それから
「できたー。九条さん、ちょっと見てもらえます?」
「お前なー。ライターの先輩いるだろう」
「いや、あの人達酷評っていうか、あんまり参考になんなくて」
「俺も評価は厳しい方なんだがな」
「いや何て言うか、愛があるっていうか」
「気持ち悪いな。まあ、いいぞ」
「これは……。状況説明が多すぎだぞ」
「でも、状況描写はモノローグ使っていいって」
「モノローグってのは主人公の心の中の独り言だ。こんなに独り言考えてる奴がいるか」
「でも説明ないと分からないですよ」
「それは小説だったらだろ。ゲームのシナリオは演出を使え」
「確かそう言われましたけど、まだよく分かんないんですよ」
「例えば最初、『駅に着いた。夕方という事もあって人の喧騒で賑わっている』。この一文はいらん」
「いらん!? 全部ですか?」
「ここは背景が入る。プレイしている人は駅に来た事は分かる。人の喧騒もSE(効果音)を指定しろ。これで賑わっている事が伝わる。指定の方法は聞いてるだろ」
「あ、はい」
「背景見せてみろ。画像ファイルの場所も聞いてるよな。……うん、この背景は、人がいないな。ディレクターを通してデザイナーにこの背景に人ごみを重ねられないか聞いてみろ」
「背景を描いてもらうんですか?」
「まあそうだ。時間が無ければ仕方ないが、音だけあれば賑わっているのは伝わるだろ。どうしても気になるならモノローグを使え。『人が多いな……』とか独り言っぽい書き方でな」
「はい」
「そうだな、この女の子が登場するシーン、『都子が息を切らしながら走って来た』も不要だ」
「これも!?」
「背景だけの画面から、キャラが登場した画面に切り替わる前、走ってくる音を入れれば走って来たのが分かる。ちゃんと台本にも書いておけば、後は声優さんが息を切らした演技をしてくれる」
「ああ、なるほど」
「それに登場のさせ方も色々切り替え演出があるはずだ。他のライターに聞いてみろ」
「はい」
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