第3話私が夢様のナイトに...

仲間募集を決定してから3日経ったある日の昼下がり。

俺たち駆け出しパーティはオーガの討伐とエルグライト鉱石の採掘という2つのクエストをなんとか終え、

やっとのことでギルドに報告し、依頼人からの報酬を待っているところだ。ギルド加入のときに知り合った巨人族の男にいい仲間を紹介してやると言われた。

「姫さん!仲間候補の人ってどんな人ですかね!」

いつものように目をキラキラさせて姉さんに訪ねる。

「多分、黒髪でやさしいイケメン」

「姉さん趣味だだ漏れだよ」

「私は金髪眼鏡のイケメンがいいです」

「メルカも好みが口から溢れてるよ」

メルカまでもが面食いだったとはしりたくないことがインプットされた。

「まあ私は夢に似てたらどんなでもいいかも」

そしてもうひとつ、異世界に飛ばされてから3日目にして姉さんを縛っていてくれた理性の鎖が外れました。

「おーい、夢はいねえがあ?」

なまはげかよ!小さく突っ込みを入れつつ、俺を呼んだ巨人族のもとへ急ぐ。

「連れて来てくれたのか?」

「当たり前よお!巨人族に二言はねえ、ガッハッハッハッハ!!おい、前に来いよ!この色男がおめえのこと見てえってさガッハッハッハッハ!!」

「見たいことは否定しないけど、そんなこと言って無いだろ!」

「ガッハッハ!そうかあ!ほら俺の後ろだと見えねえだろお!」

調子のいい巨人族の男に急かされ女の子が出てきた。いや、女の子というよりも大人の女性と言うべきか。

背が高くて白髪のおしとやかそうな印象をうける

「わたくしはリリア・スティンベルクといいますの。わたくしでよければあなた様のナイトになりたいですわ」

なんというかお嬢様感がすごい。オーラがすごい。

「あ、あの、なんて呼んだらいいのでしょうか」

「ふふ、そんなに敬語を使わなくても構いませんわ、その方がわたし、いえ、わたくしも落ち着けますわ」

「だからそんなに無理しなくてもいいって言ったじゃねえかあ、すまんなあ、こいつおめえのことがいや、おめえら姉弟のことが気になって自分から俺に紹介してくれって言って来たんだぜ?」

「何か俺達目立つようなことしたっけ」

「あーいや、ちげえんだ。こいつおめえらが仲良すぎるんじゃあねえかって言って、姉弟で禁断の恋に落ちてるんじゃねえかとか言っててな」

「それってどういう...」

「こいつ妄想癖がはげs」

ゴスッ

鞘におさめたままの剣で腹部を強打。

「すまねえ何でもない」

あの巨人族を黙らせた...。

「ももも、妄想癖なんてあ、ありませんわよ?」

怖い。女性って怖い...

「ほ、ほんとにありませんからあああ」

「うん...いや、そうですよね」

あながち姉さんに関して言うと的を得ているから否定しにくい

「んぐっ...ひくっ...それで、そのー、パーティに入れてもらうっていう話は...」

あまりの衝撃に忘れていたがそういう話だったけ、

「あー...もちろん構いませんし、こちらこそお願いしますという感じで...」

「...よしっ」

小さくガッツポーズをするリリアさん

やっぱり似てる、姉さんに。確信をした俺はリリアさんを紹介するため二人のところに戻る。

「おかえりなさい夢!そちらの方は?」

「ああ、この人が新しいパーティメンバーのリリアさんだよ」

「姫様、わたくしはリリアと申します」

「よろしくね、リリアちゃん」

姉さんがやけに大人しい。

なにか考えているようだが...リリアさんの顔を見て俺に一言。

「あのさ、何でリリアちゃん泣いたあとがあるの?もしかして夢...」

「なにもしてないよ姉さん!」

「ほんとにぃー?」

「ほ、ほんとです!私が勝手に泣いただけですから!夢様は悪くありません!」

心のなかでありがとうリリアさんと言った。後でちゃんとお礼しよう。

「弟が好きすぎるゆえの疑い...たまらないっ」

前言撤回で。

巨人族の男とわかれたあと色々と話を聞くと、お嬢様口調はやっぱり無理をしていたらしい。リリアさんの家、つまりスティンベルク家は北の方では有名な貴族で、その重圧に耐えきれず冒険者になったのだという。巨人族の男とは、リリアさんが冒険者になって初めてのクエストの時にマンドラドラゴンという、なんかマンドラゴラとドラゴンを足したような気持ち悪いモンスターに補食されてたところを助けてもらったらしい。

「あれ?メルカは」

「メルカちゃんならさっき依頼人の方が来てくださったから報酬を受け取りに行ってくれてるよ?」

「そっか、」

別にいいけど、いいんだけどさっきから気になってしょうがない、俺と姉さんを交互に見て頬を染めてるリリアさんが。

でも、話しかけたらまずいと思う。ここにきて姉さんで培われたスルースキルが役立つとは。

数分後メルカが報酬を受け取って帰ってきた。

慌てた様子でリリアさんが

「あ!メルカ様、わたくしはリリアといいます。パーティに入れていただくことになりました!」

こちらも慌てた様子でメルカが

「わ、わわ私はメルカって言います!ふふふふちゅちゅかものですがよろしくお願いします!」

「「っふ!!!」」

緊張しすぎなメルカの挨拶に、吹いてしまった俺と姉さん

メルカは少し怒っているのか恥ずかしいのか顔が赤い

「そうでした!夢さん達がからかってくるので忘れてました。今回のクエストですが臨時報酬が入りましたよ!」

「ほんと!?」

「ほんとです」

「まじで!?」

「まじです」

「なんと!今日のクエストで採掘したエルグライト鉱石に混じって、レアクリスタルが入っていたんですよ!それで、売却額が300万ルキンだったんですよー!」

何故かメルカがものすごーいドヤ顔なのは知らないが、その言葉に歓声があがった。

「これで新しい魔法書が...」

「これであの鈴音の杖が買える...」

欲望丸出しの隠そうともしない二人と比べるとやっぱりこういうところはリリアさんは大人なんだと改めて思う。

「これ私からのプレゼントだよ!とか言って姫様は夢様に...夢様は照れながらもお返しをするんだろうな...そう、照れながらも一生懸命考えて、もしかしたら私に相談されるかも...より夢様が困って恥ずかしがるようなものを...ハァハァ...」

予想の斜め上。あーさよなら俺の幻想!

うん、気をとりなおそう!

「とりあえず今日の夜ご飯はメルカとリリアのパーティ加入祝いに今日は豪華な料理たべよ!」

そしていつもの酒場で夜ご飯を食べることになった。

その日は夜遅くまでご飯を食べながら騒いで、メルカが魔法出しちゃって衛兵沙汰になったけど、パーティの仲は良くなったと思う。

あと、もうひとつわかったことがある。

姉さんは酒癖悪い。

というかむしろうちのパーティは全員酒癖悪い。

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