生して(牙狼─炎の刻印─。小林靖子メイン脚本による傑作。ただし脚本家かわった二作目の紅蓮の月は別物なので見なくてよろしい)ますます世界を広げつつあります。

 雨宮慶太監督の独特の味わいが完全再現された独特の世界観と、深夜ならではのグロテスクとエロティシズム満載の画面に、王道ヒーロー物語が展開されます。ニチアサや子供の目に触れる時間帯ではできない大胆かつハード、ダーク&エロティックなビジュアルがたまらない。雨宮監督の和風ダークゴシックのスタイルがいかんなく発揮されたヒーローの鎧やアイテム、ホラーと呼ばれるモンスターの描写にはCGが効果的に使用されて、独特の世界を盛り上げます。


 今回上映する『手紙』はシリーズの本筋にはあまり関係のない、牙狼の仲間・零が中心になる番外編的なストーリーですが、ちょっとした心の隙間を闇に食い入られていく善良な老夫婦と、やるせない後味を残すシナリオの妙を味わってみてください。


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