第54話
【俺の妹になってください】
五十四話
〜 あらすじ 〜
泊りがけのデートのせいでかおかげでかは分からないが、まあ、結局は柏木の猛アタックのせいではあるのだが、また俺らはよりを戻すことになった。
*****
もういい時間なので寝ることになったのだが、柏木と同じ部屋ということと豆電球が灯っているために寝付けない。かなり疲れてるはずなんだけどなぁ。
「あ、あのさ?春樹………」
「……ん?なんだよ?」
「寒く……ない?」
「エアコンもついてるんだしそんなに寒くないけど?」
柏木と一緒に寝るなんていつぶりだろうか?
幼稚園以来かな?………じゃなくて。普通に考えて有り得んだろ。いい年頃の男女が一緒に寝るって………いや、高校生で童貞ってほうがおかしいのか?
どうなんだろ?友達という友達が居ない俺には全くわからねえ……
「ねえ春樹………」
「どうしたよ?」
「そっち行っていい?」
「………ちょ………」
そんなことを訊いておいて返事も聞かぬまま俺の布団へインしてきた柏木はやはり痴女なのだろうか?
「振り向かないでね?」
そんな勇気は俺にはないが足が足にちょっと当たったりするだけで心臓が弾けそうになる。
うっかり死んじゃうかもしれないけどそうなったら新聞記事で添い寝したら死んだ童貞高校生乙。とか言って書かれそうだなぁ。
「温かいね………」
「………そだな」
温かいですまねえよこれ……いろいろと熱いんだが……
頬も体も心も………息子も。
いや、間違いが起きても大丈夫なのか?いやいやダメだダメっ!!
静まれ俺の暴れ馬め。
なんで反応しちゃったんだよ。確かに可愛いけど違うだろ?なんていうかそのロリコンみたいじゃねえかっ!!
………俺は誰にロリコンじゃないと思われたいのだろうか?柏木がロリなことには変わりないしその彼氏ってことはもうロリコンなんじゃないだろうか?ロリコンでもいいかな?もう何考えてるんだろ。わかんねえや。
ゴンっ!!
その刹那背中にすごい衝撃が飛んできた。
「痛ったいんだが?」
振り返った瞬間、今度は顔面に強烈な蹴りが入った。
「……なんで蹴るんだよ?」
「………すぅ……」
あんなに鋭い蹴りを放っていたくせに、返ってきたのはなんと寝息だった。
なんだよこいつ………
電気消してもいいかな?俺が眠れんし……
そう思い布団から一旦出ようとすると、腕をぐいっと掴まれた。
抱き枕じゃねえんだぞ……全く……
というか腕力強すぎるだろ………また右腕だし………なに?右腕に両親殺されたの?
でも、寝顔はやっぱり可愛いな。
頭を少し撫でてみると顔が少しだけ緩む。
腕の力は緩まんのかいっ!!
俺は寝れんなこれは……
まあ、いいか。今日は楽しかったしな。
*****
外が明るくなってきた。今日も多分晴れるかな?
そして、チャンチュンと小鳥たちがさえずる。
「………ん?はるきぃ?」
「……おはよ」
これが朝チュン………というか結局寝れんかったし軽く深夜モードですね。じゃなければ朝チュンなんて幸せ単語をこんなタイミングで使うわけがない。
「……おはよう」
と、緩みきった顔でそう言う。
可愛いので許しちゃう。
とりあえず、朝起きて歯磨きを済ます。
「で?今日の予定は?」
「そうねー。どうしましょうか?」
「予定なしなのかよっ!じゃなぜ泊まった?」
「………それは……む。」
なぜか睨まれた。
俺が悪いのか?
「とりあえず、どっか行きましょっ!!」
「どっかってどこだよ」
「どっかはどっかだよっ!早く行くよっ!」
そして、チェックアウトを済ますとさっさと連れ出されてしまった。
なにも予定なんてないのにどうするんだよ……
てか、寒いし……今年の冬はやべえな。
「家帰っちゃダメかな?服もなんか昨日のままだし……」
何も聞かされてなかったのでこればっかりは仕方ないが、柏木はもう一着昨日とはまた違う黄色ベースで可愛らしい服に着替えていた。
意外と黄色も似合うな。
「………そのまま家から出てこないとかそういうことしない?」
「しないしない。だから一旦帰ろうぜ?」
どうにか柏木を説得し帰路につく。
よし、これで家に帰れる。
そして、休みの日というものは寝るために使わないといけない。休みってのは休むためにあるのだ。
家に着いたら速攻でベットじゃ。
そう意気込むと最寄り駅についた。
「じゃ、またな。勝負着でも着てるから」
「うんっ!またねっ!」
あんな笑顔でまたねなんて言われたら気が引けるじゃないか……
だが、ここで逃げないでいつ逃げるんだ。
*****
「ただいまー」
家に帰ってきて、そう言ってみるが返答がない。
まあ、姉さんもどっかに出かけているのだろう。
でもこれは好都合だな。あのやかましいのがいないのだ。眠りも捗るだろう。
早速パジャマという勝負着に着替えてベットへジャーンプっ!!
