探せ

第83話 探せ 1

「何かキャラの濃い人お兄さんだったな。リョウマも萌も、あの人あんま得意じゃないだろ」


「いや、聞かなくてもわかるよね」


「……」


(萌、顔……)


普段から萌の無表情を見慣れている恵一から見ても、それはとんでもないしかめっ面だった。あからさま過ぎる。

リョウマの様に口に出さなくても、よく思っていないのが丸わかりだ。

ここは一応、叔父としてたしなめなければと思った。


「そんなこと言うなって。自分には何の得にもならないのにわざわざ動いてくれてるんだから」


今だって、自分達は相変わらず萌の部屋のソファーにいるのに、アレクシは瀬口がアポをとった長谷川の聴取に付き合い一人だけ警察署に戻ってくれているのだ。

そりゃあ、恵一だって必死に現世にカムバックしようとしているところを隣でへにゃへにゃされて思うところが無いことはない。

けれど、感謝こそすれ文句を言う資格は自分にはないのだ。


「…そうかな」


萌が言う。


「何なに? 恵一さん何て言ったの?」


「ボランティアで手伝ってくれてる人に文句言うなってさ」


「えー? そうかなー」


リョウマの反応も萌と同じだ。


「アレクシってさ、そういうタイプに思えないんだよなー。多分何か裏がある気がする。前からさ、人の嫌がること進んでする奴だなって思ってたんだけど、あんな力持ってたんならいよいよ確信犯じゃん? 絶対そんないい奴じゃないって。あと萌のことすっごい見てたし」


「俺もリョウマに賛成」


「おいおい、過激だな。そういえば、瀬口さんとアレクシはどう言う繋がりなんだ?」


「あいつの父親…っても血は繋がってないらしいけど、その父親とうちの親父が親友同士なんだ。アメリカの大学で出会ったみたいで、アレクシともその頃からの付き合いなんだって。本当にさ、あいつの父ちゃんはめっちゃ良いおっちゃんなのに、なんであいつはああなんだろうな」


「へぇ。じゃあ、お前の父さん英語喋れるんだ?警察でもエリートコースなんじゃないの?父親に似なかった点だとお前も人のこと言えないぞ?」


「京平の鬼畜ヤロー。ま、それはそうとさ、萌が心あたりあって本当良かったよ」


そう言ってリョウマは似顔絵を眺め、ポケットから取り出したスマホで撮影した。


「この絵、LINEで母さんに送るから。『こいつに似てる「けいいち」って生徒いる?』って聞けば良いよな?親父からも母さんに頼んでもらうよ。『捜査の一環だ』って。意外とあっさり見つかっちゃうんじゃないの?」


どう言うことだと思っていると、萌が、彼の母は南ヶ丘で教師を務めているのだと教えてくれた。


「萌、お前今朝ニュース見てたときにも『夢で見た』って言ってたよな?」

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