リスク回避は天に祈る
「あー、大雪マジこえーっていう」
「今年は多いみたいだね」
だらだらとテレビをつけていると、大雪のニュースが流れていた。今は大分落ち着いたみたいだけど、今度は雪崩に注意とかそんなようなことをしきりに叫んでいて、雪国の人は大変だなあと思ったりして。
この時期になるとサークルはやらなくなるからあまり顔を合わせたりはしないけど、ハナちゃんの実家がある緑風の、さらにハナちゃんの実家がある町が大変だーって全国のニュースでもやってたとちょっとした話題になった。そこで、ある懸念が。
「ねえエイジ」
「んー?」
「星港って確かあんまり雪降らなかったよね」
「あんま降らないはずだっていう。たまーにドカッと降ることもあるけど、滅多にねーべ」
「はー、よかった。ううん、逆に大雪で休講になってくれればレポート書く時間が稼げたかな」
「何だ、雨男が雪乞いでも始めるのかっていう」
「雪乞いはしないけど、もうすぐテスト期間だなあと思って。ほら、大学って山の方にあるしもしかしないかなと思って」
まだテスト期間ではないから、うちに遊びに来てるエイジも缶ビールを開けている。テストの心配はあるけれど、だからって家で出来ることもそんなにない。あと、俺は集中講義を取ってるからテスト期間中のテストがちょっと少ないっていうのもある。
台風とかで休講になることがあるらしいとは聞いていたから、大雪でももしかしないかなって。星港ではあんまり降らないみたいだけど、大学近くはちょっとした山だから雪だってちょっとは降らないかなって。あ、でもちょっとだったら休みにはならないか。
「あ、そうだ高木」
「うん」
「テスト期間に入ったら1週間ほど住まわしてくんないかっていう」
「えっ、いいけどどうしたの」
「ほら、俺の家ってガチな山の方だから、こっちに雪が降るタイプの寒波が来たらヤバいっていう」
「あー、そうだね」
「だったらまだ星港の方が安全だべ。もちろん住まわしてもらうからにはそれなりの仕事はするっていう」
「って言うか、普段からいろいろやってもらっちゃってるから仕事はいいんだけど、あっ、そしたらテスト期間中は俺のことを起こして欲しいな。俺は自力で起きれる気がしないけど、エイジは朝に強いし」
「利害が一致してんならやってやるべ」
割とすんなりこの契約が結ばれたところで、改めて乾杯を。備えあれば憂いなしって言うしね。もし寒波が来なくたって、エイジからすれば家から通うよりうちから通う方が断然早いから朝の時間を有効に使えるからね。
そしてこれから始めるのは共同生活をする上でのルール作りだ。とは言ってもそんなに大したルールじゃない。テスト期間中は断酒するとか、そういうちょっとしたことを念押しする程度。終わったらもちろん乾杯するけど。
「えーまず、テスト中は断酒だべ」
「うん」
「同じく、テスト中は遅くとも深夜1時までには就寝」
「うわっ、早っ」
「早っじゃねーべ。俺からすりゃ遅いくらいだっていう」
深夜1時に消灯はなかなかキツいものがある。レポートだって書かなきゃいけないし。夜に時間が取れないのは遅筆だからなかなかキツい。そうエイジにやんわりと抗議すれば、どうしてもやりたきゃ朝早く起きてやれってさ。ご尤もです。
同じように、起床時間も決められた。1限のテスト開始が9時半だから、9時には大学にいようと逆算した結果導き出されたのが7時という時間。早い、早すぎる。そう呟けば、9時始まりの1限はどうしてたんだと問い詰められる。お察し下さい。
「なあ高木、知ってたけどお前の生活めっちゃ壊滅してないかっていう」
「ちょっとね、朝は辛いよね」
「確かお前集中講義取ってるって言ってなかったか。集中講義って、1限から5限までフルであるっていう」
「正直、集中講義の期間中もエイジに起こして欲しいです」
「甘えんのも大概にしろっていう!」
パシンと頭を叩かれれば、すみませーんって。でも起こして欲しいものは欲しいから、それこそ起こしてもらうからには俺がエイジに何かこう、報酬的な物を用意して4日間住んでもらわないとなあって。
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