もにゅっ。
………ん?なんか、擬音にするとそんな感じの感触が布団にあった。
布団を勢いよく捲ってみると、全裸の姉がいた。
「………なにしてるの?」
さっきので飛び込みで起きたのかどうかは知らないが腹を痛そうに抑えている。
膝がその辺に刺さったのでまあ、それは仕方ない。というか天罰という奴だろう。
「か、帰ったのね……春樹……」
「まあね……で?なにをして………」
「違うわっ!!実の弟の匂いを嗅ぎながら……はぁはぁ……自慰に耽っていたら………すぅーはぁ。寝落ちしていた。だなんてことはないんだからねっ!!ほ、ほんとーなんだからねっ!!」
文字通り、赤裸々に全部語っちゃったね!
「うん。全部わかったよ姉さん。いや、風見美香さん」
ドアに手をかける。
「お、お願いっ!!お姉ちゃんを見捨てないでっ!!」
「残念ですがそれは無理です」
バタンっ!と、音が鳴るようにドアをわざと閉めてからちょっと反応を見てみる。
少しは反省するか?これで………流石に姉があれだとめんどくさいので躾くらいはしっかりしておかないといけない。
自分の部屋のドアにみみをつけ聞き耳を立ててみると、姉さんはまるで子供のように泣きじゃくっていた。
時間が経てばどうにか反省するかな?
一本アニメを見て約三十分が経ち、自分の部屋の前でもう一度聞き耳を立ててみる。
結果は同じだった。
「………はぁ。」
反省させないといけないのはわかっている。わかってるのだが………
「姉さん………もう、いいよ。もうしないよね?」
「は、春樹?………うん。もうやらないよ?」
「なら、いいよ。早く服着てきなさい」
「うんっ!!」
なんというか、スーパーのお菓子コーナーで駄々こねる子供に折れる親の気持ちがわかった気がした。
*****
「………春樹?何か言うことは?」
姉さんの躾が終わり、とりあえず小腹が空いたので下の階へと降りると見覚えのある女の子が鬼のような表層でいた。
「………や、やぁ?」
「やあ。じゃないわっ!!!デートはどうしたんだよぼけぇ!!!」
「あー。えっと………」
言い訳を考えている間に俺の顔付近まで小さい拳が飛んできていた。
あ、これは直撃だな。
事故とかの直前スローモーションになるって話を聞いたことがあるけど、本当なんだ。
綺麗に顔面にストレートが入り、ノックダウン。ワンパンでKOである。
「痛てて…」
目覚めると柏木がまたまた拳を握っていた。
「それだけは勘弁してくださいっ!!」
起き上がった瞬間に俺はぴしっと土下座を決めていた。
「ち、違くて………あー!!もういいっ!!バカ春樹っー!」
柏木はそう言いながら走って行ってしまった。
何が馬鹿なのかもわからないが、まあ、多分俺が悪いのだ。
とりあえず、謝らねえとな……
周りを見てみると氷水で満たされたバケツにタオルなんかが入ってるものが俺のベット付近にはあった。
こんなに寒いのに俺のためにあいつは………
「か、柏木っ!!」
気づくと柏木の家の前まで何も考えずにすっ飛んで来ていた。
「……え?春樹?」
インターホン越しに声が聞こえる。柏木の声だ。
「あ、あぁ……さっきは……その……ごめん」
「なんでパジャマなの?もう夜だよ?寒くなかった?」
「あー。そういえば……へっくしゅんっ!!」
「ほらぁ。とりあえず……上がってよ。少し待ってて」
それからすぐに家のドアが開き、リビングへ通された。
「はい。これ」
「なんか……ごめん」
温かいココアを受け取ると同時に謝った。すると柏木は首を横に振ると俺に寄り沿うように腰を下ろす。
「謝りに来てくれてありがとう……私こそごめんなさい……ちょっと私が大人げなかったわ。」
どこからどう見れば大人という部類に入るのか是非とも教えていただきたい。
ボゴンっ!!
