第2章「イワン攻略編」
第三十話「強化」
「トパーズ! 右のゴブリンを頼む! 《火球》! よし、落ちたな。ラピス行ってくれ!」
東の森、第一エリア。
俺はそこで、レベル上げに勤しんでいた。
森の木々は鬱蒼と茂り、所々に空いている葉っぱの隙間から明るい光が地表へと降り注ぐ。
その景色はまるで雲間に見える、太陽の光のよう。
だがしかし。
その光の中から現れるのは天使等ではない。醜悪な顔をしたゴブリンや、毒を撒き散らす巨大な蝶だ。
今も、ゴブリン二体、ポイズンバタフライ一体の団体さんと戦闘の
情緒も何もあったもんじゃないな。
「《土球》! トパーズは? くそ、外れたのか。しかも、木に刺さってんじゃねえか」
トパーズが突撃しに行ったゴブリンとは、別の個体に土球を当てる。土球は怯みやすいから使い勝手がいいな。スピードの減衰はあるが、短い距離なら気にならない。
で、突撃したトパーズはというと、木に突き刺さっている。
ホーンラビットは、攻撃が当たらなかった場合、何かに角が刺さり抜けなくなることがあるのだ。それは、テイムモンスターでも同じらしい。
対策は、あるがな。
「ラピスは《分裂》と《粘着》を使って蝶を押さえつけといてくれ! ほら、ゴブリン共、こっちだ!」
手を叩いて俺に注意を向ける。《挑発》スキルのように強制力はないが、ある程度の牽制にはなるようだ。MP消費もないし、嬉しい仕様だな。
二体のゴブリンが俺に向かってくる。おうおう、
「これでも食らいやがれ! 《光種》!」
消費MP40。光量を四倍に増やした光源が、俺の目の前に現れる。
それはつまり、俺に向かってきたゴブリンも同じ事。
「行け、今だ!」
「待ってましたです!」
目が
死角からの攻撃は、クリティカルが発生しやすい。土球でHPが削られていたこともあり、残っていた八割のHPは全て消え去りゴブリンはポリゴンと化した。
その向こうでは、尻餅をついたトパーズが毛づくろい中。余裕だな、おい。
そして、もう一体のゴブリンは。
「ていていてーい! どうですか! まだですか! うご……かないですね! やりました、お兄ちゃん!」
HPを三割残しているものの、俺達に襲い掛かってくることもできず、その場から一歩も動けずにいた。
なぜなら、麻痺という状態異常に陥っていたからである。
では、それをしたのは誰なのか。って、もう分かってるよな。
アウィンだ。
「今回も、お兄ちゃんの作戦上手くいきましたね! 木に隠れて待機。合図したら飛び降りて斬りまくれ! シンプルで分かりやすいです!」
「お前、バカだもんな」
「バカじゃないです!」
麻痺で動けないゴブリンを鞭でシバキながら思い出す。
町盗賊が消えたあの時、アウィンは倒れ、朝になるまで目を覚ますことはなかった。
アウィンが目を覚ました時はホッとしたが、どうやら、アウィンの中にあった町盗賊としての記憶は全て失われたらしい。
もちろん、その中には町盗賊であったのだろう“お兄ちゃん”の記憶も含まれていた。
結果として、俺をお兄ちゃんだと思い込んだ記憶だけが残り、アウィンは疑う余地もなく俺をお兄ちゃんだと信じ込んだ訳だ。
……別に俺が意図してやった訳じゃねえぞ。誰だ、催眠とか洗脳やら言ったやつは。
そのアウィンだが、白いショートパンツに緑色の布で出来た雨合羽みたいなやつを着ている。ユズと繭が言ってたのは何だっけか。ポンチョとかだった気がする。よく分からん。
そして今は、両手にナイフを握っている。これは繭が作ってくれたものだ。
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隠しナイフ(麻痺) 短刀(暗器)
麻痺Lv.1
パラライズバタフライの鱗粉が
塗りこまれた隠しナイフ。
暗器として用いられる。
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ポンチョ(緑) 防具(上半身)
防御力に期待は持てない。
ポンチョの下は自動で決まる。
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ショートパンツ(白) 防具(下半身)
動きやすい服装。
素足に自信がないと履けない。
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冒険者の靴(改) 防具(足)
更に丈夫で動きやすくなった靴。
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ポンチョで合っていたらしい。
本当は
武器に関しては文句の付けようもない。アウィンは手数で押していくスタイルだ。状態異常武器とは相性がいい。
麻痺レベルが低いこともあり、確率はそこそこってとこだな。相手のレベルが低いことも助かっているところだ。
