New year's fun fun funny!
「それでは、新年あけましておめでとうございます。皆々様の健康と、ますますのご発展を願って。乾杯」
「かんぱーい」
机の上には圭斗特製の角煮やらだし巻き玉子やら、机の脇にはうちが買ってきた酒瓶やら何やら。今日はMMP3・4年の愉快なメンバーでの新年会。圭斗の音頭でかんぱーいと乾杯をしたけれど、村井おじちゃんは不服そうだ。
「なあ圭斗。お前、何か忘れてないか?」
「多少簡略化してますけど、ちゃんとした新年会の乾杯の音頭じゃないですか」
「今日は俺の誕生日! それを祝う集まりじゃねーのかよ!」
「新年会ですが何か。村井サンのそれは口実であって、ついでです」
「圭斗テメー! それが先輩に対する態度かー!」
年が明けても変わらない物は変わらないし、変わらないくらいがちょうどいい。いつものヤツを一通りやってから、「さて」と落ち着いてそれぞれの話題に入っていく。圭斗と村井サンのこれはこの先も変わらないだろう。
形から入りたがる圭斗は台所で熱燗の準備をしている。うちはどの酒がどういう特徴があって、というのを村井サンにプレゼンするのだ。もちろん、うち自身日本酒はそこまで飲まないから、調べた物の受け売りになるワケだけれども。
村井サンは健康診断でも肝臓がちょっと引っかかってるのに飲むのをやめない。おじちゃんとは言われていても一応まだ22歳なのに、こんな調子でこの先大丈夫なのかな。ま、のらりくらりしながら何とかなるからこそ村井サンなんだろうとは思う。
「ところでマーさん、就職はいいところに決まってるみたいだけど卒業はまだ決まってないでしょ?」
「ですね。――というワケで菜月様! この村井めを何卒よろしくお願い申しあげます!」
「うわ、ドン引きですよ村井サン。菜月さんなんかに縋るなんて」
「圭斗、それはうちのこともバカにしてないか?」
「ん、残念ながら僕と麻里さん、それから野坂は勉学に関して菜月さんを下に見る権利があるんだよ」
「言っとくけど、うちはやってないだけでやれば出来るんだからな。あと、ヘンクツの名前を出すとお前も負けるからな」
村井サンは少し卒業が怪しい。単位が現時点で微妙に足りてなくて、今度のテストでどうなるかが決まるという感じだそうだ。取ったことのある講義や今履修がカブっている講義のノートなどをお願いされたところで、話は卒論へ。
圭斗以外の3人はみんな同じ社会学部だけど、うちと麻里さんはメディア系で、村井サンは社会学系とやってることが微妙に違う。それは、ゼミでやってることや卒論に対する取り組み方にしてもそうだ。
「だってこないだマーさんIFの忘年会で卒論ゼロ文字って言ってたでしょ? どーしたの真面目に」
「そりゃあアレだよ」
「Ctrl+CからVの応酬ですか」
「それだよそれ、圭斗わかってんじゃねーか」
「お前クズだな! それを許す教授もどうかと思いますが」
「ん? お前先輩に対してクズっつったな!?」
「クズだろーが!」
「仮に俺がクズでもお前にだけは言われたくねーよスケコマシが!」
男の子は元気だねー、と麻里さんが呆れた目で圭斗と村井サンを見ている。男なんてのはどれだけ年齢を重ねてもこんなモンだよと。それを聞きながら、うちは空になったお猪口にお酒を注いで。はっ、これが接待!
「菜月さんは3年の年度末レポートやってる? 3年だったらノルマ1万5千字だっけ」
「やってます、死にそうになりながら」
「レポートが得意な菜月でも死にそうになってるんだねえ」
「あ、いえ。ちょっとテーマに押し潰されそうになってて。やってると気持ちがしんどいってだけでレポートの文字数だけで言えば今2万字なので余裕でクリアしてます」
「さすがだね。この男どもに聞かせてやりたい」
しんどい話をしていると余計にしんどくなる。だから麻里さんには悪いと思いつつ、だし巻き玉子を頬張る。ん、うまー。
「ああ、そうだ忘れるところでした。先輩方、誠に申し訳ないのですが、本日の参加費として3000円を徴収します」
「おおっ、唐突だな」
「忘れる前に回収するのは正しいよ圭斗さん」
「そして今回菜月さんは参加費なしで、先輩方から回収した4000円と僕からの1000円を乗せて、こんな感じかな」
「ありがとうございまーす」
「えっ、参加費って実質菜月が総取りみたいなこと?」
「酒代がほとんどですからね。酒と料理がこのボリュームで3000円は安いでしょう」
「まあなー」
「先輩だろうが誕生日だろうが新年会だろうが、そこはきっちりやりますので今年もよろしくお願いします」
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