第13話 新婚旅行で世界一周。

私たち夫婦はまだ新婚旅行に行っていないのだが、職場でなんとか休みを取ることができたので、一週間ほど旅行に行くことにした。

妻に新婚旅行の行き先の希望を聞いてみた。

「どこに行きたいですか」

「サモア島に行きたい」

「どこそこ?こないだは、ハワイに行きたいって言っていたじゃない。友達がみんな新婚旅行でハワイに行ったから自分もそうしたいって」

「ハワイはまた別の機会に行けるから、今回はサモアがいいの」

「ほーん。それで、他には?」

「あとは、サントリーニも行きたいの」

「サントリーに行きたいの?お酒飲まないでしょ?」

「サントリーニ島って島があるの」

「…サモア島とは離れてるから、行くならどちらかじゃない?」

「じゃあサモア島でいいや」

「…で、他にどこの行きたいの?」

「フランスに行ってみたいの。やっぱり新婚旅行って言ったらパリじゃない」

「(これはまだ他に出てきそうだな)わかった。じゃあお金も時間も無制限に使えるとして、どこでも好きなところを選べるってなったら、本当はどこに行きたい?」

「…インド」

「じゃあ、インドに行こうよ」

「…」

「インドに行きたいんでしょ?ハワイよりもサモアやサントリーニやロンパリよりも、インドに行きたいんでしょ?」

「うーん。でもインドはなにか事故とかあったら大変だから」

「それを言ったら、海外はどこもそうだぜ。台湾とかどう。去年行きたいねって話してたじゃん」

「台湾で新婚旅行はないでしょ」

「(なんだっていいじゃねーか)じゃあ、今度の週末までにまた考えをまとめておいてよ。君の行きたいところに行こう。俺はどこでもいいから」


そして週末。

「どう?行きたいところは決まった?」

「福岡と長崎に行きたい」

「そう。じゃあそこに行こう」


とこのあともくだらない不毛なやりとりが続くのだが、概ね福岡と長崎を観光することで手を打つことにした。行き先の希望だけなら、他にバリ島や南極、マチュピチュ、アメリカ大陸をレンタカーで横断、オーストラリアなどあちこち飛び出し、それだけで世界一周した気分がする。一泊ぐらいはハネムーンらしい宿に泊まりたいと思い、長崎のハウステンボス近くにあるホテルオークラのスイートルームを一泊だけ予約した。あとの日程はアパホテルとか東横インレベルの素泊まり3,000円程度の部屋になるだろう。とにかくだいたいの旅程が決まって安心した。

友人にハネムーンは国内で済ますと言ったら、だいたいみんなヨーロッパへ行くから、そういうシンプルなハネムーンは大賛成だと言ってくれた。これでいいのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る