楽園18 楽園の魅せる力
どんちゃん騒ぎが終わり、六人は床に付いた。
はるみと拓斗、博樹と麗子、カトレアと翔は抱き合いながら休息した。別にいかがわしい気持ちではなく、南国とはいえ夜は一気に寒くなるからだ。「う〜ん、拓斗」とはるみがぽそりと寝言を呟く。暗い海の底で一緒だったことから何が生まれていた。はるみが拓斗にこっそりとチュウを贈る。
寝ている拓斗は気付いていないが、心の中では思考していた。
海辺の海岸は真っ赤な夕陽に燃えて、さざなみがさらに美しく感じられるまさに、楽園と言える光景だ。はるみが青いビキニとパレオをまとい、花飾りを被りパイナップルやバナナ、マンゴーなどの果実を抱きかかえていた。拓斗は椰子の実のジュースを彼女に差し出す。
鳥や動物たちの鳴き声が木霊する。それは歓迎の音楽のようだ。アダムとイブのように戯れる。
同時に彼女も同じ夢を見ていた。
〜拓斗、はるみ〜
いつしか、歳の差も経歴や学歴も、才能も関係ない。二人はそこで激しく愛しあう。光と音、水の全てが輝く楽園で…
翔は壮大な大山脈の天辺にいた。
そこは、果てなく続く場所、地上と天空を別ける境界線。翔は風に吹かれ、どこまでも青い空を飛んだ。映画やゲームの主人公のように広大な世界に名前の如く羽ばたく、翔は何もないこんな場所に住みたいと思ったが、隣に現れた彼女は「二人じゃだめかな?」
カトレアの言葉に、間髪入れずに答えた。
「こちらこそ、貴女とこの世界にいたい。よろしくお願いします」
カトレアの笑顔は女神のように見えた。
それだけ嬉しかったのだ。
二人を乗せたグライダーは、そのまま風に乗り、蒼穹の彼方へ翔んだ。
「カトレア」
「翔」
やがて、何もない一面蒼の世界にたどり着く、だが、眼科に広がる雲の海を見てカトレアは、翔に話した。
(キャンバスに二人の未来世界を描こう)
二人の声は、ずっと彼方まで響いた。
海沿いの小さな町、闇夜は数多の星々と丸い月に照らされた広場
海の向こうから、潮風と一緒にさざなみが博樹と麗子を優しく包み込む。
真紅のドレスにチェンジする麗子、白い輝くタキシードで博樹がエスコートする。二人のダンスは月明かりに照らされて、神秘的なシーンになる。
一本の街灯の前で互いに向かいあいながら、麗子はこう言った。
「ここは誰もいないのね」
「いいえ、麗子、貴女がいる」
二人は熱い抱擁と口づけを交わした。
それは、この町には、いいえ、この世界だけは二人のものと高らかに宣言したのだ。
六人は、それぞれの楽園の魅力に魅せられて、夢の中でも現実でも満面の笑顔だった。
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