第3話 エネルギー保存の法則

 「ほら浩くん、あと腕立て30回頑張って・・・」

 彼女の声援に、浩介は玉のような汗をその額から流す。


 「次は腹筋50回よ!」

 美紀の声にも力が入る。


 「それが終わったら、今度は縄跳びね」

 浩介は言われた通り、一つひとつのメニューを次から次へとこなしていく。

 「良い感じよ浩くん、どんどん身体の中のカロリーが消費されていってる感じよ。その調子で、スクワットも80回やっちゃいましょう!・・・」


 「はあ~」という溜息と共に、さすがに浩介も床にしゃがみ込む。


 美紀と付き合い始めて3年。最近浩介のお腹周りが気になり始めてきた。つまりはメタボになって来たということである。

 このままでは美紀にふられてしまうと言うことで、急遽一念発起してのダイエット。

 美紀だって、そんな浩介を嬉しく思う。当然、彼の応援を自ら買って出たというわけである。


 15分後、サウナから出てきた浩介に美紀がすかさず声を掛ける。


 「少し身体、引き締まってきたんじゃない?・・・」

 「相当カロリーが消費されたっていう感じだな」

 浩介は汗びっしょりの身体をバスタオルで引き取りながら、満足そうに答える。


 「それにしても、もうお腹ペコペコだよ。今日は頑張ったから、焼き肉丼にラーメンを追加しちゃおうかな」

 「えっ?・・・」

 

 「のども渇いたから、ビールも飲んじゃおうっと・・・」

 (おいおい・・・)



【エネルギー保存の法則】

エネルギーは移り変わっても、エネルギーの総量は変化せず、常に一定に保たれる。

結局エネルギーは、どんなことをしても途中で無くなったり、増加したりはしないということ。

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