人でなしの呪いを解きましょう

二十四番町

第1話

彼女は神を憎んでいた。

自分を救わなかった神を憎んでいた。自分を裏切り苦痛を与え、この世から全てを奪った神を、彼女は決して許せなかった。

だから復讐を形にした。彼女の心を移す復讐の機構は、浅はかな人々により今も広がっている。

『イザナミ通信』

 御神体を売る通販サイト。

見出しの文句をなぞり、彼女は薄く笑む。

『神様を分けましょう』

 



長谷川(はせがわ)謙(けん)信(しん)の前には神がいた。

本来なら《神体売買》から保護すべき対象だが、神は頭を垂れ、その首を謙信に差し出している。

謙信は再三の確認を取った。

「いいんだな」

垂れた頭が地面に触れる。

謙信は刀を抜いた。神の顔が上がり、白い喉仏が照らし出される。

 神は目を細め、微笑んだ。

 刀が振られ、低い石階段を首が転がる。

謙信の足元で止まった頭部は、寂しそうな笑みを浮かべていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る