お姫様に一目惚れした

 腰かけたイスが奇妙な感じに思えていた。

 


 その新しいイスが気に入らなかった。

 


 イスだけじゃなく、机も周りの空気も。

 


 ここはまだお前の居場所じゃないんだ。

 


 そう言われているように勝手に思えてくる。

 


 だがそれは自分だけじゃなくここにいる誰もがそうだった。


(新しい教室って好きになれねぇ。)

 


 そう窓の方を見ようとした瞬間、彼女はいた。

 


 その姿を見つけた瞬間、心臓を掴まれたみたいだった。

 


 苦しい…と感じる暇もなく前から陽気な声がした。

 


「よう。」

 


「おう。」


「中学ぶりだな。よかったぜ、知り合いいて」

 


「…俺も。」

 


「1年の時は何クラスだった?元気にしてたのかよお前。そういや神谷がさ〜…そ」

 


 彼女が気になって隣の奴の声は次第にフェードアウトしていた。

 


「ん?お前あの娘が気になんの?」


 その声を聞いてハッと我に返った。

 


「止めとけ。可愛いけどちょっと…」

 


 慌てた。

 


「違う違う。たまたまぼーっとしてただけだって。」

 


「そ?ならまぁいいけど、さ。」

 


 言いながらそいつは立ち去った。

 


 ちょっと…ってなんだよ。

 




 気にならないふりをしたけど、すげー気になった。

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