空に視る
ふわりと薄青の中を揺蕩う白は、逸らさず眺め続ければ刻一刻と形を変える。
曖昧な輪郭に意味づけし、物語を作るのも子供の遊びのひとつだ。
そんな空想遊びについて行けず、よく困ったものだ。
「意外ですな。自然の中に明日を幻視出来る貴方が」
庭先で雲を眺めて語った言葉に、傍らの客人が言った。
言葉の割に、驚いている風情が皆無なのは彼の気質らしい。
「だからこそでしょう」
僕は幼い頃から所謂「未来視」ができる。
だが、雲が何かの形に見えたことは一度も無かった。
「雲はただ雲ですよ。水蒸気の塊だ」
其処に「在る」モノのはそれ以外のモノには視えない。
今まで概ね周囲の顰蹙を買ってきた言葉に、客人はひそりと笑いを零した。
---------
Twitter300字ss参加作。お題:雲
斗織ちゃんと駒場さんの会話。おそらく空白七年間のどこかです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます