寂夢 三 『明かされた闇』

第三章 その一

 この町に来るのは何年ぶりになるんだろう。

 私は25歳になっていた。

 今、この町を歩いていても誰も私に気が付かないだろう。それは嬉しい反面とても悲しい。けど仕方がない。どうしてかというと私がここで過ごしたのは三歳までらしいからだ。

 らしい、というのも私にはここで生活していた記憶が全くないせいだ。だって、物心がついた時には両親と一緒に楽しく生活していたから。それもこんな田舎町じゃなくて都会で。


 その両親が先日他界した。交通事故であっけなく。私は天涯孤独になった。一人が寂しいって思ったのは初めてだった。

 両親は優しかったし、私の望むことをしてくれようとした。遊園地にも連れて行ってくれたし、家族旅行にもよく行った。でも、写真はほとんど取らなかった。だから遺影にする写真を探すことにとても苦労した。


 そんな両親が私宛に手紙を残していた。見つけたのは奇しくも両親が亡くなった日。その日私はたまたま両親の家に来ていた。今は自分で仕事もして独立しているから、両親の家に行ったのは偶然だった。驚かそうと思っただけだったから。そして、手紙を見つけた。


 その手紙はまるで私が来ることが分かっていたかのようにテーブルの上に置かれていた。そして、私は真実を知ることになった。

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