と、鳴ってはいけないような音がなる。
「腹は………腹パンだけはやめて欲しかった………」
「子どもっぽくてごめんなさいねっ!!」
怒りに満ちた瞳がなぜか懐かしく感じた。こんなやりとりばっかりで俺は痛い思いばかりしているというのにも関わらず、俺はなぜかふっと笑みが漏れた。
「なんで笑ったんだ?もしかして足りなかったか?」
「じ、十分でございますっ!!」
「ならなんでだぁ?あぁん?」
どこぞのヤンキー。それも次のコマではもう恐怖顔になってるようなちょろい雑魚キャラのようなセリフで俺を脅してくる。
「いや、だって懐かしいなぁってさ?」
そして、柏木は予想外すぎたのか目を丸くした。
「………え?」
やはり柏木はちょろいな。
****
翌朝、普通に登校日である。
特に何も無い普通の学校。だが、横には柏木がいる。もう俺は迷わない。こいつが俺から離れるまでは離れない。
「なに?春樹。にやけて………正直キモいよ?」
「俺の決断を返せ。」
「あ、おっはよー!!柏木さんと風見くんっ!!」
登校中、後ろから溌剌とした声が飛んできた。
「おはよう三ヶ森さん!」
「よっす」
そう返すとニッコリと笑った。
「私今日日直だから先に行くねー!!」
そう言うとさっさと走っていってしまった。
そう言えば、三ヶ森さんなんか俺に言ってたような気がする。
なんだったっけか………家に来て俺に喝を入れてくれた時になんか………すっげえ大切というかそんな感じのことだったんだけどな。
まあ、いいか。今はそれでも。
****
学校につくとまあ、特に何もなく授業が進んでいく。
いつも通りさっぱりだ。
先生の話を右から左に受け流しながら聞いていると、黒板の横辺りに部活動禁止的なワードを見てしまい、テストなんていう不吉なワードが頭をよぎる。
なんでこんなに幸せ絶好調ってタイミングでそんなに恐ろしいものがやってくるんだ。
だが、柏木のおかげでなんとかどうにか赤点は免れているし、まあ大丈夫だろう。うん。大丈夫大丈夫……気にするな。
「テスト一週間前だからな?前のテストの結果が悪かったやつは頑張るように」
メガネの中年の教師がチャイムが鳴ったあとにそう続けた。
現実を突きつけてどうなると言うんだ……
「春樹?今日から勉強するわよっ!」
「あ、それなら私も参加したいっ!」
俺が答える前に三ヶ森さんが横から現れた。
「三ヶ森さんなら大歓迎だよ。」
ちょいと怖い目線を感じるので横にいるチビの方は見ないで三ヶ森さんに出来るだけの笑顔を向ける。
「僕らもいいかな?」
イケメンオーラを漂わせて奴は現れた。
「お前は別に成績悪くねえだろ?」
「頭のいいやつは何人いてもいいだろう?それに………」
というと、橘に視線を流す。
そう言えばあいつも悪いんだっけか?
しばかれてえのかよ。
「……そうだな。じゃ、今日の放課後は駅前のサイゼで」
そして、放課後。
意味のわからない確率の問題だ。確率を求めて何になる。
「なぁ、勉強ってなんのためにあると思う?」
「そんなことを考える暇があるなら勉強しなさいよ?」
「は、はい……ごめんなさい……」
やる意味があるのかもわからないような問題を解く。だが、やる意味が見いだせた。柏木に殺されないためには勉強をするしかないのだ。
「ねね。風見くん」
柏木がドリンクバーを取りに行って監視の外れた時、やっと俺の自由なひと時が訪れる。
そんな時に三ヶ森さんが小声で話しかけてきた。
「ん?なんだ?」
「お二人はその………元の関係に戻ったんですよね?」
「………本当ありがとう。あそこで三ヶ森さんに喝を入れてもらってなかったらまた元には戻れなかったと思う。」
「いえいえ!そんなのはいいんです!………私も本当に嬉しく思いますから………」
そう言って微笑むがその顔は妙に暗かった。
「う、うん………本当にありがとね」
口頭ではそう言っていたが、三ヶ森さんは本当に俺らが元に戻ったことを祝福していてくれているのだろうか。いや、俺なんかより俺のことを考えていてくれたんだ。喜んでくれているはずだ。
「なにしてるの?勉強は?」
柏木が絞め殺すような視線で俺を睨む。
「は、はい!今からまた手をつける所存でございます!」
「まあ、いいわ。そういえば山口くん達は?」
「なんか、遅れるって言ってたぞ?」
「はぁ。リア充たちは本当にいいですよねぇ……」
と、三ヶ森さんが漏らしながらこっちを見る。
何その目。やめてください。
「………三ヶ森さんは可愛いから大丈夫でしょ」
「確かにねー。なんて言うか猫っぽい可愛さもあるしね!」
「もう!からかわないでくださいよ!」
かわいいなぁ。やっぱり三ヶ森さんは。
そんなことをしていると、不良グループのような奴らが入店してきた。
………あれ?どっかで見たような気がするけど。
あ、そうだ!思い出した!駅で柏木を襲ってた奴らだ。
まあ、席はあっちのほうになるだろう。
と、思っていたがあいにくだか不運だかで奴ら不良グループは俺らの座っているテーブル席のすぐ横だった。
また都合の悪い………
まあ、絡んでは来ないだろうけど………
「………裕翔?」
「………え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます