第27話
【俺の妹になってください】
二十七話
~ あらすじ ~
花火大会でうまい具合に山口、三ヶ森から離れて柏木とともに行動をする。射的、食べ歩き。そして、花火も柏木の下着も見れずに、花火は静かに打ち終わった。
******
はぁ。終わっちまった。花火が盛大に上がった後に来るあの静寂って辛いものがあるよね。
「祭りのあとってなんだかすごく眠くならない?」
「あー。確かにそうだな」
一日中歩き回ってるんだし、そりゃー終わりってわかってスイッチ切れたら、眠くなるか……
「あ、あのっ!!」
眠気と戦いつつ俺らはあの会場に戻っていると、聞き覚えのある声が遠くから聞こえた。
「今の声って美柑ちゃんだよね?」
「そ、そうだね………」
最低なタイミングだ………今、丁度祭りが終わったんだ。なら、三ヶ森さんが勇気を出して告白してもおかしくない。よな?邪魔しちゃ悪いがどう誤魔化す?柏木なら普通にズカズカとあの中に入っていくぞ!?
「柏木。ちょっと静かにしてろ」
「え?近くにいるのに?」
「あぁ。少し黙ってなさい」
「わ、わかったわ…………」
なんでかは分かっていないだろうが、渋々承諾してくれた。
よし、とりあえず隠れて見ようじゃないか。
俺は静かに柏木の手を掴んで声のした方へ歩いていく。
まあ、多分あそこだ。というアテはある。
そして、そのアテの場所へ。二人はやっぱりそこにいた。人気もなく、綺麗に花火の見えて祭り会場から少し離れた小さな川が流れている河原のようなここも密かな隠れスポットだ。いつもならこちらの方のスポットに行くのだが、今日は三ヶ森のためにここを紹介してしまったので、仕方なくあちらのスポットに行った。
「や、山口君っ!!」
「どうしたの?」
「え、えっと……その、あ、あのねっ!………その…………」
と、暫くモジモジしては言葉を濁らしていた。
というか、あれで気づかないのか?山口鈍感過ぎだな。
「あー!もうっ!めんどくさいわねっ!」
三ヶ森さんの決心より柏木の限界が先に来た。だが、ここであの猛獣を行かせる訳にはいかねえ。俺が止めねえと………
「おいちょっとっ!!」
「よっ!お二人さんっ!」
「あ…………」
獰猛な奴を俺は止めれなかった。……力あり過ぎなんだよな。思いっきり浴衣掴んだのにあっさりと振りほどかれた。
そして、やつは知らない。
「あわあわあわ………」
三ヶ森さんは文字通りアワアワ言って顔を真っ赤にして、山口くんも手で顔を覆って直視しないようにしていた。
「………あの、柏木さん」
「なに?」
みんなの反応に首をかしげてこっちに振り向いた。
「服直せ………」
さっきの俺が掴んでしまったからか、浴衣がずれ落ち、肩から胸元にかけて開いていた。
「こ、こっち見んなっ!バカっ!」
「どうせ無いようなもん…………」
ドスッ!
と、野球ボールでも投げつけられたような鈍い音が腹から出た。
「…………ゲホッゲホ…………と、とばっちりだ。というか、一瞬息できなかったじゃねえかっ!」
「あんたが悪いんでしょ!?」
浴衣を直しながら冷たい目線を送ってくる。
「擬音がおかしいんだよっ!ペチとか可愛いもんじゃねえのかよ普通よっ!」
「ラッキースケベの代償でしょ?死んでもおかしくないわよ?」
「ラッキースケベ一つで死んでたら、とら〇るの主人公死にまくってんじゃねえかっ!!」
「よそはよそうちは家っ!!」
「んな理不尽な………」
そんなこんなで、馬鹿な柏木のおかげでなにもかも有耶無耶になって、夜も遅かったのでそのまま解散となり夏祭りが終わった。
*******
「静かよね。ほんと………」
「まあ、そうだな」
祭りからの帰り道、俺と柏木は足並みを揃えて一緒に歩いていた。
「今日も私の家に来るの?私は風見が居てくれると嬉しいというかなんというか…………じゃなくてっ!!」
「なんだ?急に怒鳴って……」
何かを言っていたようだが全然聞こえなかった。柏木らしくない。ごみょごみょ喋るなんて………いつからお前はコミュ障になったんだ?
「そろそろ風見のお姉さん怒ってるんじゃない?」
「げ………」
すっかり忘れていたが、俺はまだ柏木の家に泊まっている。
柏木の母は家に帰ってくるのは希だし、お父さんなんて見たことがない。だから、泊まっててもそんなに問題は無いのだが多分これ以上期間が開くとかなりまずいかもしれない………
「そうだな……そろそろ帰ろうかな?」
「そう………」
なぜか柏木は寂しそうだった。
「………でもまあ、今日は遅くなっちゃったし?………あと一晩泊まらせてくれないか?」
「それもそうねっ!」
そうして、今日は柏木の家に泊まることになった。
二人で家に帰ると、なぜか家の電気がついていた。
「………柏木のお母さんかな?」
「多分ねー」
そうして、家に入ると靴があった。
電気をつけたやつなのは間違いない。でも、これはどう考えても柏木のお母さんのものでは無い。サイズが違いすぎる。
「遅いっ!二人共っ!!」
知った声が奥から聞こえた。そして、ドスドスとその声の主が走ってくる。
「姉さん………なんでここにいるの?」
それは浴衣姿の姉だった。オレンジ色の可愛らしい浴衣だった。
「当たり前でしょ?春樹のいるところお姉ちゃんありよ?」
如何にもって感じでいう姉。理由になってねえんだがな……
「………ちなみに姉さんいつから居たんだ?」
「え?春樹が自分の部屋から飛び降りてからずっと?って、あっ!そうだっ!柏木ぃぃぃっ!!!!」
「………おいおいおい!!それはおかしいだろっ!!」
俺のツッコミなんて聞こえてないように無視して、奇声を上げながら柏木に食らいつく。
「なんですか?」
おー。冷静だ。
そして、二人は火花を散らしながら睨み合う。柏木はものすごく冷静というか冷酷というか冷たい目線を送っている。それに対して姉は目線だけで人を殺せそうな程に殺気立っている。ここに居るだけで怖いしすごい迫力だ。
「お前そう言えばちゃっかり、わ・た・し・の!春樹に夜這いかけやがったな?……私だってまだしたことなのにぃ…………」
「全くの誤解だ!!」
「私の?だって?…………お姉さん?お言葉ですが春樹は春樹ですよ?誰のものでも無いですよ?」
スルーかよ………でもまあ、ごもっともな意見だな。
「いいい、言ってみただけだしっ!!と、とりあえず春樹っ!」
「は、はいっ!!」
俺を無視したくせにいきなり呼ぶなよ。声裏返っちゃっただろ?
「帰るわよ?いえ、帰るわっ!!」
俺の手を強引に掴んで、そのまま外へ出ようとするが、俺の足は動かなかった。
「姉さん。今日だけ。今日までていいから泊まらせてくれないか?明日の朝には帰るから……」
「なんで?」
至極当然だ。姉の疑問もわかる。自分の家に帰れってんだろ?それが普通だ。でも、例外もあるんだよ。幼馴染みがこんな寂しそうな顔したら、それをさせないようにするのが幼馴染みってもんだろ?
「いいから姉さんだけ帰ってくれ……頼む。」
「じゃ、私も泊まるっ!!」
「えー………」
「なんで?」
「なんでもっ!!」
こうなった姉はとりあえずどうしようもない。スーパーマーケットのお菓子コーナーから動かない子供のように、駄々っ子になってしまうのだ。
そんなこともあり、姉も柏木の家に泊まることになった。………全く訳がわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます