姉は貧乳ですがせっかく異世界来たので装備は女性用でお願いします

笑門一二三

第1話プロローグ

今日は普通の日曜日だった。

普通に起きて、朝ごはん食べて、ゲームして。

明日学校めんどくさいなーとか、ため息をはいたりして。

そんな普通の日曜日だった。

だったはずなのだ。

「これは...なに?」

俺と姉はトイレの前で立ち尽くす。ただ呆然と。

「ねえ、夢、どうする?お母さん達はいないし...こんなの見られたら大変だよね。お母さん達、あまりの衝撃にショック死するかも」

「そんな不吉なこと言わないでよ姉さん、姉さんが急に真顔になるから何事かと思ったら...」

夢とは俺、月織夢の事だ。今年で17になる男子高校生だ。そんな自己紹介を心の中でそっとしながら俺は、うちのトイレはこんなじゃなかったはずだと自分に言い聞かせる。

こんな異世界へのゲートのような宇宙色の転移装置のようなものでは無かったはずだと。

「ね、ねぇ夢?私もう限界なんだけど...」

「え?姉さんトイレ?我慢してよ...」

「ちちち違うよ!これが何なのかとてつもなく興味が...少しだけ触ってみても?」

「駄目だよ!何なのか分からないのに」

そう俺の姉は、月織姫は好奇心旺盛というかなんというか、子供の頃からこんな感じだ。

その知的好奇心のため学校の成績は常にトップを譲らず、今年で19になったが大学には行かずに、ぜひ来てもらいたいと言われている研究所に行く予定だった。そんな姉がこんな面白そうなものに興味を持たないわけがない。だから先ほどトイレに行きたくて、ドアを開けた時こんなゲートみたいになってても必死に声を抑えた。それなのに

「夢?急に黙ってどうしたの?」

「あ、いやキャラ紹介をと思って...」

「キャラ紹介?」

「え、あーいや、何でもない」

「そう?ならいいけど。ところでさ夢、私やっぱりトイレに行きたいかも」

「俺もなんだけど...これ一応元トイレだから、中に入ったらトイレあったりしないかなあって...」

そんな疑問を投げかけようとした瞬間、何かに引っ張られるような感覚がした。

「姉さん、今引っ張られなかった?」

「夢も感じた?」

俺たち2人はゲートを凝視する。

「......」

「やっぱり勘違いだったのかな...」

そう思ってしまうほど何も起こらない

「でも確かにさっき...」

そういった時

「あーもう遅い...遅すぎますよ...普通の異世界召喚ものならもっとすんなりスタートするのに!こっちは待ってるんですよ!早く入ってこんかああああああい!!のろまがっ!!!」

「ッ!?」

ゲートからの声への驚愕、そして再度体を引き寄せられる。

「はぷっ」

俺はなんとか踏ん張ったが、姉さんは軽々とゲートに吸われた。

「ええええええええ!?姉さん!?」

軽々吸われた自分の姉を追いかけるように俺も足を滑らせゲートに吸われた。

「痛い...体の節々が痛い...誰だよあんな所にバナナの皮なんて置いたの」

当たりを見渡すが、そこには距離感が掴めないほどの綺麗な白の壁とバナナの皮がある。天井と言えるか分からないが上の方には、うちのトイレにあったゲートと同じようなものがある。多分そこから落ちたのだろう。

「あれ?姉さん?」

周りに姉らしき人影はない。

「んーおかしいな姉さんの方が先に吸われたとおも...ん?」

頭上の気配に気づいた時には遅かった。

「まって、ちょ、やばいって、流石にそれは死ぬ」

「へ!?」

ズルッ。転けた、またバナナの皮だ。

「「へぶっ」」

リアルな痛々しい鈍い音と、胸から突っ込んできてるのにあまり柔らかさを感じないこの感じ

「いてて...夢!?ごめんね大丈夫?怪我してない?」

親方空から女の子が!そんな感じか?

痛みと姉の胸の残念さに苦笑いしつつ

「大丈夫、怪我も無いみたい」

と言って立ち上がると目の前にさっきは確実に無かったはずの椅子、中世の王国の貴族が座ってそうな細かい金色の装飾のある椅子があった。

「大きい、てか大きすぎるだろおおお」

あまりの大きさに意識が飛びそうになる。高さは10階建てのビルほどだろうか。そこに1人の女の子が座っている。白い肌に金髪とシアン色の瞳。美しさに息が、詰まりそうになる。

「やっと姉弟揃ったんですか?遅すぎますよ、貧乳姉が吸われたのに追いかけようともせずに踏ん張るってどういうことですか?性根が腐ってるにも程があります、まったく...」

やけに口の悪い美少女、というより外見からして9歳ぐらいにしか見えない、ならむしろ美幼女なのか?俺の心の中でも読んだのか美幼女の眉間のしわが深くなる。ふと横を見ると、何故か泣きそうな顔で姉に見られている。

「うわあ、神待たせた上に自分の姉泣かせるとか無いわあ、どうかと思いますよ?もういっそのこと異世界じゃなくて地獄に行かれます?」

また美幼女に罵られた。

「貧乳...気にしてるのに...」

体育座りで地面に指で円を書きながら落ち込んでいる。泣かせたのお前じゃないかとツッコミたくなる。

「ね、姉さん?元気出して?」

「だって貧乳って...」

姉の顔が暗くなる。

「貧乳に貧乳って言われた、もう立ち直れない...」

「貧乳姉、私の貧乳はステータスですよ?最近はロリ巨乳なる属性があるようですが、ロリに貧乳はいわば鬼に金棒!貧乳姉のそれはむしろ泣きっ面に蜂のようなものですよ」

「お、俺は姉さんの貧乳のが好きかなあ…」

我ながら全くもって意味の分からない慰め方をした気がする。というよりも、はたから見たらセクハラをした上司のように見えても仕方ないと思ってきた。

「よしっ」

まさかの小さくガッツホーズ。少し驚いたよ姉さん。小さく聞こえた「夢は私の貧乳が好き」は聞かなかったことにしよう。

ほったらかされた美幼女はほっぺを膨らませながら

「本題に入っていいでしょうか?」

美幼女がキレ気味に聞いてきた。

だが、ここで長話をするにはあまりに尿意が強すぎた。

「ねぇ?ここにトイレってあったりしないかな」

「無いですがあります」

「え?」

言葉と同時に指を振り下げ

「転移魔法発動」

と小声で言うと、白い光が降ってきてトイレが召喚された。

「「まじか」」

声が揃った。それもそうだろ、だってトイレが召喚されるとか聞いてない。ていうかさっきスルーしたけど、この美幼女自分のこと神って言ってなかったか?

そんなことより今の驚きと振動で危ないところだった。

「イカないんですか?失礼、いかないんですか」

「なんで今言い直した?」

「いえ、なんでもないです。早くイってきて下さい」

若干の不信感はあるものの、2人とも膀胱が限界だったため召喚されしトイレを使わせてもらった。

「いいですか?今度こそ本題です。今、とある世界の、まぁいわゆる異世界のある国が危機的状況です。そこで私の管轄している日本から1組選び、その人たちに解決してもらおう!という、ラノベ的展開ってやつです、協力していただけますか?」

美幼女の問に安堵した。

「じゃあ、俺たち死んで死後の世界に来ているとかじゃないのか?」

「えぇそうですが。何でそんなに落ち着いていられるのですか?あまりの衝撃に頭のネジでも抜けました?」

「何でそうなるのよ、私達多少の事じゃ驚かないよ?」

ついさっきトイレ召喚の時、口開いたままだったじゃん。というのは置いといて

「で、俺らはその国を助ければいいんだな」

「はい、そうです。飲み込みが早くて助かります。ていうか、その国を助けないと日本へは帰れません」

「んー...それは困る」

「安心してください、あなた達がこちら側、または今から飛ばす異世界にいる間は地球全体の時は止まってます...そのはずです」

「問題視してるのはそこじゃないんだけど...」

「あ、ちなみに拒否権はありません。これは私の慈悲で異世界に飛ばすのですから」

「慈悲?」

「いえ、簡単な話です。あなた達は明日死ぬ予定だったのですから。姉弟揃って」

「「まじか」」

また揃った。本日2回目。

「驚くじゃないですか。驚かないって言ってたのに。嘘つくのは人としてどうかと思いますよ?もっと私みたいに自分に素直になったらどうです?」

「お前は自分に素直すぎだ」

「何故、自分を抑える必要があるのです?神なのに!!」

「ま、眩しくて目が開けられない...」

美幼女から後光がッ...

「何でそんなにドヤ顔でそんな事が言えるんだ...さ、流石神とでも言うべきか...」

「まぁ、さきほどの明日死ぬって言うのはあくまでも予定です。少し驚かせようとしただけなので、私達神の中にはもちろん死神も含まれるので、その死神の死の宣告リストに載っていた内の一組というだけです」

「いや、全然安心できないし、したくもない」

「何で私達が死ぬの?」

流石としか言えない知的好奇心、まあ普通に疑問に思うとこかもしれないが。

おっと?さっきまで強気だった美幼女もうろたえている。

「そ、そんなこと知りません!!!」

そっぽを向いてほっぺを膨らましている。なんだろうやっぱり神様の威厳の様なものを感じない。

「もう話すこともないので飛ばします!!」

「唐突すぎじゃない!?」

「異世界の説明とか話すことあるでしょおおおおおおお」

「ごたくはいいです!転移魔法発動!!!」

白い光が俺達を包み始める。

「死んだらここからリザレクションかけてあげますから何回でも死んで大丈夫ですから」

急な上昇感に吐きそうになる。というか姉は限界のようだ。

「夢!こっち見ないでえええええええ」

「ぎゃあああああああああああああああ」

美幼女によって異世界召喚された。

トイレに行きたかっただけなのに。

どうしてこうなった。

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