ちなみに隠しナイフと銘打ってはいるが、全く隠していない。アウィンの《暗器》スキルから恩恵を受けるため、無理やり暗器に仕立てあげたらしい。
そして、トパーズ。
突撃を避けられ木に刺さったはずだが、ゴブリンを後ろから急襲することが出来ていた。
それは何故か。
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金属製三角錐 特殊
ホーンラビットの角で型どりした
殺傷能力の高い三角錐。
着脱が可能となっている。
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キラリと光る、木に突き刺さった三角錐。これは、繭が作ったトパーズの装備である。
トパーズは、木に刺さった後、この装備を外して脱出した訳だ。
一度しか出来ないが、一回は避けられても反撃ができるのは大きい。
「トパーズさん、どうぞ! 木に刺さってたやつです。着けてあげますねー」
「ラピスはどうだ? あと一割か」
ラピスの方はというと、完全に蝶を封殺していた。
翅と地面を《粘着》で固定し、《分裂》することでダメージを加速させる。
微々たるスリップダメージだが、確実に一体を仕留められるのは物凄くありがたいことだ。
しかも、ラピスだって強化されている。
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毒の粘液 素材
毒Lv.1
スライムの粘液とポイズン
バタフライの鱗粉を混ぜたもの。
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これは、癒香から貰った素材だが、これと同じ事をラピスにも施してある。
結果、ラピスの攻撃には、毒の状態異常の確率が発生することとなった。今までのスリップダメージに加え毒ダメージまで加算されるとか恐ろしいな。そして、素敵だ。
癒香は更に、麻痺の粘液も作り出そうとしてくれている。そっちも期待が膨らむな!
「お兄ちゃんが悪い顔してるのです」
「失敬な。楽しそうな顔と言ってくれ」
「愉しそうな顔?」
「イントネーションに引っかかるものがあるな……」
まあいい。肩慣らしは十分だろ。そろそろ第二エリアに行ってみるとするか。
今日はESOリリース五日目。攻略組は既に次の町に着いたらしいが、俺には俺のスピードってもんがある。
俺は今日、初のボス戦に挑む。相手はあのエリーのテイムモンスターと同じ、“
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プレイヤー名:テイク
種族:ヒューマン
ジョブ:テイマー(Lv.18)
HP 1000/1000
MP 2466/3170 (used 27)
ATK 10(+5)
VIT 10(+6)
INT 10
MIN 10
DEX 10(+6)
スキル
《鞭》Lv.1
《火魔法》Lv.1
《水魔法》Lv.1
《土魔法》Lv.1
《風魔法》Lv.1
《光魔法》Lv.1
《闇魔法》Lv.1
《HP自然回復》Lv.4
《MP自然回復》Lv.1
《即死回避》Lv.1
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モンスター名:ラピス
種族:マルチスライム(Lv.12)
HP 800/800
MP 86/86
ATK 3
VIT 9
INT 2
MIN 72 (used 12)
DEX 1
スキル
《粘着》Lv.1
《吸収》Lv.1
《分裂》Lv.3
《擬態》Lv.1
《物理攻撃無効》Lv.☆
《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆
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モンスター名:トパーズ
種族:ホーンラビット(Lv.12)
HP 940/1260
MP 20/20
ATK 74(+10) (used 12)
VIT 5
INT 2
MIN 2
DEX 6(-3)
スキル
《跳躍》Lv.3
《気配察知》Lv.1
《採取》Lv.1
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モンスター名:アウィン
種族:町盗賊(Lv.9)
HP 760/760
MP 20/20
ATK 2(+4)
VIT 2(+3)
INT 2
MIN 1
DEX 56(+5) (used 9)
スキル
《盗む》Lv.2
《暗器》Lv.1
《隠密》Lv.1
《気配察知》Lv.1
《闇魔法》Lv.0
《罠設置》Lv.0
《罠解除》Lv.0
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